2018/06/10

はじめからその話をすればよかった

はじめからその話をすればよかった (実業之日本社文庫)
宮下 奈都
実業之日本社
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kindle版
■宮下奈都
本書の単行本は2013年10月に実業之日本社刊。
「今ここにしかない光景」「Age49 いちばん輝いていた」「野生のバス」「花は還る」は文庫版刊行(2016年4月28日)に際し、新規収録。の、電子書籍版。

宮下さんの初エッセイ集である。
単行本のkindle版を見掛けた時に「面白いタイトルだなあ」「“その話”ってなんだろう」と思った(実際読んでみたらこれはいわゆるタイトル勝ちで、意味はごく常識的なことを言いたかったんだよね、くらいのことだった)。

この本のエッセイはすごく面白く、楽しく、時々吹き出したりしながら読んだ。
わざわざ「エッセイは」と断ったのは、この本はエッセイが7割くらいあるが、書評が2割くらいあって、残り1割が短篇小説、という作りになっているからだ。
好き好きだと思うけど、このエッセイ集の中にちょこちょこ「小説」を挟むスタイル、わたしはやめてほしい派だ。だってエッセイ読むときはエッセイしか読みたくないんだもの。書評はまあ、大きく分けたら「創作」ではないからそんなに抵抗ないんだけど。
今回もエッセイのつもりで読みはじめたら「あれ?なんか変だな」と思ってよく見たら創作だった、っていうのが一回あった。kindle版だからっていうのもあるのかなあ。エッセイ集に短篇挟むのに一人称「私」で、著者のリアルと同じ「娘」がいる設定とか紛らわしい……。仕方ないからこの話は最後まで読んだけど、すごく作為的かつ恣意的な話で、なんだこれ、と思った。掲載紙を見て納得。成程ねえ。でも、こういうテーマ扱うんだったら「創作」で感情論で持って行くんじゃなくてむしろ堂々と「論評」で論理的に書いて欲しい。きちんと説得してほしい。
書評はほぼ斜め読み、創作はくだんの1編を除いて読んでいない。

宮下さんが夫さんに猛アプローチして結婚した、というのは他で読んだことがあったが、本書ではそのなれ初めが書かれていて、びっくり。ひえー、「就職試験」という人生の一大事決めるときに未来のダンナ様に一目惚れしていたなんて、凄い。超氷河期の就活生としてはちょっとフクザツな気持ちもするけど。
その他も、「恋人」絡みのエッセイがあり、それがいまの夫さんのことだったりして、ラブラブですね~御馳走様~。

息子さんふたりがしっかりしたお兄ちゃんで、末っ子のお嬢ちゃんがわりとおっとりさんのようで、彼ら彼女らの言動がたまに出てくるんだけど笑ってしまう面白さ、可愛らしさ。
なきつらに8」は衝撃!だった。天才じゃない?

目次
ホルモンから生まれた――まえがき
日々、つれづれ
ひよこ豆、おはじき、蝉の抜け殻/オムレツ以降/二条城のお膝もとで/日本海企画/面倒屋、開店中。/その日/砂漠の犬/ピー/しあわせのかたち/待合室のヘルムート・バーガー/線路脇の家/いつか、また会える/大事なことは一度だけ/太陽のパスタと、豆のスープと、それから/趣味は、何ですか?/この世にたった一つの声/春祭りではしかたがない/わからないということ/まぼろしのルドガー・ハウアー/卒業の春に/覚悟を決めた/宇宙飛行士になりたい!/同じ月を見ている/僕らはみんな生きている/まぼろしのオムライス/ゆっくりと、遠くへ/ずっと星だった/花火を追いかけて/波田にて/壊れゆく船/歓迎されないお客さま/郵便局の隣に住む/決意の夜/季節を乗り継いで/アンケート 作家の時間割/ブルーハーツとハイロウズのこと/おついたち/チョコレート/パン/お不動さんの桜/みんなより一日分よごれている/はちみつ/眺めのいい道
掌編 オムライス
本のこと ときどき音楽、漫画、映画
確かに存在していた『野生の葦』/だいじょうぶ、だいじょうぶ『こんとあき』/誰が私を読んだのか『丸元淑生のクック・ブック(完全版)』/佐藤さとるさんへの手紙『だれも知らない小さな国』/憧れの力『ヒカルの碁』/呼吸し続ける記憶『青春の終わった日 ひとつの自伝』/食器棚は一日にして成らず『あの人の食器棚』/小説の返信を見届けたいあなたのために『童話迷宮』『言い寄る』など/いとおしい少女『波打ち際の蛍』 ほか13編
掌編 あしたの風
掌編 ちゅうちゅう
自分の本を解説
『スコーレ№4』『遠くの声に耳を澄ませて』『よろこびの歌』『太陽のパスタ、豆のスープ』『田舎の紳士服店のモデルの妻』『メロディ・フェア』『誰かが足りない』『窓の向こうのガーシュウィン』『つむじダブル』『終わらない歌』『はじめからその話をすればよかった』
掌編 野生のバス
ひとさまの本を解説
山本幸久『男は敵、女はもっと敵』/辻村深月『太陽の座る場所』/小路幸也『空へ向かう花』/島本理生『波打ち際の蛍』/碧野圭『情事の終わり』/椰月美智子『るり姉』
ホルモンその後――あとがき
掌編 サンタクロースの息子
Age49 いちばん輝いていた――文庫版あとがきにかえて
掌編 花は環る