2018/02/08

切れない糸

切れない糸 (創元推理文庫)
坂木 司
東京創元社
売り上げランキング: 11,294
kindle版
■坂木司
2017年12月19日の日替わりセールでとりあえず購入してあった本に昨日ようやく手を付け、本日読了。

最初、プロローグらしきものがあって、それを読み終えて次のページから「プロローグ」が始まっていたのでちょっとびっくりした。プロローグの前って、なんて云うのかなあ。(創元推理文庫のフォーマットのあらすじ、かと思って確認したらそれはまた別にあった)。
電子書籍だと全部同じ活字で出てくるからわからないんだけど紙媒体で見たらわかるかな?

東京は下町の商店街にあるクリーニング屋さんを舞台にした日常の謎系ミステリー連作短編集。
主人公は22歳の青年ということで、青春成長ものとしても読める。

2005年5月25日に単行本が創元クライム・クラブとして東京創元社から上梓され、2009年7月17日創元推理文庫版、の電子書籍版(解説割愛)。

ウィキペディアによれば、舞台となった商店街、登場人物の1人を『和菓子のアン』(光文社)と共有しているらしい。「洋菓子かとれあ」が同じらしい。全然意識していなかった(というか正直そこまで覚えていなかった)。

目次】と、簡単なメモ。ミステリなのでネタバレしない程度に…。
導入部
プロローグ
第一話 グッドバイからはじめよう
河野家の謎。
第二話 東京、東京
東京生まれだからって、みんながおしゃれで都会的なわけじゃないんだよと。
第三話 秋祭りの夜
渡辺さんは水商売?
第四話 商店街の歳末
シゲさんの秘密が明かされる。
エピローグ
創元推理文庫版あとがき

「あったことを直接書かない」野上弥生子の長篇を読んだ後に本書を読んだら、あまりにも(思ったことも言ったことも脇道に連想したことも)全部、書いてあるので最初ちょっとげんなりした。
本筋だけを書いたら5行で終わるところを脇の枝葉を一生懸命ふくらませてそれを背景としてある部分が目立って仕方ないというか、日常の謎が100%はわからないけれど話によってまちまちだけれどもおおよその方向性や主筋の7割ほどは予想できることなので「要するに、こういう話だろう。なのに全然関係ない話で間を持たせようとしているなあ」という感じがしたが、これはキャラクターのそういう掛け合いを楽しむタイプの小説なのでこっち(の感想)が意地悪なだけである。

実際、ワトソン役である主人公・新井和也君はかなりの天然人たらし(いや、動物にも好かれるから生き物たらしというべきか)でにやにやしちゃうし、ホームズ役の沢田直之君はさわやかで柔らかい物腰・笑うと目が線になるという笑顔が魅力的だ。豪快な料理を作る(?)お母さんは面白いし、神業アイロン掛けの名手・シゲさんこと茂田さんも渋くてカッコいい。パートの店番のおばちゃんトリオ松竹梅(松岡さん・竹田さん・梅本さん)もそれぞれ個性的で愉快。

最初の展開が「この主人公を店主にするがための目的ありきの設定で、そういうのは好かないなあ」とマイナスからの出発になってしまったが、最初ぶちぶち文句ばっかりだった主人公が気持ちを立て直して本来の素直で明るくてやさしい青年になっていくにつれ、こっちも「まあ、それはさておき、お話はお話として楽しもう」という気持ちになれた。

沢田君が常駐しているのが昔ながらの喫茶店「ロッキー」で、美味しいコーヒーが出てくるところとか、あまり流行ってなくて和也が相談にいくと美味しいランチが出てくるのとか、良いなあ~。こんなよく出来たスマートな22歳の青年はそういないと思うけど。

坂木さんは覆面作家としてデビューしたのは知っていたが、あらためてネットの記事を見るといまだに性別を明らかにされていないというので少し驚いた。
実際どうかは知らないが、わたしなんかは読んでいる感覚は完全に「女性作家の書いたモノ」だ。
この話のホームズ役とワトソン役の友情の描き方とか……いかにも女性作家が好んで描きそうな。一歩間違えたら沢田君は和也が好きなのか、と誤解(曲解?)しかねない台詞があったりして、いやまあ、そういう話ではないんだけども。

いまのところ書籍化されていない続篇の短編がひとつあるだけみたいなのだが、また続刊出るかな?