2018/01/01

英子の森

英子の森
英子の森
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河出書房新社 (2014-02-28)
売り上げランキング: 8,813
■松田青子
2014年2月18日に初版発行された単行本を、(今頃。でも素敵な装丁のきれいな本だしまだ初版だし――装画は牡丹靖佳さん。装丁はまたも名久井直子さん!)11月の末に茶屋町で購入してあった、のを元日ののんびりした空気の中で寝転んで読みはじめたら予想よりも面白くて、のめり込んで堪能。

いま調べたら、12月の上旬に文庫化したらしい。1週間差かあ。イイんだ、単行本が欲しかったんだから。カバーのアリスっぽい、英国食器っぽい絵もいいけど、それをはがしたときの濃い緑と、崩れていくような狼たちと、そして本の背の真っ直ぐさとその手前の溝の美しさに惚れ惚れ。
文庫も可愛い装丁だなあ。よりアリスっぽくなった。

表題作は、中篇? それと、短篇5つが収録されている。

目次】と初出と、感想など。
英子の森
「文藝」2013年秋号(2013年7月/河出書房新社)
わたしは英語が苦手なので、「英語が出来る」「英語をつかった仕事をしている」と云われたら、この話に出てくる「一般のひと」のように反射的に「すごーい」と言ってしまいそうだ。だけどよくよく読めば、言われてみれば、そうか……、そうだな……と。
他のいろんなこと、好きなこと、得意なことだけで稼ぎ、食べていけているひとなんて各分野そんなにいない、というか、結構難しい、ジャンルによるけれども、というのと、「英語」だって同じこと。
正規の社員に成り難い時代がずっと続いている。「英語が得意」「英語が出来る」ひとはどんどん増えているだろうし。
これって松田さんや周囲のリアルな体験談も混ざっているのかなあ、などと考えながら読んだ。
「グローバル」というあだ名の男性が出てきて、そう、こういうユーモア(?)切り込み方、出来る主人公なんだけどなあ、などと思いつつ。
母親と娘の関係性も、出てくる。
「森」ってなんだろう。
この話の登場人物はみんな「森」を持ってそこに住んでいるのかと思ったらそうではないらしい。
「森」の中の家や家具、階段の手すりの描写など細かいところまですんごくセンスが良くて頭の中で映像化して身悶えしてしまいそう、あー自分で文章書くひとってこういう、こういうことなんだよね、すべて、細部まで神経はらうってこういうことだよね、才能って素晴らしい、とかしみじみ味わった。
母親の関わるところすべて「小花模様」なのは……これは、このお話においては、批判の象徴的な柄になっていて、終盤にこの小花たちがある効果を果たすシーンではおおっ、そう使うんだ、と思った。が、それはそれとして、小花模様、決して嫌いじゃない、そう、こういうキャラの、センスの持ち主とともすれば同化する危険性を孕んでいることは百も承知の上で。
三人称が「娘」だったり、「英子」だったり、後の方で一人称「わたし」になったときは「おおっ」と思った。
読みどころが満載なので、またじっくり再読したい。
大好きな話がまた増えたよ。

*写真はイメージです
「WB」vol.027_2013_winter(2013年2月/早稲田文学編集室)
アスタリスク*も含めてタイトル。何故か詩のように上下余白部分を広く取った組み方になっている。これは散文詩ではないと思うんだけど改行も無いし、ちょっとそういうふうに読むのもありなのかな。

おにいさんがこわい
「群像」2011年4月号(2011年3月/講談社)
「おにいさん」というのはNHKの教育テレビ番組などに出てくる、あの「おにいさん」っぽい。
子どもたちが次々に「おにいさんってなに? こわーい」などと泣き出して、シュール。
と思っていたら最後のオチは……なんか、何故か、落語を連想してしまった。

スカートの上のABC
「mille」2013-2014 Autumn/winter no.0(2013年11月/PHP研究所)*加筆修正
会社のOLたちの、スカートの模様についての会話など。
素敵なスカートだな、ちょっと欲しい、などと思ってしまったがこういうのはなにか深い意味を象徴しているのでしょうか。
スカートのOL、減りましたね。
これも上下余白部分を広く取った組み方になっている。

博士と助手
「WB」vol.025_2012_spring(2012年5月/早稲田文学編集室)
これはSNS批判というかSNSのつぶやきどうよ? みたいな話なのかなあ。
あるあるー、夜中にポエム書いちゃうみたいなノリとかー、とすぐに天に向かって何とやらの世界なので、結構精神的に「構えて」読んだ。
【あの大手通販店の商品の感想を書くあのページでみる「気軽に見れておすすめです」「すぐ読み終えられるのでおすすめです」】に続くコメントとか出てきて苦笑。まあでも世の中には「短くて、最後まで簡単に読めそう」という、文庫本の薄さで本を選ぶ方々もそう珍しくないみたいだし。
作家の方には、いろいろ思うところ、おありでしょうな。
これも上下余白部分を広く取った組み方になっている。

わたしはお医者さま?
「NHKラジオで読む村上春樹」2013年11月号(2013年10月/NHK出版)
職業当てゲームみたいなのをやっている。そのうちにひとりの発言から架空の、ホントにあればなりたかったな、っていう夢の職業を挙げるゲームに変わっていく。いままでの流れから、いつ怖い展開になるのかと恐れながら、どきどきしながら読んでしまった。


文庫版はこちら。
英子の森 (河出文庫)
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松田 青子
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