2018/01/28

中里恒子・野上彌生子 精選女性随筆集十 <①中里恒子の章>

中里恒子・野上彌生子 (精選女性随筆集)
中里 恒子 野上 彌生子 小池 真理子
文藝春秋
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■中里恒子 (小池真理子・選)
文藝春秋から出ている『精選女性随筆集』。
とても美しい叢書で、一流の女性作家の文章を読んでみたい、という欲求にマッチした素晴らしいラインナップ。
その中からいくつか選んで購入した。
こういう本は図書館向きなのかなとも思うが、1冊の値段は普通の文芸書と変わらないし、何より装丁が可愛いので手元に置いて愛でたくなる。

装画:神坂雪佳・古谷紅麟編『新美術海』(芸艸堂)、神坂雪佳『蝶千種・海路』(芸艸社)より
装幀:大久保明子

10巻目は中里恒子と野上彌生子を取り上げている。
選者は小池真理子。

目次
「独り居の愉しみ」(小池真理子)
中里恒子1 日々の楽しみ
閑日月/仕事の楽しみ/旅/星/台所の話/犬と私/或る作家の日常性/食べる・仕事・睡眠/室内の花たち
中里恒子2 旧友たち
横顔/佐多さんとのつながり/生涯一片の山水/吉屋信子さんを悼む/堀辰雄さんの世界/河上徹太郎さん逝く
中里恒子3 本と執筆
井戸の中にて/手紙/作品以前/硝子ばり/小説のなかの土地/俳句と小説の差(抄)
中里恒子4 おんならしさ
眉/習性/花燈籠/会うは わかれ/「アンナ・カレーニナ」と女性の恋/今朝の夢/尾花と狐

野上彌生子1 山荘暮らし
野上彌生子2 作家の思い出
野上彌生子3 同時代人へ
野上彌生子4 山姥独りごと
(野上彌生子の詳細目次は②の記事のほうに書いたのでこちらでは省略)

解説(中里恒子)金井景子
解説(野上彌生子)山下聖美
略年譜

まず最初に選者の一文を読んで、巻末の二人分の解説を読んで、略年譜に目を通した。
そこから数日たってからようやく本文にとりかかって、これまた数日かけてちょっとずつ中里恒子の章は読み終えた。

◆中里恒子の章を読んでの感想

ひとことで云うなら「特に後半は意固地なお祖母さんの繰り言めいていたなあ」という感じがないでもないが、それよりも「この方の書かれた小説を読みたいなあ」というのが大きかった。このひとが「創った文章」はどんなものか、という点で。
しかしざっと検索してみたところ、絶版が殆どのようで、電子書籍化もなさそう。あらすじを2,3拾い読みしてみると恋愛小説なのらしい。恋愛小説だったらあんまり食指は動かないなあ…。

家の中で細々としたことをして日々を丁寧に暮らしている、一昔前の、女性作家の日常――というテーマはすごく惹かれるものがあったが、実際読んでみると風景や日常生活描写は意外に少なくて、内面的なことが書かれていたり、実際的な事実描写が淡々と書かれていて「美しいもの」「豊かな生活」の描写があんまり無くて、思っていたのと少し違った。
現代の作家さんたちが書かれる随筆・エッセイとなんだかいろいろ違う。
旧友たちの章では特に川端康成の生活の気ままな様子が印象に残った。

「時代」というものを最も感じたのは国際結婚に対する著者の捉え方で、娘さんがアメリカに留学中にアメリカ人と結婚することになったことについての衝撃。――いやでも、そういうのがそんなに嫌なら、そもそも年頃の娘さんを外国に留学させるべきではなかったんだろうなあ。

野上彌生子の章については後日書きました