2017/11/09

週末カミング

週末カミング (角川文庫)
週末カミング (角川文庫)
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KADOKAWA / 角川書店 (2017-01-25)
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kindle版
■柴崎友香
角川書店より単行本2012年11月28日刊、角川文庫版2017年1月25日刊の電子書籍版(解説も収録されている)。

初出は不明なのが多いが、「野生時代」2006年8月掲載の「蛙王子とハリウッド」がもっとも古く、「新潮」2010年6月号掲載の「ハルツームのわたしはいない」が最新とのこと(「あとがき」より)。

8篇とも設定が「週末」という点が共通点で、登場人物のリンクなどは特にない。語り手も男女いろいろ。
東京の話だったり、兵庫だったり。
特になんにも大きな出来事は起こらない、恋愛も絡まない、これぞ日常、なんだけど、全部「他人」の話で「共感」はあんまりなくて、卑近な感じはしなかった。
ちょっとしたスパイスを効かせて、読み手によっていろいろ考えさせられる印象的な「小説」にしてあるところが素晴らしい。

気の向くままに読んだので数日かけて読了。
以下、目次順にざくっと感想など。

目次
蛙王子とハリウッド(『野性時代』2006年8月号)
東京。31歳一人暮らしの会社員の「わたし」。風邪をひいたため年末年始帰省せずにいる、その「ハレ」設定の「ケ」日常。集合住宅の周囲がみんないないとこんな感じなんだね。後半会社の既婚の先輩が急遽泊りにきたときの主人公の思考も面白い。

ハッピーでニュー
神戸。妹の彼氏の友だちがバイトをしている洋書店についていった「わたし」の話。こんな書店三宮にはいかにもありそう。行ってみたいけど閉店しちゃうのだった(そもそも架空だったね!)。でもだから好きな本を持って行っていいと言われたりしていて、なんてまーうらやましー! オーナーについての「お金持ち」の説明として「駅から自宅まで他人の土地を通らずにいける」というのが面白い。

つばめの日(『野性時代』2008年12月号)
姫路に向かう車中3人の「わたし」とその友人の女性2名。サービスエリアで車から煙が出てきて…。気のつかい合いとかキャラの違いとかが面白い。

なみぎゅまの日
大学受験のシーンからはじまる。十代の受験の日の細やかな心情が鮮やかに描かれているのに驚く。「なみぎゅま」とは何かと思うがつまりは夢の話なのだった。

海沿いの道 (「モンキービジネス」)
前日に行ったライブで騒音性難聴になった「わたし」。
縁日で偶然再会した、学生時代に家庭教師をしていた女の子の両親の交通事故のエピソードが強烈過ぎる。
こんなひといるんかなあー「思い至らない」「気付かない」って酷くない?
っていうか普通に通報しろ。

地上のパーティ
「おれ」は今どきの「覇気の無い」「草食系の」「スイーツ男子」とされて面倒くさいから否定もしていない二十代前半と思われる男性。
実際は年上の彼女と同棲していたりする。
職場の先輩女性らに誘われてタワーマンション31階に住む元同僚のホームパーティについて行く。
小金沢さんみたいなひとは苦手だから出来れば関わり合いたくないものだと思った。
タワマンの話で終わらず、最後、ひとりで行ったラーメン屋の話で〆るところがポイントだろう。

ここからは遠い場所
百貨店の中の、アウトドア系の服や雑貨を扱う店で働いている「わたし」。
いわゆるイケてないインドア系を自負する自分と、キラキラ・モテ系女性を対比し続ける思考。
何故キラモテ女子が主人公の名前を覚えていて話しかけてきたのかはわからないなあ。なんでも言わずにはいられないひとっているからなあ。

ハルツームのわたしはいない(『新潮』2010年6月号)
第143回芥川賞候補作
東京に暮らしている「わたし」はアイフォンで世界の気になる都市の天気をチェックしている。
「友人の友人」の結婚パーティに行った後、「友人の友人」の誕生日パーティに行く、という行動に「こういうのを【リア充】っていうんだろうなあ…」と思った。
水族館が出てきて、東京のお好み焼屋が出てきて、最後主人公の住む町に行く、夜の町と大きな欅とかすごい生命力をみせる竹の話とか木の話が東京の話で出てくるのがイメージと違って面白かった。夜の闇と大きな樹木のうっそうとした黒い影が目に見えるようだった。

あとがき/文庫版あとがき
解説:瀧井朝世