2017/10/12

終わらない歌

終わらない歌 (実業之日本社文庫)
実業之日本社 (2015-11-06)
売り上げランキング: 21,031
kindle版
■宮下奈都
本書は『よろこびの歌』(2009年10月、実業之日本社)の続篇(3年後)を描いた短篇集である。
単行本、実業之日本社2012年11月17日刊、文庫版2015年10月3日刊、の電子書籍版であるが、珍しく解説(演劇集団キャラメルボックスの成井豊氏)も収められている。

小説誌「」(実業之日本社)に掲載された4編(「シオンの娘」「スライダーズ・ミックス」「バームクーヘン、ふたたび」
「Joy to the world」)、福井のタウン誌連載の「コスモス」、書き下ろし「終わらない歌」の計6篇。

卒業生を送る会の合唱から3年、少女たちは二十歳になった。
(Amazon:単行本版:内容紹介から引用)

『よろこびの歌』について細かいことは忘れてしまったが、女子高校生たちのさわやかな青春小説で、「歌」がテーマで、「良かった」ということは覚えていたので、続篇がAmazonで上がってきたときに購入してあった。

でも正直「"続篇"だし、あんまり期待しない方がいいよなあ」という気持ちで読んだので、最初の1篇をするりと読めてしまって、「ああやっぱり読みやすいなあ」「上手だなあ」。
最近読むのに体力が要るものを続けて読んでいたのでこういうふうに書いてあることがそのまますーっと同じテンションで飲み込んでいける作品は楽だ。短篇集なのに連作みたいなもので主人公は変わるけれども作品のトーンが同じなのでいちいち作品との向き合い方とか文体を探らないでいいし(だって世代の同じ同級生の女の子の3年後だもんね)。

読みながら一番思ったことは、
「この小説は10代後半から20代前半までに読むのがベストだなあ」
つまりいまのわたしが読むには内容が若すぎる。

どれも二十歳の女の子が主人公で、しかも三人称(客観視)ですらない、ばりばりの一人称のモノローグが延々続く話ばっかりなんだもの。
いやー……わかるけどね。わかるけど、もう「深く共感」とかは遠すぎて、眩しすぎて、キラキラですわ、って感じで。
じゃあ前作は高校生主体だからもっと遠かったでしょ、なんだけど、どう思ったんだっけかな。
あれは長篇だし舞台設定を探りながら読んでいく面があったからなあ。

前作もそうだったけど本作はより濃く「ハイロウズ」推し、な気はする。
わたしは別にファンではないが、解説の成井氏と同様に、代表曲だけはテレビやラジオで何回も耳にして育ったので聞き知っているというレベルだ。
ファンの方だったらまた違う読み方があるのだろう。
ただ頭の中で再生される「終わらない歌」は男性のあの特徴のあるかすれたようなボーカルなのに対し、本書では若い才能のある女の子3人のものすごく良い感じに歌い上げられる声、なのでどんな感じだろう、と想像しながら読んだ。

玲ちゃんの歌を聞いたひとはみんな目を見張ったり、顔を上げたり、とりあえずリアクションがかならず返ってくる。まるで北島マヤ(@『ガラスの仮面』)の演技みたいだ。でも本人は音大に入って声楽科で学んでいるんだけれど、その中で「トップ集団」の実力ではないと悩んだりしている。まあ、優等生が進学してまわりみんな優等生で落ち込む、ってどんなジャンルにも出てくる若いときのわかりやすい「つまづき」原因だよね。

この本では玲ちゃん以外にも千夏や早希などがそれぞれの主観で描かれるが、やっぱり一番好きなのは玲ちゃんが絡む話かなあ。っていうか前作の登場人物で覚えていたのって玲ちゃんと千夏だけだったり……。
女の子たち以外では、サブキャラとして登場する若い男性陣にもなかなかイケメン風だったりノーブルな感じなのがいたりして、いやーイイね! 特に「雨みたいな声」(ってどんなのだ)な、彼が素敵。若き日の恋愛のほのめかし・はじまりって、ときめきがあって、読んでいるだけでドキドキしちゃう。ガッツリ濃厚恋愛モノは苦手なので、これくらいが好みだ。

玲ちゃんの歌が聴きたいわー。

ん? っていうか解説がキャラメルボックス代表さんってことは……もしかして舞台化があったりするのかなあ?

活字では想像力を、フルに逞しく読むしかないが、逆にいくらでも逞しく出来るというか。
最後の話はそういう想像上の歌声が響きあって、なかなか素晴らしく盛り上がった。前5つの話もそれぞれハートウォーミングで良いのだけれど、最終話はそこであった細かい悩みや不安・違う視点で考えた時の「それってどうなのかなあ…」などを全部真っ白にして、「盛り上げ!」に特化して描かれているような。
「青春」とは、これくらい突き進んでしまうものなのかも知れない。