2017/08/28

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬
若林 正恭
KADOKAWA (2017-07-14)
売り上げランキング: 204
■若林正恭
オードリーの若林さんの書いた旅行エッセイ(?)。
初めて若林さんの文章を読みました。
前作『社会人大学人見知り学部 卒業見込』も単行本を書店で見かけたときから「面白そうな上手いタイトルをつけられるな~」と興味を持ったものの「この齢で人見知りの本読んでもなあ」とか考えているうちに文庫版も出て、だけどkindle版はいまだに出ていない。
そうこうするうちに第2作の『表参道の…』が話題書で上がってきて、どうやらそれは旅のエッセイらしい。おお、旅エッセイはずばりドンピシャ・ストレートに好みであるぞ。
というわけで読んでみた。

感想としては、旅エッセイと思っていたら最初のほういきなり内面心情の吐露みたいな内容が出てきて、まあこれはテレビとかでちょい見している程度のわたしでも著者のキャライメージのままだったので意外性があるとかでは無かったけど、けっこう自分の考えていることとか言っちゃうんだ、とそういう意味で少し驚いた。

キューバに行きたいと思って、休みが確定した2か月前に旅行会社に行ってももう予約で埋まっていて取れないし、第一5日しか休みが無いのにツアーは4泊6日が最短。
でもそこで諦めず、スマホで飛行機の空きを見つけてチケットを取り、ホテルもネットで探しまくってわりとメジャーどころがたまたま開いていたのをゲット。一人旅をすることになるのである。

旅のやり方は予想していたよりもずーーーっっっとスマートでスムーズ。
失敗とか、トラブルほぼ無し。
旅行エッセイでは「こんな大変な目に遭ったぜ」っていうのが多いし、ましてや初めての一人旅ということなので、こんなに問題なしで、すごいなあと思った。どうやらちょこちょこ書かれている他の外国との比較などから、海外旅行の経験が結構お有りのようで、それが大きいのでは。あと、事前にキューバの映画とかを何作も観て予習しておられたり、ガイドブックを読まれたり。このへん、きっちり勉強されているからなのですね。
海辺で起こったトラブルはこれは日本でもありそうなレベルのまあよくあることだし(確かに腹立つけどね!)。それよりもあんな方法でスマホとお金が無事だったことのほうがずっとびっくりしたし凄いと思ったわ。

本の展開としては、普通の旅行エッセイでは有り得ない内容が終盤書かれていて、まあそれは今回キューバに行きたかった本当の理由のひとつ、ということなんだろうけれども、話の持って行き方というか、作品としての構成として、かなり変わっているというか珍しいような気がした。理由そのものは、すごく真摯で、ひとりの人間として、うん、そういうことはあるだろう、と真面目に同情申し上げる。ネタバレになるので詳しいことは控えるが。

旅に出る理由はひとつではない。
最初に書かれていた理由も嘘では無くて、それも「あり」ででももう少し掘り下げると「これもあるんだ」ということで、でもそれは誰にでもぺらぺら喋りたいようなものではない。

この本を読んで、キューバってなんだか思っていたよりも観光地として楽しみやすそうな、治安も良い町なんだな、と思った。ちなみに2016年の旅の記録である。
あと、若林さんが現代の日本社会の周囲からの評価のありかたなどについてかなりこだわって書かれているので、そういうことをそんなふうに考えているんだなと興味深く読んだ。全部自分の身にひきつけて、等身大で考えるからわかりやすいというか。資本主義と社会主義をこういうふうに比較するってまあ学者さんはしないもんね。若林さんが出された結論が面白い。

時事問題とか社会情勢を知るために大学院生に家庭教師してもらっているとか、へえーって感じ。まず先生に「世界史と日本史の近現代史のところを読んできてください」的なことを云われていたのが面白かった。このへんって学校でもあんまりやらないからなあ。
それで先生と現代の社会の価値観とかその流れとかを学んで結論として前作『社会人大学人見知り…』についてご本人がある結論を下すシーンがあるんだけど、うーん、これもなかなかに衝撃的、かな? 読んでいないので判断が難しいんだけど、これは良かった、ってことなのかな?

文中に『コンビニ人間』を読んだ感想をさらりと述べられていて、それが実に端的に芯を突いた感想で、こういうふうに短くわかりやすくその作品を評価する能力のないわたしは「おおお……!! くうぅ、そういうことだよなあ…!!」。さすがテレビで第一線で活躍される方は違う。

本書には著者が旅先で撮った写真が載っていて、楽しい。
葉巻を結構吸われるのでイメージとちょっと違った。

目次
ニューヨーク/キューバ大使館領事部/家庭教師

キューバ行きの飛行機/トロント/ハバナ空港からホテル・サラトガ

サラトガの屋上/マルチネス/革命博物館/表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬/第1ゲバラ邸宅にゲバラがいない/10万人の聴衆はカストロのラップに乗ってサルサを踊る/ラ・モデナ・クバーナのロブスター/ラ・ボデギータ・デル・メディオのモヒート/ホテル・ナシオナル・デ・クーパ/国営のジャズバー/ライトアップ、ガルシア・ロルカ劇場

市場。配給所/コッペリア/キューバ闘鶏/正しい葉巻のくわえ方/おしゃれバルコニーとトタン屋根/ホテル・サラトガのWi-Fi/サンタマリア・ビーチ/7cuc/トランスツールのバスに3人/音叉

マレコン通り
あとがき 東京


社会人大学人見知り学部 卒業見込 (ダ・ヴィンチブックス)
若林 正恭
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