2017/07/09

フロスト始末

フロスト始末〈上〉 (創元推理文庫)
R・D・ウィングフィールド
東京創元社
売り上げランキング: 372
■R・D・ウィングフィールド 翻訳:芹澤恵
土曜日の夜読みはじめ、翌日曜日の朝から晩までかかって家事の合間に頑張って読み切ってしまったのは通勤に持って行く気力がないのとこういう神経が滅入る犯罪が押し寄せるミステリーは最後まで読んでしまわないと気になって仕方ないから。

面白かった。
けど相変わらず胸糞悪い犯罪がこれでもかと……あと身内も性格悪いのがまたも追加投入されるし、ボンクラはほんっとーにいつまで経ってもボンクラのままでちっとも成長しないし(悪い奴じゃないんだけど警察だから結果重大だったりするのがなあ)、これでフロスト警部の魅力と、あと署内の気の置けないジョークでニヤリ、みたいな展開がなければ救いがないところ。

でもまあ、やっぱりエンタメ小説としてよく出来てる。面白かった!
何がすごいってお馴染みのメンバー、今回限りのメンバーと合わせてこれだけたくさんの登場人物が出てきてもきっちり書き込まれているから一度も冒頭の「登場人物リスト」に頼らなくて大丈夫だったこと。「これ誰だっけ?」が無かったということだ。これはカタカナ名前が苦手なわたしには驚異としか言いようがない。まあ、ほぼ一日で読んだからというのも大きいとは思うが…。

あと前から言ってたけど今回もしみじみと、ところどころじんわりと、翻訳が良い! 使われている日本語チョイスがセンスが良いのだ。

R・D・ウィングフィールドが亡くなってしまってフロスト警部シリーズ未翻訳はあと2作、というのは2008年に翻訳された『フロスト気質』で明らかになっていたが、ついにその最後の翻訳作品を読み終わってしまったわけである。最後である。第1作『クリスマスのフロスト』が翻訳されたのが1994年だもんなあ。

フロスト始末〈下〉 (創元推理文庫)
R・D・ウィングフィールド
東京創元社
売り上げランキング: 360


注意☆ここから下は内容に触れた感想です。

このシリーズのデントン署は常に人手不足の状況に陥っているというのがまず下地。そこへ事件が次から次へ降って湧いて、フロスト警部はあっちこっち駆けずり回る羽目になる……というのがテンプレである。
今回の下地は署長のマレットが警察長にゴマ擦りのために人員の半分をよその事件に投入させてしまったから。事件は冒頭の人間の脚遺棄事件からはじまり、連続少女強姦事件が複数発生しているところへ複数の行方不明が追加され、スーパーマーケット異物混入脅迫事件も同時に起こり、さらに腐乱死体が発見され……。
原題は"A Killing Frost"

さらにこのシリーズを通しての「敵1(?)」マレット署長と、話ごとに毎回新たな「敵2」が投入される、というのもパターンなのだが、今回の「敵2」は新たに赴任してきたスキナー主任警部。面倒はすべてフロスト警部にやらせ、解決の目星がついたら担当を自分にするように、と堂々と言ってのける厚顔無恥の偉そうなヤツだ。
マレットと組んでフロスト警部をもっと劣悪な地に異動させ、デントン署から追い出そうとする。マレットはあれで結構可愛げ(?)があってフロスト警部の舌先三寸にコロッと騙されて曖昧にされてしまうというところもあるのだが、このスキナーに関しては妙なところできっちり要点を押さえてくるので隙が無い。フロスト警部はデントンから追いやられてしまうのだろうか!?(まあフロスト警部のことだからどうにかするんだろうと思ってあんまり心配してなかったけど)。

署内でフロスト警部の人気が高く信頼も厚い、というのが救いだ。彼らとの和気藹々ぶりに心が和む。
でもフロスト警部よりも仕事が出来て、人望もふつうにあって、書類仕事もきっちりするひとがやってきて、今回スキナーが指摘したフロスト警部の領収証の偽造問題を取り上げたらどうするんだろうねえ……とか思うけどもうフロスト警部のオリジナル新作は望めないのだった! 嗚呼!

以下は内容に踏み込んだ感想・ネタバレなので未読の方は読まないでください
(白文字)。

正直な感想だが、全体をぐいぐい引っ張っていくエンタメ性はさすがだが、ミステリーとしてどうだったか、だけに焦点を絞るといささか説明不足で欲求不満が残るという気がしないでもない。このシリーズが好きだという大前提で、あえて、云うならば。
①何故犯人があそこまで残忍なことをしたのか、それは単なる嗜虐性・変態的性欲というだけの問題なのか。終盤に出てくる残酷極まりないビデオの件はそこに金儲けが絡んでいることはわかったけれどもやはりそこに至る掘り下げが足りない、と思ってしまう。「そういう人間がいるのだ」ということなんだろうけど小説なんだから描くからには裏も背中も書いて欲しい、と思ってしまう。理解不可能、説明不能、それが現実なんだろうけれども(つまり知りたいのは続きが書かれるなら裁判で明らかにされるのだろう部分だ)。
②スキナーの終盤での展開、この扱いはどうなんだ。雑すぎないか。どうやって「敵2」と折り合いをつけるのかと楽しみにしていたのにあっけなさすぎる。異動問題の解決も同様。まあそりゃ書類が無けりゃどうとでもなるんだろうけどさ、でもさあ……。

解説は小山正氏で、それによると著者逝去の為オリジナルのフロスト警部シリーズはこれでおしまいだが、別の著者による新作(?)が既に2作ほど原著で刊行済みらしい。まあこれだけ売れている人気シリーズだからなあ。

◇フロスト警部シリーズ
クリスマスのフロスト
フロスト日和
夜のフロスト
フロスト気質(上・下)』
冬のフロスト(上・下)』
『フロスト始末(上・下)』