2017/07/19

アゴの竹輪とドイツビール ニッポンぶらり旅

アゴの竹輪とドイツビール ニッポンぶらり旅 (集英社文庫)
集英社 (2015-11-06)
売り上げランキング: 44,129
kindle版
■太田和彦
いい酒、いい人、いい肴を求めて、ぶらりひとり旅。
日本ぶらり旅シリーズ第2弾。

初出は「サンデー毎日」2011年5月8日‐15日合併号~2012年2月12日号。
2013年3月毎日新聞社より刊行された『太田和彦のニッポンぶらり旅2 故郷の川と城と入道雲』を改題した集英社文庫(2015年7月刊)の電子書籍版。解説は割愛されている。

冒頭「横浜」は2011年3月、とある。
東日本大震災が起こった年のその月だ。
桜木町に桜を植える、とても心に沁みるエピソードから本書ははじまる。

この章で書かれているだけではなく、本書はずっとそのことに太田さんが大きな衝撃を受け、落ち込み、少しずつ力を取り戻していくその過程になっている。
こういうときだからなのだろうと思うが、本書は古都を訪ねたり、太田さんの子ども時代を過ごした故郷を訪ねて旧交をあたためたり、「原点」「ルーツ」にせまる内容にもなっていて、非常に興味深かった。

わたしは日本酒は飲めないが、太田さんが訪れる居酒屋さんの料理はどれもすんごく美味しそうで、いいなあ、行ってみたいなあという気持ちになる。しかし太田さんのようには行くまい。なんせ居酒屋探訪の通、先生だもの。お店のひととも古い付き合いだということもしばしば(9年ぶりに訪れて覚えているお店のひとも凄いし覚えられている太田さんも凄い)。
居酒屋だけではなくて朝食・昼食に寄ったお店についても時々登場してこれもなんだか粋なカッコいい感じ。

このシリーズ第1弾『宇和島の鯛めしは生卵入りだった』を読んだときは観たことが無かったのだが、その後、うちの周辺では京都テレビで金曜日19時からテレビ版「ぶらり旅」が放送されているとわかったので、都合がつくとチャンネルを合わせて楽しんでいる。プロ野球で放送がないことも多いのだが。
テレビの方は、「食」「呑み」に重点を置いていて、観光案内的な部分がやや少ないが、本だとその部分も結構しっかり書かれている。
テレビはかなり面白いが、エッセイもまた独特の味があり(小説家はこういう構成の文章は書かないよな、というのが時々ある)、読みでがある。

目次
横浜 桜木町に桜を植える/外人墓地の連理の桜/朝のクラブハウスサンド/港に下ろした最後の錨/横浜(ハマ)の清貧の居酒屋
奈良 古都の晩春、温かな酒/大仏様と白寿の媼/阿修羅、憂鬱の眼差し/大和の空の弓張月
鳥取 因幡の白兎とトビウオ/鳥取で故郷をおもう/静かな町、静かな夜/アゴの竹輪とドイツビール
松本 故郷の川と城と入道雲/石畳を踏んで蔵造りのバーへ/朝の光を浴びて/ナワテ横丁の七夕人形/古い宣伝うちわの値段/体育館に新世界交響曲ひびき/校庭に上がった花火
函館 北海道の秋空たかく/市電に乗って古い町へ/市場からタラコを送る/食堂の朝ごはんがうまい/真昼のバロックコンサート
小田原 彼岸花と謡曲「北条」/文学者の小田原事件/二宮金次郎とかまぼこ
鎌倉 江ノ電で大仏様に会いに/酒泉童子のお賽銭/絹代、清方、アルレッティ
木曾 名物は、栗のこわめし/馬籠宿から恵那山を見る/山の宿の木曾踊り/父のつくった校歌/これわが国のワイマアル/村を二分した越県合併/恩讐をこえて
あとがき/本書に登場する店や場所