2017/06/18

ミステリ国の人々

ミステリ国の人々
ミステリ国の人々
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有栖川 有栖
日本経済新聞出版社
売り上げランキング: 26,584
■有栖川有栖
本書は日本経済新聞朝刊に2016年1月3日から12月25日まで連載されたエッセイ集である。2017年5月11日刊。

古今東西いろんなミステリ(本格ミステリ中心なので「ミステリー」ではなく「ミステリ」なのだ)の登場人物を軸に、未読の人にも既読の人にも楽しめる作品紹介となっている。エッセイだけど、書評でもあり、ミステリ入門書にもなっている。
基本的に物故作家の作品というくくりはあり。1回だけ例外あり。また、英米の作品が多い。
理屈っぽさは無く、読みやすいので気軽に楽しめる。未読本が溜まる一方なので休日にイッキに読んでしまったが、眠る前などに1つ1つ読んでも楽しめるだろう。面白かった。掲載誌がミステリー専門誌とかじゃなくて新聞で一般読者向けっていうのもあるんだろうな。

最近はあんまり読まなくなったが小学校5年のときに学校の図書室でポプラ社文庫の児童向けに書かれたシャーロック・ホームズ・シリーズにハマったのを最初として(ホームズに関しては高校生のときに新潮文庫で完全版を読み直して以降何度となく読み、聖典以外にも手を出したけどシャーロキアンってほどでもない)、以降十代、二十代、三十代と本格ミステリだけに限らずミステリーにはそこそこ親しんできた。しかし本書を読むとまだ未読の作品もあったどころか、「へえ、そんな作品があったのか」と存在自体を初めて知ったものもあり、まだまだだなあ、ミステリーの海は広いなあ、と思う。物故作家の作品中心だから現役のミステリ作家も加えたらもうどれだけ……ってなる。「本格」縛りでこれだからなあ。後で気になった作品をチェックしなくっちゃ。

もうひとつ云うと、ミステリそのものも好きだけど、それにまつわるエッセイとか書評とかベスト100とかの類も大好きなんで、本屋さんでこれを見つけたときは「なんて楽しい企画なんだ」とテンションが一気に上がる感じだった。有栖川さんの著作は大昔に『月光ゲーム』『幽霊刑事』あとはアンソロジーに入っていた短篇を読んだくらいで、あんまり読んでいないんだけど。

まあ、実際読んでみたら「ミステリ国の人々」という定義にはイマイチ迫りきれていない感がなきにしもあらずな気がしないでもないのだけれども(歯切れ悪いなあ)、でも言いたいことはわかる。早い話が、本格ミステリに出てくるある種の登場人物たちは、たとえば社会派ミステリーなんかに投入すると確実に「浮く」だろうからだ。

エッセイだけど有栖川さんの日常生活・身辺雑記などはほぼ出てこなくて「なんでこれ書評集じゃなくてエッセイって帯に書いてあるのかなあ」とちょっと思うがとりあえず著者のすごく謙虚なお人柄が伝わってくる本でもあった。

毎回挿絵があるが、それはモノクロだが、表紙カバーにカラーで載っていて、中身をずっとモノクロで眺めた後にあらためてカラーイラストを見ると「そうかこういう色だったのか」と思う。ちなみに装幀・装画・挿絵:大路浩実。ちょっと真鍋博っぽくて、毎回新鮮な味わいがあって良かった。

【目次】には取り上げられている登場人物(キャラクター)の名前と、作者名、登場する作品名なども書かれているが、ここでは登場人物名だけに省略させていただく。登場人物名だけを見ただけで「あの作家の、あの作品ね」などとすぐ浮かんでくるものもあれば、その作品を既読でもキャラの名前までは覚えていないこともあったりする。それは紹介されるのが主人公やメインキャラとは限らないからであり、「何故、有栖川さんはこのキャラに注目したのか」という読み方も楽しめる。

 【目次
はじめに
ヴァン・ダイン/シャーロック・ホームズ/松下研三/明智文代/スコット・ヘンダーソン/アリス/金田一耕助/三原紀一/黒後家蜘蛛の会/サッカレイ・フィン/柳川とし子/八坂刑事/ユーニス・パーチマン/ヘンリー・ポジオリ/杉戸八重/正木敬之/コーデリア・グレイ/ニック・ヴェルヴェット/亜愛一郎/三角形の顔をした老婦人/ヒュー・ベリンガー/ブロンクスのママ/苑田岳葉/蓮丈那智/ミ/アルセーヌ・ルパン/鬼貫警部/半七/ギデオン・フェル博士/ドートマンダー/仁木兄妹/バキリ/トム・リプリー/オッターモール氏/藤枝真太郎/おしの/イライジャ・ベイリ/ルーフォック・オルメス/門外不出の弦楽四重奏団/砂絵師のセンセー/ディー判事/ジーヴス/蝿男/紫式部/リュウ・アーチャー/アン・デイ/QAZ/五十円玉両替男/テナント少佐/エラリー・クイーン/菜々村久生/ポアロ&ミス・マープル
あとがき

ミステリ国の住所録・各エッセイ文末に作家案内(編集部作成)