2017/05/21

こころ 【かつての愛読書、再読】

こころ (新潮文庫)
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夏目 漱石
新潮社
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こころ
こころ
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(2012-09-27)
kindle版
■夏目漱石
一番最初に読んだのは中学2年のときで、そのときは最後まで活字を追うことが出来たらそれが「読めた」ということだと思っていたので、そういう基準においては最後のページまで「読ん」で、そして当然のことながら全然理解できなかったのだが、それを「理解できなかった」と思わないで「なにがすごいのか、なにがおもしろいのか、どこが名作なのか全然わからない」という感想としていたところが中学生のわたしであった。

次にこの作品に向き合ったのは高校生の時で、国語の教科書にその一部が掲載されていた。それを読んで「なにこの面白さ」と驚愕し、駅前の書店にすっとんでいって新潮文庫『こころ』を買い求めて没頭した。すごく面白く読んで共感して(中学生のときには難し過ぎたんだなー)としみじみ考えたが、このとき感じたこと、思ったことが具体的にどういったものであったかはなんにも書き残っていないので細かいことはわからない。

それからたぶん学生時代や二十代のあいだに何回か読み返したと思うが近年はいっこうにその気にならなかった。
12年前の日記に既にこんなことを書いている。

2005年2月17日(木)
◆夏目漱石『こころ』ひさーしぶりに再読するが、この話は少なくとも私にとって同じ漱石でも全然違う、小説を越えた作品であることを確認してしまった。読んでいるとストーリーとかじゃなくて、もう、びしびし精神に訴えかけてくるモノがあるとゆーか。別に同体験や似た経験を持つわけじゃないのに、何故だ。あまりに深く傾倒した若い時代の思いがばばーっと蘇るからだろうか。よくわからない。が、つくづく凄い作品だ。


今回、『漱石漫談』を読んだことをきっかけに久しぶりに読み返してみたが、半分(上 先生と私/中 両親と私)までは真面目に読んだ。この時点で「若い時に繰り返し読み込んだだあけあって、ものすごくよく覚えているなあ」と感じた。(下 先生と遺書)に至っては話のスジはくっきり覚えていてとにかくしんどくて苦しい展開だということはわかっているのでかなり飛ばした読み方となってしまった。

読み返しながら「昔感じたこと」を思い出していったが、田舎の両親へのもどかしいような思いであるとか、騙した叔父への腹立たしさ、そして何より先生と遺書に出てくる恋愛と友情と嫉妬と自尊心への葛藤、罪の意識を負い続ける人生への絶望感などについて、考えたものである。学生になって、漱石自身の履歴を知って、とくに「親」「親戚」と「お金の問題」は自身の苦い思いとも絡んでいるのだろうな、などとも考えた。
とりあえず当時読んでいた時は「お嬢さん」は清くあってほしい、と理想化していた(そういう意味の発言をしたことでよく覚えている)。

今回久しぶりに読んで、感想と云えるほどまとまったものが書ける気がせず、よって上記のように昔の感想などから書きだしてみたわけであるが、いま思うことを書きとどめておきたい。

①昔は確かにこの作品が好きだったし愛読したが、いま読んでも「好きだ」とは思わない。

②お嬢さんは最初はともかく、若い娘なりの「恋のかけひき」みたいなのは自覚していただろう。よって、「私」との結婚が決まった直後に「K」が自殺したことについて本当に何にも自分の心に照らして思うところが無かったわけがない。

③失恋の苦しみ、恋愛絡み、友情絡みで苦しむことは明治だけの話ではなく、現代でも充分多くのひとが共感できることである。だからこの話がそれを中心とした人間の「こころ」のことを描いた小説だと云われたらそのまま理解できるのだが、そこに「明治の精神への殉死」とかいう崇高な次元の違うテーマが絡んでくるから途端にわからなくなる。

④「明治の精神」ってなんだろう? いまとは違う、それどころか「大正」で既に違ったというのだろう、でもこの話は「明治の精神」を絡めなくても充分共感できる。

⑤共感できないところ、たとえば「先生」が妻には最後まで打ち明けないところなんかに、何かあるのだろうか。

⑥Kに自殺され、長年連れ添った夫にも自殺され、静さん(奥さん)の余生が平穏であったとはとても考えられない、主人公は奥さんに先生の遺書の内容を打ち明けたんだろうか、どうしたんだろうか。

同じ漱石の男女の三角関係でも『それから』『門』では妻と夫の問題となっている。漱石の作品については数多くの学者の論文があるから、そういうのを読めばいろいろ勉強できることがあるんだろうけれども、とりあえず「単なる趣味としての読書」レベルで現時点ではこんなところである。
難しい話だ。