2017/05/19

門 【再読】

門 (新潮文庫)
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夏目 漱石
新潮社
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門

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(2012-09-27)
kindle版
■夏目漱石
三四郎』『それから』に続く三部作の三作目にあたる本作品。
登場人物の名前や細かい設定は異なるものの、この三作の主人公と親友とヒロインの物語は「地続き」なので、初読みの方は順番取りに読まないと面白くないが、再読なので気の向くままでよかろう、と『三四郎』の気分ではないのでまず『それから』を途中まで読んだところで『門』が読みたくなってちらっと読みかけたらすごく面白くてやめられなくなった。

前に読んだとき(2006年9月)はどんな感想を書いていたのかと自分のブログを見直してビックリ。わあ、なんでこんなに違うの。逆、までいかないけど。強く感じたポイントが全然違う。
確かに過去の影をずっと引き摺っているから暗い側面はあるけど……。確かにこの主人公は弟に対して面倒見が悪すぎるけど……。

今回の再読で感じたのは、まず妻の気配り、人柄が素晴らしい。
家の中で夫に対していつも笑顔でいるというのが「良い奥さんだなあ」と読んでいて気持ち良い。手本としたい。妻だ夫だと区別するのは現代にそぐわないか、つまり「家の中で配偶者どうしがお互いに対して穏やかな表情、笑顔でいられる」ことは双方大変しあわせなことだと思う。
そう思って気を付けて読んでいくと、妻である御米さんも夫である宗助さんもお互いを非常に大事にしていることがそこここに散見できるのである。

しかし一見幸福そうに見えるこの夫婦はまずその夫婦になったいきさつからして決して平穏なものではなかった(過去のいきさつは本書の3分の2くらいまで出て来ず、それまではあくまでほのめかされる。読者はいろんな状況から『それから』の最後がああだったから、その続きね、と了解して読むわけだが)。
そして妻側が夫にも長い間打ち明けられなかった苦しみ。
夫側の悪意の無い、だけどあまりにも無神経な発言に2回ほどヒヤッとさせられた。

今回読んでいて宗助の弟の小六(そういう名前。小学校6年生ではない)がすごく自己中心的で我が儘に感じてイライラしてしまった。
そりゃあ、兄さんも親身にならなさ過ぎで、もっとサクサク働きかけたりすればいいのになあって歯痒いけど…。こういう、万事にとりかかるのが遅いひとっているよなあ、全部先送りにしていくんだよなあ、迷惑だよなあ(それが仕事でこっちにシワ寄せがきたりする場合すごく思う)。

あと、年齢のこと。
明記されていないが弟が旧制高等学校3年で19歳~20歳で、「十ばかり離れている」という描写があったから主人公宗助は30歳前後。妻の御米について年下とも同年ともなんにも書いていないけどまあ25~28歳くらいだろうか。
それにしては随分老成しているというか、落ち着いているなあ。まあ、明治と平成では人間の習熟度が随分違う、七掛けくらいでちょうどいいという説もあるくらいだから。

終盤にある問題が起こって精神的に追い詰められた宗助は救いを求めて禅寺を訪なうのだが、10日の予定。仕事があるからってのもあるんだろうけど10日でどうにかなると思ったんだろうか。そして10日も休める職場っていうのもすごいなあ(これも明治だからか)。あと、御米に問題なんにも打ち明けずに自分だけ逃げる、ってもしバッタリ遭遇してたらどうするつもりだったんだ! と小一時間説教したい。卑怯な男だ。
禅寺の描写はなかなか興味深かった。ここを主にした小説を漱石が書いていたらと妄想してしまう。

最後、いちおう流れでとりあえずは問題が回避され、めでたしめでたし的になるけど、「春」を喜ぶ妻に対して「しかしまたじき冬になるよ」と答える夫の台詞で終わっているのが象徴的である。