2017/05/10

チーズ・イン・コーベ

チーズ・イン・コーベ
チーズ・イン・コーベ
posted with amazlet at 17.05.10
最果 タヒ
Sunborn
売り上げランキング: 418,563
■最果タヒ(文)・松本直也(写真)
ちょっと変わった風体の本である。
まずサイズ。
170mmx115mmx8mm。
四六版が188mm×130mmなので、やや小さめ。そして薄い。
表紙とかちょっと厚めの紙程度。
学校時代の副読本が近いかな?

中身は右開きで日本語の短篇小説。
最初と途中にカラー写真数点。
左開きでは上記小説の英語翻訳文になっている。

写真は神戸の、別に観光名所でもなんでもない町角風景写真――と思いきや実際に写真をよく見ると「人間」がかなりくっきり写されているなあ、という感じの。

短篇小説は、これまた特にどうということもない短い話で。
主人公は神戸出身で現在は東京の大学生の女の子。
彼女には入学間もないころにたまたま声をかけてくれた女の子の友人がいる。
その子は見た目は可愛いケド性格に問題アリで、ひとのものを盗る。彼氏とか、ジュースとか。
んで全然悪く思っていない。
だからクラスメイトからハブられていて、主人公も「あんな子と友達続けるんなら覚悟しなよ」とか脅される。
で、主人公はその友人について心の中でいろいろ思うところあるんだけど、別に好きってわけでもなさそうだし、でもそんなメンドーな彼女に時々イラッとしつつも友人をやめたいとかも考えなくて、まあ現状維持? 
みたいな話である。

神戸のことを題材にした、神戸の良さを描いた話なんだろうなと予想していたんだけど、そうじゃなかった。
帰省しようとする主人公に友人が閑だから一緒について行ってもいいかと聞く。帰省についてこられるなんて迷惑だと思った主人公が「神戸なんて別に面白い所じゃないよ」といくつかの例を挙げて友人の気を殺ごうとする、その過程で具体的に「神戸中華街」とか「モザイク」とか出てくるだけだ。しかも「横浜のほうが」とか言ってて全然アゲてない。
神戸が全然特別感をもって描かれないので拍子抜けしてしまう。
でもまあ、十代の子が東京の友達に語る故郷ってこんなテンションかも。
郷土への愛も、郷愁も、何よりそれらへの「美化」も、もっと長く離れたり年齢を重ねていないと出て来ない。

神戸というと三宮周辺とか異人館あたりがパッと浮かんで、「観光」「遊びに行く場所」なんだけど、実際はもっと広いしふつうの住宅街があるし「住んでいる町」としてとらえたら全然違うんだろう。
本書は「日常」のふんわりした神戸の雰囲気が伝わる本である。