2017/05/04

漱石漫談

漱石漫談
漱石漫談
posted with amazlet at 17.05.04
いとうせいこう 奥泉光
河出書房新社
売り上げランキング: 21,829
■いとうせいこう・奥泉光
文芸漫談 笑うブンガク入門』(文庫では『小説の聖典』に改題)、『世界文学は面白い。文芸漫談で世界一周』に続くいとうせいこうと奥泉光の文芸漫談シリーズ第3弾はなんと一冊まるごと夏目漱石! 生誕150年企画、だそうである。
表紙に施川ユウキのド嬢(『バーナード嬢曰く。』(既刊1~3巻)が描かれているが、中身の8章それぞれの中表紙でもド嬢の2コマ漫画が楽しめるお得な一冊だ。

目次】を見ていただければこのシリーズを未読の方にもその自由で気軽に「楽しんじゃおうよ!」という姿勢が伝わるのではないかと思う。

はじめに 「文芸漫談」とは?

鮮血飛び散る過剰スプラッター小説 『こころ
「青春小説」に見せかけた超「実験小説」 『三四郎
猫温泉にゆっくりお入りください 『吾輩は猫である
ちょっと淋しい童貞小説 『坊っちゃん
反物語かつ非人情 『草枕
人生の苦さをぐっとかみしめる 『
ディスコミュニケーションを正面から捉えた 『行人
プロレタリア文学の先駆け 『坑夫

おわりに 「漱石ランド」から愛をこめて


急いで言い添えておきたいのだが、おふたりとも漱石は激ラブ! 超尊敬! という下地があって、しっかりテキスト読み込んで、そのうえであくまで「トークショー」「エンタメ」するために遊んで楽しんでいらっしゃる。それは読めばわかる。だから「目次」だけ見て「おのれ漱石先生を愚弄する気か…!」とか短気を起こさないでいただきたい。

わたしは『草枕』が大好きで、いままで何十回と読み返してきて、それは本書で奥泉先生もおっしゃっているように「通し」だけではなく「部分」を折に触れてぱっと開いて読んでそれだけでもう面白い、という感じを堪能しているのだが、本書の漫談を読んで耐え切れず吹き出すことが何度かあった。あはははは。そこツッコンじゃっていいんだー、ってゆーか確かにそーだよねーwww みたいな。
もー、おふたりとも面白いんだから~!

この本は夏目漱石を未読の方は「えっ、そーゆー話なの?」、既読の方は「おお、そーゆー読み方もアリか!」ってな感じでどういう立場でも楽しく面白く読むことが出来ると思う。
あるいは「昔読んだけど細かいところは忘れたなあ…」なんて方にもさらりとあらすじを紹介しつつ細かいポイントについて触れてくるので「そうだったなあ」「久しぶりに読み返してみるか」なんて気になるかも。

もちろんネタバレは絶対にイヤだ! って方はどうぞ夏目漱石原典をお読みになってから本書にお進みください。
まあでも『こころ』の章でおふたりがおっしゃってるけど『こころ』の先生が最終的にどうなるか、なんてのは奥泉先生いわく「国民的にネタバレしてますからね」。
……確かにそうかも。

こころ』をBL的(同性愛的)に解釈するとかはわりとメジャーなアプローチの方法らしいんだけど(?)、あらためて細かく指摘されるとそうか……というか。ここで注意しておきたいのは漱石の時代の「同性愛」は江戸の空気を引き摺っているから、現代の感覚とは異なる、ということである。
それにしても『こころ』ってプロの小説家から見たら失敗作(?)なのか。まあ「手紙」が長すぎるっていうのはそうだけど、なんとなく漱石先生に間違いがある筈がナイ、とか思っちゃってるところがなきにしもあらずで。
そういう指摘も決してけなす意味で書いていないところが、安心して読めるゆえんなんだけどね。

本書で何度も出てくるのが漱石の「孤独」。

漱石の孤独はすごく独特で、どういう孤独かというと、つまりひとりでいるという孤独じゃない。ひとりになっちゃう孤独なんかたいしたことない。そうではなくて、人とコミュニケーションして、失敗しちゃう孤独なんですよ。】(60頁)

うおおおお、そうだ、本当にそうだなあ~…。
さすが奥泉先生、卓見!

行人』なんてわたしは長男の性格がやってられねーなー的な鬱陶しい小説だという印象しかないのだが(オイ)、この漫談読んで「あれっ、そんなふうな話だったっけ」って思わず青空文庫でダウンロードしてナナメに読み直しちゃいましたからね……で、「やっぱこの長男あかんわー、好かんわー」って感じですケドも。

とりあえずやっぱ漱石先生は凄い! っていうことなんだと。
奥泉先生は漱石先生が凄すぎて本を取り落したりしてます。
凄いですよね。

小説の聖典 (河出文庫)
小説の聖典 (河出文庫)
posted with amazlet at 17.05.04
河出書房新社 (2016-08-05)
売り上げランキング: 28,960
↑注意:単行本版『文芸漫談 笑うブンガク入門』を改題した文庫版。

バーナード嬢曰く。: 1 (REXコミックス)
一迅社 (2014-04-18)
売り上げランキング: 1,944