2017/05/07

大阪的 [コーヒーと一冊11]

大阪的 (コーヒーと一冊)
大阪的 (コーヒーと一冊)
posted with amazlet at 17.05.07
江弘毅 津村記久子
ミシマ社
売り上げランキング: 26,385
■江弘毅・津村記久子
本書は、編集者の江弘毅さんと作家の津村記久子の対談に、津村さんの長めの「まえがき」と両氏の短い「おわりに」、江弘毅さんのエッセイ等で出来ている。
江弘毅さんというのがどういう方かは本書巻末に短いプロフィールが載っていて、1958年生まれの岸和田出身の編集者、ネットとかで見たら「本の雑誌」で『ミーツへの道』連載してたあのひとかー、というところくらいしかわからないが、本書を読んでみたら編集さんはふだんは黒子というか、表には出てこないけど、このひとは「結構ガンガン飛ばしてきはるなー」という感じだ。
だから本書の「コーヒーと一冊」という叢書とか、ミシマ社とか、ある種のスタンス、路線がくっきりしているのかも知れないけど、最初そういうのがぐわっと感じられてちょっと読んで「これは…」といったん放置していたのだけど、気を取り直して読み直した。
「わたしは津村記久子ファンやからこれを読むねん!」
「思想とかそういうのはどうでもええねん!」
という姿勢でいたい。

日本人は「西洋人からみた日本人」というスタイルの本を読むのが好きだ、と昔何かで読んだことがある(『日本人とユダヤ人』の著者はイザヤ・ベンダサンとなっていたけど実は山本七平という日本人のペンネームだったとかなんとか。)
同じくくりで血液型の本とか、県民性の本とか、読んでいるのはそれ以外のひとじゃなくてそれに該当するひとが多いんだろうな、と推測している(調べたわけじゃないけど)。

本書は「大阪人」を扱っていて、わたしは大阪生まれでも大阪育ちでもなくて奈良出身なんだけれども、昔大谷先生の『大阪学』なんか楽しく読んで「そうそう」と頷いたりしていて、結構大阪のことを読むのが好きみたいである。それは大阪に勤めて長い、というのと、なんのかんのでお隣さんやから関わりがあるからだろう。奈良も大阪もそんなに違わないんじゃないかな、ざっくり近畿圏だし。まあ違いもあるのは知ってるけど。とか。
だから本書を読んでいって例えば津村さんが会話の例で大阪の子は出来るけど滋賀はどうかな?とか言ってるのを読むと「あちゃー」という気はする。やっぱり大阪のひとから見たら全然違うんかなーとか。

いやでも根本は個人の差のような気もするけどね。
大阪でも北の方と南の方(キタとミナミの違いもあるけど、もっと広い区域で見ても)では違うといわれたら「まあそうかな」と思うけど、ミナミのひとっぽいキタのひとだっているだろうし、逆もしかりではないのかと。

この本、大阪に全然関係のない、東京とか北海道とか九州の方が読んで面白いのかなあ? どうなんだろう。買う時点で大阪に興味のあるひとだから面白く読むのかもしれない。でも本書に書いてあるこのビミョーな大阪ならではのセンス・ニュアンス、正しく伝わるのかなあ。

「コーヒーと一冊」というシリーズは、短くまとめて「本を一冊最後まで読んだ」という感覚を手軽に味わってもらいたいとかそういう思いから生まれたらしい。この装丁とか、良い味出してる。本単体として見ていい感じだ。
読んだ感じは「雑誌みたいな本やなー」。
結構深い所も突いてるんだけど、対談とかで言いっ放し、みたいな空気もあって、重くしない。評論ぽく硬くしない、喫茶店でコーヒー飲みながら駄弁っているみたいな雰囲気があって。

紙が一枚挟まっていて、全部手書きの紹介パンフレットみたいなことが書いてある。手作り感満載だ。面白い。ホームページにもほかにどんなひとが書いているかが紹介されている。
別にコーヒーについて語っているわけではないが、いちおう最後の裏表紙の裏に「コーヒーとワタシ」というコーナーはある。でもまあ津村さんは明らかに紅茶党ですよね……。

目次
舞台裏からご挨拶
1 まえがき「大阪から来ました」 /津村記久子
「化粧の濃いおばちゃん」/「意外と個性がない」/「もう新しくはなれない」/「真似しきれてない」/「大きな地方として」
2 どこで書くか、大阪弁を使うか問題 /江弘毅・津村記久子
働きながら書いていたこと/書いたもの、関西弁で読む?/三代おってから威張ってください/その場にふさわしい言葉を何通りも知っている/身体化された言葉の使い分け/しゃべっているときに水位の調整ができる大阪人/東京に行ったらわからんようになる、と思っている ほか
3 大阪語に「正しさ」なんてない /江弘毅
4 世の中の場所は全部ローカルだ /江弘毅・津村記久子
大阪には「居場所」がある/天満も福島も全然ちがう、けどなんか似てる/すごいローカルなことを守っている都会/やな学校って、みんな同じ顔して誰がいじめてくるかわからない学校/大阪は最後の巨大な「ローカル連合」 ほか
おわりに
コーヒーとワタシ

ミーツへの道 「街的雑誌」の時代
江 弘毅
本の雑誌社
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大阪学 (新潮文庫)
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新潮社
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