2017/02/25

不時着する流星たち

不時着する流星たち
不時着する流星たち
posted with amazlet at 17.02.25
小川 洋子
KADOKAWA (2017-01-28)
売り上げランキング: 1,769
■小川洋子
とーーーっても綺麗でため息が出るほど美しい造本。私家版とかじゃなくてこのお値段でこれだけ美しかったら言う事ないわねえ、と惚れ惚れ本を撫でてしまう。
表紙・各話扉絵MARUU
装丁、鈴木成一デザイン室
カバーもいいんだけど、カバーを外した本体のこの形の美しさが……っ。
背表紙も、そこから折れる溝のラインも。
あああ、素敵~。
んでんで本文の紙の色合いも、活字のちょっと活版ぽいフォントも、ぜーんぶが
U・TSU・KU・SHI・I!!
おまけに10話それぞれに扉絵がある。
内容を読む前に見てくれだけでかなり興奮してしまった(変態)。

で、内容も、小川洋子の短篇集、ということで最初からハードル高めに設定されてるんだけどきっちりその期待に応えてくれる素晴らしさ。
最初の話の冒頭が結構気持ち悪い感じで第一話はもぞもぞしながら読む感じだったから大丈夫かな? ってなって、他の話も最初にさっくり通して読んだらあんまり頭に入ってこなくて、こちらの気持ちに余裕が無いんだなあと思って1週間寝かせてあった。

気持ちが立て直された休日にもう一回、気に入った第五話から始めて第十話まで読んだらやっぱり「先週はなんだったのかしら」っていうくらい心にすーっと入ってきて特に第七話が素晴らしく面白くて(外国に暮らす息子の部屋に遊びに来た母親視点で思わず実体験が元?とか想像しながら楽しんだ)、あらためて第二話に戻って第四話まで読んで、一応読了したあとにもう一回第一話に目をやってみたけどうーんこれは、なんか生理的に「気持ち悪い…」ってなってしまったので、どうも合わないようなのだった。なんか、お姉さんの距離間とか、「誘拐」の扱われ方とかが、ざわっ、としてしまうのだな。
小川洋子の書く描写に「気持ち悪さ」「生々しさ」はつきものであるが、そこが含まれていると了解済みでのファンなのであるが、まあ、こういうこともあるのね。他の九話はじっくり堪能できる話だった。

第七話のほかに特に好きなのは散歩と包装の描写が好きな第二話、「元」のエピソードが詩的に描かれた第四話、叔父さんとの交流と改造されて迷路のようになったりしている不思議な家の描写がツボな第十話。
第九話は別に小鳥好きでなくとも悲しくなるくらい身勝手な夫婦に腹が立つ。

内容紹介文によれば、【グレン・グールドにインスパイアされた短篇をはじめ、パトリシア・ハイスミス、エリザベス・テイラー、ローベルト・ヴァルザー等、かつて確かにこの世にあった人や事に端を発し、その記憶、手触り、痕跡を珠玉の物語に結晶化させた全十篇。】ということで――。

実在のひととか、事象とかをモチーフにしたとかインスパイアされてとか、そういう感じで書かれた十の短篇。連作ではなくて、それぞれ孤立している。通しタイトルである「不時着する流星たち」という話は無くて、つまりこの十話をそれに見立てているんだろう。とっても素敵なタイトルだよね!! ファンタジックで、想像力をかきたてる。

初出は「本の旅人」2016年2月号~11月号
各話の後に、「元」になったものの紹介文が短く記されている。
「元」を知っているもの、名前は知っててもそういう変わった側面に注目したことはなかったもの、全然知らなかったものなど、いろいろだったが、ほぼ全てのお話が「ソレが元でなんでこう展開するんだろう」「どんだけ発想飛んでくるくるダンスしてるんだろう」という感じで、「元」はあくまで「元」、作家・小川洋子の脳内凄いぜ世界を魅せてくれた。特に第七話とか、なんでそこからこの話になるんだって、最後の空港のところはまあわかるとして。
もし可能ならば、この「元」からどうしてその話になったのか、経緯を知りたいが、まあ、天才の脳内のことだからね…。

巻末に「参考文献」一覧が掲載されているのだけど、な、何故かエドワード・ゴーリー『むしのほん』が…(未読だからどこが使われているかわかんないのだけど文字の積み木のとこらへんかなあ?)。

目次と、@「元」を写す。

第一話 誘拐の女王 @ヘンリー・ダーガー
第二話 散歩同盟会長への手紙 @ローベルト・ヴァルザー
第三話 カタツムリの結婚式 @パトリシア・ハイスミス
第四話 臨時実験補助員 @放置手紙調査法(スタンレー・ミルグラム)
第五話 測量 @グレン・グールド
第六話 手違い @ヴィヴィアン・マイヤー
第七話 肉詰めピーマンとマットレス @バルセロナ・オリンピック・男子バレーボールアメリカ代表
第八話 若草クラブ @エリザベス・テイラー
第九話 さあ、いい子だ、おいで @世界最長のホットドッグ
第十話 十三人きょうだい @牧野富太郎

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