2017/02/23

怪しいシンドバッド

怪しいシンドバッド (集英社文庫)
集英社 (2014-06-05)
売り上げランキング: 19
kindle版
■高野秀行
本書は1997年7月朝日新聞出版より単行本刊、2004年11月集英社文庫刊の電子書籍版。
日替わりセールで購入。
「あとがき」に【十九歳から二十九歳にかけての十年間に経験した、旅や海外生活のエピソードを寄せ集めたもの】と書いてある。
高野さんは1966年生まれなので、だいたい1985年~1995年くらいということになる。
本書を読んでみると具体的な年数を書いていない記事もあるが、まあだいたい年代順に並んでいるようだ。
なお、第1部は短めの文章、第2部はやや長めのを、という区分だそう。

全体としての感想は、想像以上に面白かった。何より内容が生き生きしている。
「若さあふれる!」とはこのことか。
若いって、稚拙さを補って余りある面白さがあるなあとしみじみ思った。
文章も、「あとがき」でご本人は苦笑しておられるが、全然悪くない。
文中で(当然違法の)ヘロインをやる誘いに乗ったりして、『アヘン王国…』でも思ったけどやっぱりこのひとそーいうひとなんだねー。言い訳してるけど。ダメ!絶対!

で、そういう場なので当然騙されそうになったり殴られたりしてるんだけど、並の人間なら一気に戦意喪失となりそうなところが高野さんは飄々としている。まだこのときは若くてそんな場数踏んでるわけでもなさそうなのに。やっぱり度胸が据わってると言うか、こういうひとだから危ない土地ばっかり行って探検とか冒険とかして文章書いて生き残ってこられたんだなということがよくわかるエピソードであった。

そもそも最初のエピソードではインドで身ぐるみ剥がれた(パスポートやトラベラーズチェックや現金のほとんどを騙されて盗まれた)ところから始まるんだけど、大使館に泣きついてもどうにもならなかったところから日本に帰るのかと思いきや、ふつーにインドの友達(少年)の家に転がりこんでちゃっかり居座っている。その家というのが3畳くらいのところに父親と15歳を筆頭に3人の少年が住んでいるというのだからそこへさらに居候するとかもう次元が違いすぎて絶句(母親と娘は別の場所に住んでいる)。
他に頼れるひとはいなかったのか?
そんな奥ゆかしいこと言ってたらインドで生きていけないんだろうけど、所詮旅人じゃん! その時点で贅沢してる身分じゃん! って思っちゃうわたしには絶対に無理だ、この精神的なタフさ!

他の本はだいたい1冊で1つのテーマ、地域なことが多いが、本書は7つの章全部地域もテーマも違って、バラエティに富んでいる。そういう意味でも面白かった。

異国・幻獣・他国人との交流・言語マニア…高野さんの原点だよね。いろんな国の変わったところばっかり読めてすごくお得な1冊だ。
どれも面白かったけど、特に素晴らしかったのは「桃源郷の闇」かなあ……「梯田」とか描かれている景色がすごくきれいで、読んでいるだけでうっとり。「土楼」とか、著名人が客家からたくさん出てるとか、面白いなあ…。ネットでいま検索してみたけど、これをリアルで見たら感動するだろうなー!

昔、これの文庫が出たころにタイトルと表紙のイラストを見て「エッセイじゃなくて小説だろう」と誤解してしまっていたのだが、完全なエンタメ・ノンフィクション(エンタメノンフ)であり、エッセイ集だった。
何故「シンドバッド」なのかは「はじめに」に書いてある。表紙のイラストは……まあ、これはイメージでしょうな。こういうイラストのような内容ではアリマセン。

【目次】
はじめに
第一部 旅は災難、世は情け
第一章 私も彼の地で無一文【インド編】
・カルカッタの居候/グジャラートの別れ歌/ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ボバール
第二章 バイト、時々怪獣探し【アフリカ編】
・北朝鮮のバンザイ要員/『大日本帝国』は今も実在する/世界でたった一つの職業/外務大臣を怒鳴りつけた日/幻獣ムベンベを追え・非完結編
第三章 就職先はカオスの亜熱帯【タイ・ビルマ編】
・あなたがもしゾウに踏まれたら/五二八の愛と一五〇〇の愛/老将軍との対話
第四章 ほらふき西誘記【中国編】
・一路発財/塩山奇縁/「熱情」トライアスロン/ニセ札売ります、嫁も売ります/胎盤を食う/中国人を捨てた純血中国人
第二部 辺境の探し物
第五章 幻の幻覚剤を探せ【コロンビア編】
第六章 桃源郷の闇【客家編】
第七章 季節はずれの野人探し【神農架編】
あとがき/文庫版あとがき