2017/01/09

おいしいもののまわり

おいしいもののまわり
おいしいもののまわり
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土井 善晴
グラフィック社
売り上げランキング: 11,609
■土井善晴
2015年12月25日刊。
最近になって読みたくなってもそこらの小さい書店では見つけられず、正月早々Amazonでポチったもの。
手元にきたのは2016年12月25日の初版第5刷。
初出は「おかずのクッキング」(テレビ朝日・刊)2007年~2012年に連載されたもので、本書はそれに加筆・修正し、まとめたもの。「はじめに」だけ鹿島建設社内報「月報KAJIMA」675号からの再録とのこと。
この連休でぼちぼち読んだ。

すごく論理的というか、理にかなっているなあ、「よう考えてはるなあ」ということを読みながら何度も感じた。
「おいしくするために」というよりは、もともとの味を損なわないようにとか、衛生的にとか。
それは食中毒云々のレベルじゃなくて、例えば雑菌が増えるともうそれだけで味が変わってしまう、料理は作りたてで味見しておいしいと思っても時間が経つと変化していってしまうからそこまで考えて味付けしなくてはいけないとか。
いわれてみればお弁当に入れるためのおかずとそのまま食卓に出して出来立てを食べる前提でとは味付けとかいろいろ調整するよなあ。それはなんとなく体験とか実際お弁当を食べての経験とかで身に染みているからで。あらためて文章できっちり説明されると「ああそうやな、ほんまにそのとおりやわ」とうんうん頷きながら読む。
両手で調理してしまったら蛇口を汚れた手で触らないといけない破目になる、だから片手はきれいにしておくべきだとか、そういうのは毎日料理していたら経験で知っているがそういうことも丁寧に説いてあるので「そこまで世話を焼いてくれはるんやなあ」とびっくりする。理想はそうだとは知っているけどどうしてもうっかり両手を使ってしまったり、不器用なので片手では出来なくて両手を使ってしまうこともあるんだけど。
もちろんあらためて教わって「あっ、そうか、」と目から鱗が落ちたのもたくさん、ある。
例えば日本の庖丁に合うのは日本の柔らかい木で作られたまな板が一番いいという話。日本の庖丁をヨーロッパの硬い木で出来たまな板で料理したらあっというまに刃がダメになってしまったというエピソードは非常に面白い。興味深い。言われたらあたり前の、非常に自然なことなのだけどふだんそういうのを考えていない。
料理の事を、毎日、仕事として長年考え続けてこられたひとの、親切極まりない本。
この本に具体的なレシピは載っていないけど、この本を読んだら料理をするのに少し誇り高くなれるというか、背筋が伸びる感じがする。難しいことはなんにも書いていない。でも「料理する人」の責任、大事さ、台所を預かっているということの意味を教えて下さる。

土井先生のテレビなどでの話し方は柔らかいざっくばらんな関西言葉だが、書かれる文章は非常にキリッとした端正なもので、読んでいて気持ちがいい。清々しい。漠然とイメージしていたよりも数段引き締まった、余計な遊びの無い、すっきりした美しさで、そしてこういう本は「筋がわかればいい」というわけにはいかないから一言一句じっくり理解しながらなので読むのに時間をある程度かけないといけない。

ネットを開けたら土居先生がツイッターをされていて仰天した。すごい。
そして「ほぼ日」の正月企画で糸井さんと対談をされていて(まだ途中)、それも読ませてもらったけどこれも面白い。本書に書かれていることも出てくる。話し言葉の中なので、もう少しくだけた言い方になっていたりして、その違いなども楽しみつつ。

素敵な装丁の御本だなと思っていたら、あとがきでそのことにも触れられていた。
また、本書には料理や器などのカラー写真が多数載せられているが、それがまたびっくりするくらい美しくて目の前に鮮やか!
写真は、澤井秀夫さんという方。
装丁(ブックデザイン)は、10inc.の柿木原政広さんと西川友美さん。

目次
はじめに
季節を感じること、信じること/食の場の区別/台所のお布巾/計量とレシピと感性と/お料理をする箸/まな板/玉じゃくし/味をみること・味見皿/パイ缶/保存容器雑味のない味にするために/火の通り加減をみる串/落とし蓋を使う煮物/白いエプロン/おひつご飯のおいしさ考/水を料理する/混ぜ合わせる/洗いものから、学んだこと/焼き色のおいしさ/食卓の味つけの考え方/お料理の火加減/肉をおいしく焼いて食べること/お料理の温度のむずかしさ/茶碗の感性/日本のだし汁/お塩のおいしさと健康のこと/海苔の香り、胡麻の香り/とろみのおいしさと効用/庖丁するという調理法/器を使いこなすための器の見方/お茶をいただく「お湯のみ」の話/大根の一年/日本のお米 日本のご飯/お料理の姿 人の姿
あとがき

※本書にはレシピは載っていません。