2016/11/18

ミステリーの書き方

ミステリーの書き方 (幻冬舎文庫)
幻冬舎 (2015-10-08)
売り上げランキング: 30
■日本推理作家協会 編・著
初出は幻冬舎のPR誌「ポンツーン」に掲載されたもの。初出を見ていたら2003年・2004年・2007年・2008年という感じなんだけど、2年ごとに集中連載したってことかな?
2010年11月幻冬舎単行本刊、2015年10月幻冬舎文庫化、の電子書籍版。
日替わりセールで上がってきたので本書の存在を知り、ミステリーを書こうなんておこがましいことは一度も考えたこともないが、内容説明に【ミステリーの最前線で活躍する作家が、独自の執筆ノウハウや舞台裏を余すところなく開陳した豪華な一冊。】とあったので完全にミステリーファン目線で購入した。

想像していたよりずっと真面目に真剣に、各テーマに沿って43人の一流の作家さんが書かれていて豪華だなあと思った。自筆の場合と、インタビューを行ってそれを構成したものと2種類ある。また、本文のほかに推理小説協会所属の作家対象のアンケート結果も載っているがこれはkindleでは画像になっていてかなり字が小さい(拡大できることはできるけれどもだいぶ粗い)のでほとんど見ていない。

kindleの総ページ数で7924もあり、結構読みでがあった。Amazonの単行本のレビューの中に「1ページ2段構えで、461ページ」という記述があった。

最初に「おこがましい」と書いた理由はわたしは逆立ちしたってミステリーを書けない人間であると自覚しているからで、本書を読んでますますその意を強くしたが、作家が自作の種明かしをしてくれるタイプの本はそうそう無いので、これは貴重。ひとによるけど、かなり細かいことまで喋ってくれているひとが何人もいる。適当なところで納めているひともいるけど。

インタビュー記事の場合、聞き手も実力ある書評家の方だったりするからかなり読みこんで準備していって理論的に「これはこうじゃないですか」と予測して臨んでいるわけだけど、作家さんってある種天才だから、理論とか理屈とか超越したところでお話を作っておられたりするわけで、その食い違いが面白い。特に北上次郎さんが聞き手のパターンが面白くて、これは記事の最後にいくまで聞き手が誰かは書いていないんだけど、読んでいて途中で気付くというか。大沢(在昌)さんのインタビュー記事は途中で笑えてくるくらい面白い。「――身を乗り出して、」とか書いてある。聞き手が北上次郎で構成が大森望とか最後にあって、にやり。あの爆笑書評集のコンビだもんなあ。宮部(みゆき)さんの場合は途中で名前が出てきたけどね。これは結構真面目に聞いてる。

ちなみに大沢さんの記事で話題になっているのは『新宿鮫』シリーズなんだけど……わたしこれ昔、「有名だから読んどかなくちゃかなー」と読んでみてあまりにも男性の夢物語というか主人公の鮫島とヒロイン晶の関係が気持ち悪くて一応最後まで読んだけど第1作しか読めなかった。調べたら2003年5月に読んでる。感想記事はこちら

このインタビュー記事でそれは大沢さんが半ばヤケ気味というか、「えげつない」ことを自覚したうえで書かれたことがわかり、かなり興味深く読んだ。っていうか、北上さんは評論家目線でもあるけどもはや途中からファン目線も混じってきてますよね(さすが目黒さん。にやにや。ほんとに小説が好きなんだなあ)。

最初に自分がファンである作家の記事を読んでいって、2巡目はとばしたところを読んだ。内容的に「自作を例にとって具体的に説明」しているから、ネタバレを読みたくない未読作品の場合はそこでジャンプした。
あと関心がない作家・テーマ・読みだしたら面白くなかった記事はちょこちょこ飛ばした。

基本的に「作家になりたいならこんなの読んでるひまがあったら書け」という内容のことは複数の作家の方が書かれていて、まあその通りだろう。習って書くもんじゃないと思う。
あと、「書く」のは「小説」にだけ注いで、メールとかSNSとかブログに書いて「書きたい欲求」を発散させないほうがいい、とどなたかが書かれていたけどこれもその通り。

この本では執筆されていないけど昔、森(博嗣)さんが「話は全部頭の中に出来上がっていて後はそれをアウトプットするだけ」と書かれていた。恩田(陸)さんは別の本でストーリーはあまり決めないで書いていくと書かれていた(本書ではそのことは書かれていない)。宮部さんは恩田さんに近い感じみたい。ごくまれに「その後のストーリー展開予定」を編集者に渡すことがあって、でも結局全然違う展開になったと。書くことで初めて「リアルに実感」するから続きが考えられるということらしい。

【目次】
まえがき 東野圭吾
本書について/巻末「ミステリーを書くためのFAQ」について →これは本書の内容のあんまり便利でないINDEXに過ぎないので、本書を最初から最後まで読んだら同じことである。

第1章 ミステリーとは
はじめに人ありき (福井晴敏)
ミステリーを使う視点 (天童荒太)
ミステリーと純文学のちがい (森村誠一)

第2章 ミステリーを書く前に
オリジナリティがあるアイデアの探し方(東野圭吾)
どうしても書かなければ、と思うとき(法月綸太郎)
アイデア発見のための四つの入り口 (阿刀田高)
実例・アイデアから作品へ (有栖川有栖)
アイデアの源泉を大河にするまで (柄刀一)
ジャンルの選び方 (山田正紀)
クラシックに学ぶ (五十嵐貴久)
冒険小説の取材について (船戸与一)
長期取材における、私の方法 (垣根涼介)

第3章 ミステリーを書く
プロットの作り方(宮部みゆき)
プロットの作り方(乙一)
本格推理小説におけるプロットの構築 (二階堂黎人)
真ん中でブン投げろっ!(朱川湊人)
語り手の設定 (北村薫)
視点の選び方 (真保裕一)
ブスの気持ちと視点から(岩井志麻子)
文体について(北方謙三)
登場人物に生きた個性を与えるには(柴田よしき)
登場人物に厚みを持たせる方法(野沢尚)
背景描写と雰囲気作り(楡周平)
セリフの書き方(黒川博行)
ノワールを書くということ(馳星周)
会話に大切なこと(石田衣良)

第4章 ミステリーをより面白くする
書き出しで読者を掴め!(伊坂幸太郎)
手がかりの埋め方(赤川次郎)
トリックの仕掛け方(綾辻行人)
叙述トリックを成功させる方法(折原一)
手段としての叙述トリック――人物属性論(我孫子武丸)
どんでん返し――いかに読者を誤導するか(逢坂剛)
ストーリーを面白くするコツ(東直己)
比喩は劇薬(小池真理子)
アクションをいかに描くか(今野敏)
悪役の特権(貴志祐介)
性描写の方法(神崎京介)
推敲のしかた(花村萬月)
タイトルの付け方(恩田陸)
作品に緊張感を持たせる方法(横山秀夫)

第5章 ミステリー作家として
シリーズの書き方(大沢在昌)
連作ミステリの私的方法論(北森鴻)
書き続けていくための幾つかの心得(香納諒一)

あとがき 大沢在昌
文庫版あとがき 今野敏