2016/11/12

学校では教えない「社会人のための現代史」 池上彰教授の東工大講義 国際篇

kindle版
■池上彰
東京工業大学リベラルアーツセンターでの池上彰さんによる講義「現代世界を知るために」をベースにした書籍の文庫版の電子書籍版。講義の様子のダイジェストは毎週「日本経済新聞」に連載された。それを元に2013年10月文藝春秋社単行本刊、2015年11月文春文庫刊。
文庫化にあたり、加筆・修正がなされ、ISについての記述が「文庫版あとがき」に書かれている。

池上さんといえば、1994年から11年間、NHK「週刊こどもニュース」で「お父さん」役を務め、時事問題や世界の出来事などを実にわかりやすく解説してくれたかた。池上さんがNHKを退職された後は同番組の「お父さん」役は違うひとが引き継がれたがどうもイマイチで、「『NHKのお父さん役』がわかりやすいシナリオに沿って喋ってるんじゃなくて、『池上さんが』わかりやすい解説を心掛けておられたんだな。『池上さんが』凄かったんだな」という感想を強く持った。その後、NHK以外のテレビ局で同様の解説番組を池上さんがされるようになり、やはりそうかと頷いた。

そんな池上さんは著作も多いが、本書は2012年から東京工業大学リベラルアーツセンターの教授になり、その講義を元にしたシリーズ『この社会で戦う君に「知の世界地図」をあげよう』『この日本で生きる君が知っておくべき「戦後史の学び方」』に続く第3弾が本書である。第1弾と第2弾は未読なのだが。
第3弾は兼ねてから「現代史って学校でもきちんと習っていないし、毎日のニュースの下敷きとして知っておきたいなあ」と思っていたので、先月日替わりセールでピックアップされたのをきっかけに購入。数日かけてぼちぼち読んだ。

あくまで「浅く広く」ではあるのだろうが、わかりやすかった。「こういう事件が起きたのは、そもそも…」という歴史的な流れをざっくり説明してくれるので、納得しやすい。わかりやすい。詳しい人には「今更…」なのかも知れないが。でもちょっと前の出来事についてだから知ってるんだけど、この本を読んで「ああ、あったあった。ノド元過ぎたら忘れてるけど、そーだったよな」と再確認することも結構あったり。「なんとなく知ってるけど」をきちんと補強してもらったり。やっぱり現代史は2016年11月の今日にもつながっているわけで、こういう本を読んで流れで先日のアメリカ大統領選の結果とかを見ると「うーーーーん」という気持ちになったり(ブッシュって本当に最悪だったよな、やっぱり誰がアメリカ大統領かって大事な問題だよな、とか)。
別にアメリカの話だけではなくて、イギリスとか中国とかロシア(ソ連)とか世界の出来事と歴史がわかりやすくピックアップされていて面白い。日本のことは関連で出てくるくらいなんだけど、それは第2弾で多分語られているはず(やっぱり読むべきか)。

もちろんこれは「池上彰」というひとりのジャーナリストの見解に基づいているから、違う意見や別の見方もあるだろう。そのことは常に頭の中に置いておかないといけないことは百も承知だ。でもまあ、全体として、そんなに偏ってはいないと思うけど。
本書を読んで「風吹けば桶屋が儲かる、じゃないけど、歴史は全部つながってるんだな」ということを強く再認識した。池上先生の言葉によれば
歴史は暗記物ではありません。】【因果関係を辿っていく学問なのです。
また、
「自国の利益のために他国に干渉したりなんだりすると結果的に最終的に自国に跳ね返ってくる」という意味の言葉は太字で書かれており、本書で世界のいろんな悲惨な事件を続けざまに読んでくると本当にそうだなと切実な感じで深く納得できる。
引用すると、
自国の都合で他国に手を突っ込むと、結局は自国に難題が降りかかることがある。各国とも、これを繰り返してきたのです。こうした愚かな歴史を知ることで、少しでも失敗を繰り返さないようにする。これが、現代史を学ぶ意味なのです。
(赤字は原文で太字表記されている箇所)

本書の最後に書かれている、
歴史を知らない指導者は、危険極まりない存在であることを示したのです。】という言葉はブッシュ大統領を批判して書かれたものですが、そのまんま、次期大統領に決まったトランプとかいう御仁にも当て嵌まりそうで……。
「歴史は繰り返す」にならないことを、切に、願う。本当に。

【目次】
はじめに 冷戦がわかると「この世界のかたち」が見える
Lecture1 東西冷戦 世界はなぜ2つに分かれたのか
Lecture2 ソ連崩壊 プーチンはスターリンの再来なのか
Lecture3 台湾と中国 対立しても尖閣で一致するわけ
Lecture4 北朝鮮 なぜ核で「一発逆転」を狙うのか
Lecture5 中東 日本にも飛び火? イスラエルやシリアの紛争
Lecture6 キューバ危機 世界が核戦争寸前になった瞬間
Lecture7 ベトナム戦争 アメリカ最大最悪のトラウマ
Lecture8 カンボジア 大虐殺「ポル・ポト」という謎
Lecture9 天安門事件 「反日」の原点を知っておこう
Lecture10 中国 「経済成長」の代償を支払う日
Lecture11 通貨 お金が「商品」になった
Lecture12 エネルギー 石油を「武器」にした人々
Lecture13 EU 「ひとつのヨーロッパ」という夢と挫折
Lecture14 9・11 世界はテロから何を学べる?
あとがきに代えて それでも未来へ進むために
文庫版あとがき