2016/10/27

辺境中毒!

【カラー版】辺境中毒! (集英社文庫)
集英社 (2014-05-01)
売り上げランキング: 4,603
kindle版
■高野秀行
2008年に本の雑誌社から出た単行本『辺境の旅はゾウにかぎる』を改題し、親本の冒頭にあったエッセイをカットし最後に角幡氏との対談記事を入れた、2011年10月20日集英社文庫の電子書籍版。
それと、わざわざ「カラー版」とあるけど(kindle版では関係無いけど)本書には表紙以外の写真は無くて、しかも表紙も文字だけのカラーだし、いったいなにをそんなに「カラー」強調しているのかなあ?
Amazonの9月26日の日替わりセールで購入だけしてあったのを先日からようやく手をつけた。

本書には『アヘン王国潜入記』のその直後談とでもいうべき「アヘン王国脱出記」が載っていて相変わらず大変そうなところに足を突っ込んでいるなあ。『潜入記』は未読。だってアヘン作ってる集落とかそんなヤヤコシソーなところに関心が向かないんだよなあ。

余談になるが、感想を書くためにウィキペディアを開いたら奥さんの情報が載っていて、片野ゆかさんというやはりノンフィクション作家さんらしい。高野さんと同じ年の生まれ。奥さんと一緒に探検行った著作ってあるのかな? 高野さんの本は結構多いんだけどたまに興味がわいたら読んでるだけなので全然読めてないんだよなあ。
高野さんの著作を読むと「ひゃー、よーやるわー わたしには到底無理やわー」と何回も思う、というか、氏の本に臨むときはハナからそういう「構え」になっているのでハードルは上がっているはずなのであるが、それでも今回も何ヶ所かで「ギャー」と心中顔を顰めたり「無理無理無理無理」と具体的に想像することを意図的に排しながら読んだりした。

本書にはそういう冒険実話のほかに、探究心・探検絡みで数名との対談や書評がたくさん収録されていて、とても面白い。
内澤旬子との対談が白眉かな。高野さんも変だと思うけど内澤さんも想像の斜め上を行く変人だとわかった。前から興味はあって、でも書籍できちんと読んだことがなかったんだけど。気持ちのほんの端っこはわかるけど(良いなと思うものは欲しくなる、というのはよくわかるがその対象と入手困難度と実地で行くっていうのが…)。大槻ケンヂのエッセイには二十代のときハマったけどとかたしかに波長合いそうだな~。なんと角田の光ちゃんともやっている、そういえば昔はバックパッカーだったもんね。マラリアの話、書いてた書いてた。
書評は自分がふだん読まないジャンルだけに書評だけでも「ふーん、そんな世界があるのか」と。こういうふうにわかりやすく概要を説明してくれるのはありがたい。中島京子の著作がとりあげられていたのも意外だったが肝心のタイトルになっている作品についてまったく触れられていないのはどうかと思う。紙幅の都合だろうが、だったら書籍化するときに加筆してほしかったなあ。でも中島京子をこういう視点で評しているのは初めて読んだ。読みたくなるな~。

旅に持って行く7つ道具の話で「コンタクトレンズ」が含まれていて、普段はメガネなのだけれどメガネをかけていると一発で「外国人」とわかってしまうからコンタクトが良い、というのが「へえ~」と思った。文明度はコンタクトのほうが最先端なんだけどまあ、見た目にはわからないし、高野さんが行くような辺境では「メガネ」はまだまだ「文明国」の象徴なんだなあとびっくり。
あと辺境で何でも食べる、っていうのはなんとなく知っていたけど、猿の子どものくだりは……想像を絶するにも程がある!みんなすぐに順応したとか本当か!飢えたらわたしも順応してしまうんだろうか。想像上では到底無理なのだが…。

あと本書を読んで『三国志』は読んだけど『水滸伝』は未読なので読んどくべきか…。高野さん、『南総里見八犬伝』とかも既読のようで、そういうイメージ無いけど、読書家だよなあ。
旅先に持って行く本でいつもものすごく悩むそうだが、近年の電子書籍は導入なさってるのかな。メガネもダメなんだからタブレットとかはお話にならないのかな。ちょっと気になる。

以下に目次を写したが……謎なのが、「対談 辺境+越境」の章の編集方法で、エッセイと対談が交互に組まれているのだが、関係があるわけではなく、本書巻末の初出を見ても掲載誌も時期も全然別なのだ。よくわからんなー。

【目次】
ケシの花ひらくアジアの丘
「辺境」へ。それは、ブラックボックスをのぞく旅
アヘン王国脱出記
テレビの理不尽「ビルマロード」世界初完全踏破の裏側
ミャンマーのゾウに乗って
乗り物――牛とゾウという乗り物
野生動物――ヤマアラシの肉はかたかった
雨季――道が川になるミャンマーの雨
服――リラックス・タイムはやっぱりロンジー
酒――草葺き屋台で飲むヤシ酒の味
宝石――ルビーとヒスイの宝庫
金――なぜミャンマー人は黄金が好きなのか
六十年の詐欺
対談 辺境+越境
 「ショー」よりも「幕間」を
旅――自由気ままもムズカシイ。【角田光代】
ゾウ語の研究
人生は旅だ! 冒険だ! 【井原美紀】
中島みゆきは外国の夜行によく似合う
現場が一番おもしろい! エンタメ・ノンフィクション宣言【内澤旬子】
暦――辺境地の新年を考える
ノンフィクションから小説へ【船戸与一】
田舎の駄菓子屋で出会った不思議な切手
『ムー』はプロレスである【大槻ケンヂ】
辺境読書―エンタメ・ノンフ・ブックガイド
「謎モノ」との出会い―エンタメ・ノンフとは何であるのか
旅に持って行きたい文庫
歴史的事実に沿った現代中国の「水滸伝」(『ゴールデン・トライアングル秘史』鄧賢)
ケモノとニンゲンの鮮やかな反転(『サバイバル登山家』服部文祥)
五感ギリギリの状態で生きるおもしろさ(『アマゾン源流生活』高野潤)
支隊を消した「真犯人」は誰か(『シャクルトンに消された男たち』ケリー・テイラー=ルイス)
時も場所にもこだわらない(『海の漂泊民族パジャウ』ミルダ・ドリューケ)
「伊藤」は辺境地によくいる男(『日本奥地紀行』イザベラ・バード)
言実一致のナカキョー、最高!(『均ちゃんの失踪』中島京子)
イラン人の生の声を聞こう!(『例えばイランという国――8人のイランの人々との出会い』奥圭三)
四万十川で再会(『忘れられた日本人』宮本常一)
腸の中から屠畜と土地を描く傑作ルポ(『世界屠畜紀行』内澤旬子)
男の本能がかきたてられるドタバタ探検・冒険記(『アフリカにょろり旅』青山潤)
エンタメ・ノンフの雄、宮田珠己を見よ!(『ふしぎ盆栽ホンノンボ』宮田珠己)
エンタメ・ノンフの横綱はこの人だ!(『素晴らしきラジオ体操』高橋秀実)
愉快、痛快のアジアお宝探索記(『魔境アジアお宝探索記』島津法樹)
南極探検もびっくりの秘境駅巡り(『秘境駅へ行こう!』牛山隆信)
究極のエンタメ・ノンフは純文学か(『KAMIKAZE神風』石丸元章)
ビルマ商人が見た七十年前の日本(『ビルマ商人の日本訪問記』ウ・フラ)
世間はいかにマンセームー脳人間が多いか(『X51.ORG THE ODYSSEY』佐藤健寿)
織田信長は日本初のUMA探索者か?(『信長公記』太田牛一)
いかがわしき奴らの「天国の島」(『金門島流離譚』船戸与一)
探検部のカリスマは最上のペテン師だった(『流木』西木正明)
特別対談 よく燃えるのが実用探検本の条件だ!(角幡唯介)

辺境の旅はゾウにかぎる
高野 秀行
本の雑誌社
売り上げランキング: 555,200