2016/10/02

ロマンティックあげない

ロマンティックあげない
松田 青子
新潮社
売り上げランキング: 109,091
■松田青子
旅犬さんのオススメを受けて。
2016年4月発行の単行本。
初出は「yomyom pocket」2013年7月15日号~2015年8月30日号。
「雑誌yomyomのポケットサイズ版の姉妹版みたいな新雑誌が出てるってこと?」と思ってググったら
【2013年1月21日、『小説新潮』と『yom yom』の姉妹版として位置付けられる、会員制のデジタル雑誌『yomyom pocket』が創刊された。2014年12月25日に会員サイトは終了したが、連載は「ROLA」のウェブサイト内で継続されている】とのこと。ふーん。

本書の装丁は新潮社装幀室で装画に使われているのはケリー・リームツェンの《ツイスター・シスター》という絵だった。ネット上で表紙を見ていた時は写真のように見えていたのでちょっとびっくり。
見返しに使われている青…青紫?…の色がすごく綺麗。
タイトルはドラゴンボールの初期のエンディングに使われていた「ロマンティックあげるよ」からのもじり。松田さんは1979年生まれなので世代的に近く、なるほどねという感じ。まあこのへんも含めて新潮社の「刊行記念インタビュー」が非常に面白いので是非お読みいただきたい。
そこから一部そうだよなーと思った部分引用。
例えば、ときどきトークイベントの依頼を頂くのですが、企画書に「女性ならではの感性でお話しください」とか、「女性の視点でお話しください」といった一言が書かれていることがあります。それがものすごく不思議で。当たり前ですが、女性もそれぞれ個性がある違う人なので、「女性ならではの感性で」と言われても、何を話せと言われているのかまったくわからないです。私がどう思うかだったら話せますが。男性の編集者さんから「女子のあれこれについてお話しください」と言われたこともあるんですが、「男子のあれこれについてお話しください」と言われたときに、自分は困らないのかなと。

最近の女性が書くものとフェミニズムの問題は結構もう切り離せない感じだと思うんだけど、この方もそうだけど、小説『スタッキング可能』で結構直截的な表現があったからエッセイはもっと、なのかなと思っていたらそうでもなかった。このエッセイはそんな構えた問題意識!とかはあえて書かないスタンスだったらしい(これもさっきのインタビューに書いてある)。
本書でいうと「時代は特に変わっていない」なんかがわかりやすくて、青いシャツとピンクのシャツのエピソードなんかは「まだそんな"若い"男がいるのか!」と一瞬びっくりした後、「……いや、いるな」。世間てまだまだこんなもんかーって感じ。自覚がないのが救いが無いよね……。

映画の話が多くて、ほぼ洋画の話で、映画館とかによく行かれる方のようだ。洋楽の話も多い。あと、英語教室の講師をしたことがあったり、IT系の会社で翻訳の仕事をしたことがあったりと(その後童話や文学の翻訳も手がけられている)英語が得意な方らしい。本書の多くでかなりウキウキしたテンションで映画や洋楽(を歌う歌手)の話が書かれていて、「全然知らないけど、楽しそうだな」とか「ほほう、そんな興味深いユニークな歌詞なんだ」とか思って、試しにユーチューブで検索したらテイラー・スウィフトの楽曲が速攻聴けてしまったりして、げに恐ろしい世の中である。昔だったらCD買わないとどんな曲か知ることも出来なかったのにね。この「昔」というのが「十年前」では効かなくなっているんじゃ、と気付いて更に恐ろしくなった、ははっ。
本書の中でもユーチューブやツイッター、タンブラーなどのSNSに載っていた記事や映像に絡めた言及がたくさんあって、まあ普通に日常生活に浸透している世代の書く文章だなあと思う。その一方でノートとペンを買うのが好きで、使うために「日記」を書くことにしたとかいうアナログが混じっているところなんかが面白い。さらに万年筆にハマったりしている。

特に印象に残っり強く共感したりしたのは、「時代は特に変わっていない」その通り、「「おもてなし」がやってきた!」うさんくさいっスよね、「アイラブ三代目」髭が気になる、「いい壁」"素材"としての壁ってことかな、見てみたいなあ、「各駅停車のパン事件」こういう駅のほのぼのアクシデント系好き、「求む、岩舘真理子のワンピース」シンプルなワンピースって意外に売っていないので激しく同意、「日常の横顔」最後のIBMのビルの点検高速点滅のシーンが圧倒的に素敵、「「クリソ」の思い出」極甘クリームソーダ気になる、「ライアンのタトゥー」あの童話が売れていることの違和感を解明してくれてありがとうございます、「二つのマンション」宅配便のひとの話とか観察鋭いっス、そしてそして「アメリカ二週間の思い出」はそのあまりの豪華さに(柴田元幸さんご夫妻と同行の旅というだけで凄いのだがその後も凄すぎる内容がこれでもかと押し寄せて)眩暈がした。羨ましいとかそういう次元を超越しているのでただ口を開けてぽかーん、という感じ。

【目次】
進め! 復讐のテイラー・スウィフト神 /ダイヤモンドが女の子の一番の友達じゃなくなったあと /その日のハイライト /音姫たちの合唱 /白いワンピースに色を塗れ! /時代は特に変わっていない /「非論理的です」という視点 /おかえりティモテ /「シュールだなあ!」の人 /3人いる! /「おもてなし」がやってきた! /アイラブ三代目 /文房具沼 /フィギュアスケートの季節 /年越しマトリックス /Ponyo is not a lovely name. /それぞれの好きなように /いい壁 /オーサーとプーさん /各駅停車のパン事件 /路線バスとリュック /求む、岩館真理子のワンピース /コスメの刹那 /「写真はイメージです」の不思議 /だって彼女は思春期だから /映画館で見たかった /日常の横顔 /美容院で読むべき本は /大人のガチャガチャデビュー(白鳥狂想曲第一章)/スワンロス続行中(白鳥狂想曲第二章)/フェミ曲ミックスVol.1 /「心のこもった」はたちが悪い /続・「写真はイメージです」の不思議 /隣の席の人 /エクスキューズなしで /「クリソ」の思い出 /ライアンのタトゥー /次の移動に備えよ /セレーナに薔薇を /バゲットに襲われる /もらってあげて!! /丈夫さの証明 /二つのマンション /アメリカ二週間の思い出 /憧れのイカとクジラ /スパッツ! スパッツ! /ネタバレは難しい /マットレスを担いだ女の子 /テイラー・スウィフト再び