2016/10/13

長嶋有 作家生活15周年記念電書

長嶋有 作家生活15周年記念電書
(2016-10-09)
売り上げランキング: 118
kindle版
■長嶋有
2016年7月に書店で無料配布された「長嶋有 作家生活15周年記念冊子」がパワーアップしたものだそう(そんな冊子があったのかー。著者のHPもツイッターも書店も全然チェックしてない情弱だからなあ)。
kindle版で総ページ2339もあるのに300円!安!

面白かったです。長嶋有ファンだから。
長嶋有作品を読んだことがあるひと向け。内容についてかなり踏み込んだ解説(=ネタバレは当然ありまくり)が繰り広げられているので。
自作についてここまであけっぴろげに軽いノリで気さくに自画自賛してしかもそれを公に公開しちゃうひとも珍しいと思う。まあ自分の作品を愛するのは当然だし、良いことだ。長嶋さんらしいなー。

基本的に常に「褒め」のスタンス。ファンブックみたいなものかな。ファンじゃないひとが読んだらどういう感想になるのかな。別にケナしたり批評したりしてほしいとかいうんじゃないけど、うーん、ロングインタビューとか特に。聞き手のモンダイのような気がしないでもない(失礼)。
楽屋ノリ、内輪ノリがどうこう、っていうのは『問いのない答え』についてのインタビューかなんかで長嶋さんがツイッターでファンときゃっきゃやってる、と云われた的なことを書いてらしたが。

本編もまあ悪くなかったけど「付録」である米光さんとのやりとりのほうが面白かった。量もたっぷりあって嬉しい。
付き合いが長くて気の置けない関係だからこそ踏み込めたり、聞き込めたりするところがあるのかなーと。文学畑のひとでそういう立場のかたがやったらまた違う切り口も出てくるんだろうなあとか。
なんか長嶋さんって、見た感じや作品からするとほんわかした優しい人のイメージだけど、意外と頑固ですよね。
というのはやっぱりそうなんだなと。
作品についてもそうだけど、本書では長嶋さんの私生活(?)というほどでもないけど、この本で初めて知ったこととかいくつもあって、例えば有名な『夕子ちゃんの近道』がらみの編集者とのケンカの話とかも初めて詳しい内容を知ることが出来た。お歳暮のことみたいなことかな?って想像してたけど違って、もっと根本的な、小説や作品に対するスタンスが「あかんやろその編集者」って感じでそりゃ怒るわと。いるんだねえ、一流出版社にそんな三流のが。

こういうお祭り企画を無料冊子で配って(たぶんほとんど出回らなかっただろうから)後に電子書籍で破格のお値段で出してくださるところとか、本当にありがたい。でもファンとしては普通に紙の書籍、単行本でも文庫サイズでも良いから出版してもらえたらもっと嬉しいし、絶対買うんだけど。やっぱ電子書籍は永久性がイマイチ信用出来ないっていうか。不況だから厳しいのかなー。「出回らない」といえば雑誌「アンデル」で、これについて長嶋さんが言及してバッサリいってたのとか、そもそも「アンデル」が出てきて長嶋さんがそこに書くことになった経緯とかも知れて、そんな以前からのずっと続いていた人脈とかが生きてるんだなあって興味深く熟読。文藝って人気ないんですかネ、やっぱり。売れないと厳しいんだろうなあ。

ふだん感想をブログで書いてるけど、ここまで踏み込んだ読みこみは全然出来ていないので、凄いなあと思った。『三の隣は五号室』について、6号室までしかない建物で、2階に3号室の隣に5号室がある状態というのが実際には「どうよ」というのが読んでいるときは全然違和感無かったので「あー! そういえば」って思った。雑誌連載時には1階に3部屋、とか書いててじゃああ0号室もあるのか、みたいな指摘があって単行本では直したけどそもそも2階建てで5室っていうのは無いかも、と。1階のひと部屋は管理人室とかボイラー室とかそういう作りということになるのかなあ。作者自身も気づかなかった瑕疵らしい。面白いなあ。
あと、短篇集『祝福』ってそういう経緯で出来た本だったんだ……。全然そんな感じしなかった(寄せ集めをむりくり関連付けたとか)。『祝福』については1篇1篇かなり詳しい解説がなされていて、再読したくなった。

長嶋有作品に対する言及だけじゃなく、たまにチラッと出てくる編集者との関係とか、出版業界事情みたいなのも、あんまり書いてくれるひといないから貴重だわー、面白いわー。

【目次】(・・・以降は補足説明)
長嶋有全作品クロニクル・・・歴代担当編集者と本人による全冊レビュー
長嶋有ロングインタビュー・・・聞き手:与儀明子
特別付録1「10年10冊10連鎖!?」・・・電書「10年10作10連鎖!?」(2010年11月14日発行)の中から、表紙(イラスト:衿沢世衣子)と『祝福』刊行記念ロングインタビュー(聞き手:米光一成)を再録。
特別付録2「オール長嶋総進撃」・・・2012年11月23日に行われたトークイベント「オール長嶋総進撃・長嶋有トークライブ 聞き手/米光一成」を電書化した「オール長嶋総進撃」