2016/09/13

殺人出産

殺人出産 (講談社文庫)
殺人出産 (講談社文庫)
posted with amazlet at 16.09.13
村田 沙耶香
講談社 (2016-08-11)
売り上げランキング: 2,120
kindle版
■村田沙耶香
「産み人」となり、10人産めば、1人殺してもいい──。そんな「殺人出産制度」が認められた世界】を描いた小説。かなりショッキングな設定ということもあり単行本が出版された2014年7月くらいのとき結構話題になっていたので、わたしも未読だけどその設定だけは知っていた。で、なんでか「ミステリー」だと思ってしまった。いやだって作者のこと知らなかったし、「小説で殺人っていったらミステリー」という思考回路だったので。

このあいだの芥川賞を同著者が『コンビニ人間』で受賞され、『殺人出産』の著者だと気付いて「あーあれは純文学だったのか」とあらためて設定とかを見てみたらそもそも長篇じゃなくて短篇なのだった。あんまり設定的にそそそられないんだけど、やはり変わった設定なのでどういうふうに料理してあるのか気になるし、『コンビニ人間』が良かったので読んでみることにした。

えー…で、短いので1冊あっというまに読めてしまったのだが、「発想は面白い」「こんなとんでもない設定を妄想しているこの作家さんはとっても面白くて興味深い人物だ、好きだなこういうことずっと考えてるひと」と思ったが、テーマとか書き方とかがわたしの好みじゃなかった。うーん。
飲み屋で話したらめっちゃ盛り上がりそうだとは思う。
「たとえばさー、10人産んだら1人殺してもいいって云う法律が出来たとしたらさー、どうする~?」
とか、すごい面白い問題提起。喧々諤々、丁々発止と意見が飛び交いそう。
実際に、その問題提起だけ知っていた状態が結構長かったから、読むまでにいろいろ想像はしていたんだけど、実際読んでみたら想像していたのといろいろ違ってびっくりした。

まず「10人産んだら1人殺してもいい」という世界であってもそれは江戸時代の武士の敵討ちみたいな、そういう解釈でいたので、そのこと自体を神聖化したり憧れの存在に祭り上げられているというのが意外だった。
そして殺される側の人間には1か月前に通知して殺される側も祭り上げられる感じで、選ばれた側が特に取り乱したりせずに受け入れることがほとんどだというのに仰天した。
さらにその葬儀では参列者に美化されたり感謝されたりするというのがよくわからなかった。
殺される側は選ばれた時点で逃げようがないのとか、弁明の余地とか、懇願の余地とか、そういうのないのが…うーん…。
しかもこの仰天設定は100年くらいの間で社会全体に浸透したとかで、実際に話の中のアラサーくらいのまだ若い主人公たちですら「昔は殺人って罪だった」とか自分の昔の経験として知っている移行期間の世代なんだよね。社会認識ってそんな簡単に短いスパンでここまで極端に変わるかなあ…。
あと実際に殺すシーンが気持ち悪いくらいに「さらり」と書かれていて。いや単語的には液体的描写が多いんだけど。全篇通じて血とか体液とか好きなんだねって感じで。でも精神的な葛藤とかがほんとに無くて。ひとの命を奪っていく躊躇とか、嫌悪とか。無いの、普通かなあ…。
よくわからんわーこの姉妹!

本書は表題作のほかに3篇の短篇が収録されている。長さはバラバラ。kindle版のページ数で見てみると、
殺人出産」10~1081
トリプル」1082~1424
清潔な結婚」1425~1711
余命」1712~1753
となっており、最後の「余命」はかなり短い。さあここからどう展開するんだろう、と思ったらそこで終わっているという感じ。
トリプル」は「カップル」の恋愛よりも十代の間で「トリプル」でつきあうほうがメジャーになってきている時代、っていう設定。彼女らの母親世代は「カップル」が普通と思っていて、「トリプル」を嫌悪している。「トリプル」というのは3人で付き合うんだけど2人で付き合う時にすることといろいろ違っていて、そのへんの描写がけっこう詳しく書かれているんだけどそのへんからどんどん気持ち悪くなって飛ばし読みしてしまった。でも最後のところで「カップル」の実態を知った主人公が不快感を示しているから全然違う、っていうことは確からしい。これもこういうのを妄想している作者の頭のなかが面白いなと思った。
清潔な結婚」はお互い性的な関係にはなりたくなくて、でも結婚して家族は欲しくて、子どもも欲しくて、という夫婦の話。これもそういう夫婦が結構「アリ」になってきてそういうひとを専門に扱っている機関が存在したりしている架空世界の話。途中まではふんふんと頷きながら読んでいたが、性的関係を持つためにお互いに愛人を持っている、というところで「なんじゃそりゃー」と崩壊してしまった。それって愛人にされたほうが迷惑千万じゃねーか。夫婦で勝手に好きなように約束してるのはいいけど、他人様を巻き込むなよー。
余命」はさっきも書いたけど「そこで終わりかーい」と思った。面白くなるのはここからでしょうに。

単行本→文庫本で装丁の雰囲気ガラリと変わりましたね。

殺人出産
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村田 沙耶香
講談社
売り上げランキング: 94,472