2016/08/26

ロベルトからの手紙

ロベルトからの手紙
ロベルトからの手紙
posted with amazlet at 16.08.26
内田 洋子
文藝春秋
売り上げランキング: 35,560
■内田洋子
紙の本。単行本。
最後の奥付の手前に書いてあったけど「本書は書き下ろし作品です」だそうです。

表紙は印象的な、どことなくサモトラケのニケを彷彿とさせるような、小さな翼の生えた足の木彫りの彫刻作品が使われていて、帯に「<イタリアの足元>の話です。」とある。
内容を読んでみると、テーマとして、ひとの、生活感がにじみ出ている「足」を据えてある。比喩とかじゃなくて、すごく直截的に、足についての描写がどの話にも書かれている。

どこがどう、と具体的には言えないが、いつもの内田洋子エッセイに比べると「暗い」話が多いような気がする。わたしのなかで内田洋子といえば「まるで映画のようなドラマチックさ」のあるエッセイなのだが、数篇読んだ時点で「あれ、なんか今回違うな…」と思った。
とりあげたひとの人生を短い文章で鮮やかに活写する、というのはそのままなんだけど、なんでだろう、というと、それは平たく言って性格悪い人間が出てくる話が多い、というと短慮すぎる物言いになってしまうが、なんというか、そのひとの持つ嫌な面がクローズアップされたエピソードが目立つから、かなあ。で、みんな苦労してる。しんどい話やなあ…大変やなあ…ってなる。
人間関係の話なので、一方的なものではなく、対象人物そのものにも問題があるんじゃないのと思える話も少なくない。どっちに味方、とかそういう次元ではなくて、双方の立ち位置とか考え方とか環境とか、引いて見るから「見える」けど実際問題としては何十年単位の話だったりするから簡単に「こうすれば良かったのにね」とか云えるレベルではなくて。
家族の話が多いかな。妻と夫だったり、親と子だったり。
「家族の距離感」ということを考えさせられることが多かったような。
続けて読むとけっこうどーんと気分が沈むので一呼吸置きながらぼちぼちとつきあった。
個人的に「初めて読む内田洋子作品」としては推さない、かなー。

目次
赤い靴下
曲がった指
紐と踵
私たちの弟
二十分の人生
流れ着いた破片
寝台特急
シーズンオフ
いつもと違うクリスマス
忘れられない夏
強い母
ロベルトからの手紙
あとがきにかえて

装丁 中川真吾
彫刻 田島享央己
撮影 平松市聖

彫刻家・田島享央己さんのシド工日記 (しどこうにっき)というブログがあって、本書(の表紙に使われた彫刻)についての記事がありましたのでリンク貼ります。
「あとがきにかえて」が田島享央己さんへ「表紙のカバーのために作品をお創りいただきたい」という依頼の手紙だったので、「これは、本物? それともそういう想定で書かれた架空の手紙?(つまり装丁に田島氏の作品を使う依頼はしたにしても、実際はもっとビジネスライクな文書のやりとりだったのでは?)」という疑問があったのだがこのブログのおかげで「本物だったんだ!」と氷解しました。
該当部分コピペ↓
内田洋子さんが、表紙作品を私に依頼した時の手紙が、あとがきにかえて掲載されています。
その手紙と内田洋子さんの他の著作、
そして、ロベルトからの手紙の「ゲラ刷り」を読んでから彫りました。
内田洋子さんの書かれる手紙って、手紙そのものが「作品」みたいになってるんだなあ。
田島さんの彫刻とっても素敵なので、これから彼の作品をいろんな本の装丁で見掛けることになるんじゃない! ととても楽しみ。内田さん、日本にちょくちょく帰って来てらっしゃるのかなー。