2016/08/10

コンビニ人間

コンビニ人間
コンビニ人間
posted with amazlet at 16.08.10
村田 沙耶香
文藝春秋
売り上げランキング: 7
■村田沙耶香
先日発表された第155回芥川龍之介賞受賞作
受賞のコメントなどで知ったが、著者は現役のコンビニエンスストアのアルバイトさんでもあり、そのことを活かして書いた小説と知って興味を持って読んでみた。
すごく面白かった。
電子書籍版も出ているけれど、これは紙の本を持つことを選んだ。

初読みだがどこかで聞いたお名前、と思ったらいささかショッキングな設定ということで話題になった2014年7月刊『殺人出産』の著者だった。第14回センス・オブ・ジェンダー賞の少子化対策特別賞受賞らしい(そんな賞があったと初めて知った。ググったら、2005年に我らがなっきー・梨木香歩が 『沼地のある森を抜けて』で受賞されていた!)。
芥川賞受賞だけど、受賞までに既に何作も著作を出されている作家さんなのだなあ。
1979年生まれ。

冒頭からリアルで細かいコンビニ店内の「音」の描写があって、日常馴染んだ場所だけに面白いなーと思っていたら主人公が幼いときの小鳥のエピソードが出てきて「おお、そういう話か」と、ここでいったん呼吸を整えて続きを読んだ。

最後まで読んでの感想なんだけど、著者はふだん感じているマイノリティーへのちくちくちくちく続く、細かな、だけどずっと続く「糾弾」への「怒り」を込めてこの作品を書かれたような、つまり「怒ってるんだな」ということを感じた。間違っているかも知れないが。わたし自身がそういう社会意識みたいなものに対してずっと反発を感じて、やがて諦念もありつつ、でも「しょーもねーなー、なんとかならんのかねー」と考えているからそういうふうに受け取っただけかも知れないが。
とりあえずこのテーマをこんなに面白い小説にしちゃうなんて、なんて凄いんだ、天才だと感動した。

主人公・古倉恵子は36歳未婚女性。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。
家族・友人や周囲から「普通でない」「あちら側の人間」とみなされないように、身近なひとの話し方や服装・持ち物を参考にしたり、妹と相談して「体が弱いから」という言い訳を考えたりする。経験から、「静かにさせるために」相手を殴って機能停止させてはいけない、などの判断をしている。

読んでいる限りすごく良いコンビニの店員さんだと思うし、周囲に迷惑をかけるでなし、何も悪いことはないのに、それでも周りから一線引かれていた、というのが終盤に飲み会の件などで判明してうーむ、と思う。

ただ「付き合っているひとが出来た・同棲している」ともらしただけでこんなに周囲が反応をずっとするというのはこれはこれで変だと思うんだけど…まあ主人公の視点で書かれているからどうだかわからないが。いままでの主人公への抑制していた対応からの反動なんですかね。
キャラにもよるか。

妹がいつまで経っても「いつになったらお姉ちゃんは直るの」と言うのが悲しかった。凄まじいというか。ああ、妹は姉を心配しているけれども、ほんとのところで「姉が普通ではない」と認めたくないのか、本当の真実は辛すぎるからわかりたくないのか。
直る直らないの問題じゃないって、全然調べたり勉強したりしていないのかなこの家族は。カウンセリングに連れて行ったのも子どものときに一応、くらいの感じだし。まあ、恵子を大事にしているのはわかるし、決してダメな家族だとは思わないけど。腫れ物に触る感じ…。

話を動かすキーマンとなる白羽という男が出てくるのだがこれがものすっごい腹立たしい性格・モノの考え方・発言をする人間で、こんなのが職場にいたら最悪って感じなんだけど古倉さんは非常に冷静に彼を観察・分析していて尊敬してしまった。古倉さんは基本的に喜怒哀楽の「怒」が無いような書かれ方をしている。その他はよくわからない。そのほかもひょっとしたら無いのかもしれない。

最後の展開は、「普通」からしたらどうなのかわからないが、主人公に共感・なかば同化して読んでいた身としては「ハッピー・エンド」だと思った。よかった、とりあえず白羽の良いようにさせられないで。古倉恵子は大丈夫だと思う。ちゃんとやっていけると思う。周りのいうことなんか気にしないでいいのだ!だって周りが最終的に助けてくれるわけじゃないんだから。コンビニで真面目に働いて、何が悪い。体に気を付けて、長生きしてほしい。
心配なのは白羽のほうだ。今後も白羽はあのまま居座り続ける気なんだろうか。これからもずっと社会に(というか自分に)不満を抱いたまま生き続けるんだろうか。犯罪に走ってしまったり変な方向に行かないといいんだけど。とりあえず、なんでもいいから働いて自活できるようになると全然違うんだろうけどなあ…。これも「普通」の強要なんだろうか…うーん難しいなあ!