2016/07/07

チア男子!!

チア男子! ! (集英社文庫)
チア男子! ! (集英社文庫)
posted with amazlet at 16.07.07
朝井 リョウ
集英社 (2013-02-20)
売り上げランキング: 2,095
kindle版
■朝井リョウ
スポーツものには基本的にあまり興味が無いのであんまり読まないのだが、同じ作者の後に書かれた『何者』はそう悪くなかったし、昨日7/6の日替わりセールで¥299と安かったので読んでみることにした。
結論から云うと、悪くなかった。面白かった。スポーツものの少年漫画を活字で読んでいるような感覚がしばしばあった。何故ならみんな大学の男子学生ばかりにしては素直すぎるというか品が良すぎるというか仲が良すぎるというか、あまりにもキレイすぎたからだ。「まあ、リアルよりは、そういうことは書かないことにしたんだろうな」と脳内補完したりした。これ、男性作家が書いてるからまだしも、女性作家が書いたら「妄想?」「こんな男いないよ」と言われちゃうレベルだと思うんだけど? それとも最近の男子大学生ってみんなこんな感じなの?

一般的にチアというと女の子がやってるイメージがある。「チア男子」で小説のタイトルになる、っていうことは「珍しい」「このタイトルで目を引ける」ということだろう。
男子が、チアをやって、感動するスポーツもの、ということでだいたいどんなストーリか漠然と読む前に想定した、その範囲を驚くほど越えない定型通りの小説ではあったが、登場人物の会話がなかなか楽しく愉快で、苦になる展開も無く、読んで嫌な気分になるようなことが起こらないので、先の展開を知りたいこともあり、どんどん読んだ。

この作品ではちょくちょく比喩表現や擬人法が使われるが特に最初の方にそれが集中していて、でもその比喩がなんだか独特というか「これは良いのか?」と首を傾げてしまうのもあったりして気になったが、物語が本格的にチアの世界に入っていくのと並行して比喩表現が用いられる機会も減っていった。なんか、比喩や擬人法をつかうと文章が凝った感じになるから頑張っていっぱい考えた、って感じがしないでもない。もしナチュラルなら全体的に分散しているもんじゃないか? というか作品的にこういう装飾が合っているかどうか…純文学なら合うけどこれはほとんど少年漫画みたいなエンタメだもんなあ。 
わたしがマーカーを引いた部分を引いておこう。→はわたしの感想。

六月の終わりの夜は、巨大な親鳥にあたためられている卵の中みたいにしっとりしている。
→巨大な親鳥にあたためられている卵の中を知っているひとはいない。六月末の夜の湿気と温度の高さは誰でも知っている。

二つ目の信号の向こう側から、ゆっくりと夜が歩いてくるのが見えた。
→いきなりブラッドベリみたいな詩的ファンタジー表現が出て来たなあ。

キャラメル味のアイスが太陽に食べられていく。
→こういうSF的比喩が好きなのかな。

半熟卵を真っ二つに割ったような太陽が光の液体をこぼしているのが両目いっぱいに飛び込んできた。
→これもブラッドベリっぽいなあ。

溝口の実家は、その街が飛んでいかないようにするための重しかと思うほど、でんとしていた。
→この表現は漫画そのものだね。そのままコミカルな絵が浮かぶもん。

一月末には、DREAMSと同じ舞台で戦う。しん、と眠ったように誰も話さなくなる。
→ライバル心と挑戦心を高めるこのシーンで「眠ったように」は無いだろ!

基本的に標準語の小説だけど関西人2人が関西弁でボケとツッコミの会話をやったりと全体として会話がテンポよく良かったなあ。
「少年漫画みたい」と思ったらこれは版元が集英社だった。そして少女漫画と少年漫画両方になっていて、少年漫画の方でテレビアニメ化するらしい。あ~これ映像で観たらわかりやすいだろうな! チアの技とかが文章だけだと100%脳内再生できたという自信がないので。とりあえずこの感想を書き上げたら、モデルになったという早稲田大学の男子チア「SHOCKERS」のチアを検索して観てみたいと思う。