2016/07/15

河明かり【再読】

河明かり
河明かり
posted with amazlet at 16.07.15
(2012-09-27)
kindle版
■岡本かの子
岡本 かの子1889年3月1日 - 1939年2月18日)のものした単行本発行年はウィキペディアによると以下の通り。享年49歳という若さ、作家としては遅咲きだったのね。

鶴は病みき(1936年、信正社)
真夏の夜の夢(1937年、版画荘)
母子叙情(1937年、創元社)
金魚撩乱(1937年、中央公論社)
老妓抄(1938年、中央公論社)
河明り(1938年、創元社)
丸の内草話(1939年、青年書房)
生々流転(1940年、改造社)
女体開顕(1943年、中央公論社)

『河明り』初出:「中央公論」1939(昭和14)年4月号
初読みのときからこの話が何か好きで、折に触れて読み返したりしていたが、久しぶりに読んでもやはり透き通った美しいものを見るような、でも中身に触れると案外人情深くて血肉が通っていてどろどろもあるんだなというか、しかし美しい話だと思った。

わたしはこれを筑摩書房が1991年から順次刊行した『ちくま日本文学全集』(全60巻)の1冊で購入して読んだ。現在流通している同名の全集はソフトカバーだが、わたしが手持ちのは文庫サイズなのにハードカバー。これが良かったんだけど、当時まだ学生だったからあまり買えなかったんだよね…数冊、吟味して買った。岡本かの子と、寺田寅彦と内田百閒。もっと買っておくんだった。これについてはウィキペディアに記載があったので引いておく。

筑摩書房が1991年から1993年にかけて、50人の作家の中短編をとりあげ(のち60人)[1]、各作家毎に文庫判の大きさで表紙をハードカバー状に仕立て『ちくま日本文学全集』(全60巻)として出版した。
筑摩書房の文庫判の出版物ではあるが、「ちくま文庫」「ちくま学芸文庫」には属していない[2]。
ページ構成において、ルビ、および、注が淡色印刷[3]であり、本文の黒色より目立たなくしている点が通常の文庫と異なる特徴である。
装本 安野光雅
編集協力 池内紀・井上ひさし・鶴見俊輔・森毅
その後、2007年から2009年にかけ、この中から40人の作家を選定し、装幀を通常の文庫版と同様にした『ちくま日本文学 全40巻』を出版した。(収録作品は同じ)

この小説はわかってみれば平凡なストーリーである。しかしそこに一種のきらめきと爽やかな真っ直ぐさ、純粋さみたいなのが貫かれている。それはこの話に出てくる「娘」の凛とした飾らない美しさが担うところ多いと思う
かの子が初めて娘と出会うシーン。

九曜星の紋のある中仕切りの暖簾を分けて、袂を口角に当てて、出て来た娘を私はあまりの美しさにまじまじと見詰めてしまった。頬の豊かな面長の顔で、それに相応しい目鼻立ちは捌けてついているが、いずれもしたたかに露を帯びていた。身丈も格幅のよい長身だが滞なく撓った。一たい女が美しい女を眼の前に置き、すぐにそうじろじろ見詰められるものではない。けれども、この娘には女と女と出会って、すぐ探り合うあの鉤針のような何ものもない。そして、私を気易くしたのは、この娘が自分で自分の美しさを意識して所作する二重なものを持たないらしい気配いである。

貸し部屋の描写、河とそこを往来する船の描写を読んでいるのも何か旅情を感じて、水辺の清々した空気が伝わってくるようなのも気持ちがいい。
良い小説だ。

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