2016/07/11

友がみな我よりえらく見える日は

友がみな我よりえらく見える日は (幻冬舎アウトロー文庫)
上原 隆
幻冬舎
売り上げランキング: 132,299
kindle版
■上原隆
本書は1996年学陽書房から単行本刊行され、1999年幻冬舎アウトロー文庫に入ったものの電子書籍版である。
タイトルが巧い。
本書のタイトルは石川啄木の
友がみなわれよりえらく見ゆる日よ花を買ひ来て妻としたしむ
という俳句からきており、エピローグにこの句が引かれている。

ためし読みで最初の「友よ」の途中まで読んだらあまりにも衝撃的な話だったので続きを読まずにはいられなくなった。
本書は全部実話のルポタージュである。著者の知人、友人も出てくる。
最後まで読んでの感想だが、最初の話がいちばん強烈な印象だった。「極端な話が多いなあ」とは思うが、すぐにそちら側に行く可能性があるものもあり、「他人事、普通は無いよ」とは切り捨てられない。

著者についてググってみたがよくわからない。1949年生まれ。同姓同名の有名人が他にもいるようだ。ふーん。
本書を読んでみての感想だが、文章は上手いと思う。
衝撃的だったりセンセーショナルだったり、いろいろなひとの実際の半生を扱っているのだけれど、入り過ぎず、作り過ぎず、余計な感情移入が無くて読みやすい。けれど著者の相手への「相手の言うことをきちんと受け止める」という姿勢や優しさ、あたたかみなどがじんわり伝わってくるから不思議である。
たぶん、お人柄があるんだろうな。だから相手も心を開いてくれる。
正直、わたしだったら対面して動揺せずにいられるだろうか、と思う。

目次と、内容についてざくっとレビュー。
友よ:アパートの5階から墜落して、失明した友人(47歳)
容貌:容貌にコンプレックスを持っており異性とつきあったことが無いという46歳の女性
ホームレス:上司を殴って会社をやめ、アルコール依存症になり、不倫の末離婚して、ホームレスになった男(50歳)。このひとは虚言癖があるようなのでどこまで本当かちょっと疑わしい。
登校拒否:中学2年のときから登校拒否になった少年。現在は定時制高校に休まず通っている。
テレクラ:テレクラにハマって家庭をないがしろにする夫(27歳)を持った、妻(34歳)の話。二人とも精神を病み、その後離婚したが…。
芥川賞作家:第66回芥川賞を受賞した東峰夫(57歳)の話。生活のために小説を書こうとせず、「精神世界」を重視する。結婚し子どもももうけたが、家にお金を入れないのでやがて離婚…。
職人気質:ネガ編集を行う職人(53歳女性)。ネガ編集とは映画などで【監督や編集者がつないだラッシュフィルム(ポジ)にもとづいて、ネガフィルムをワンカットワンカット切ってつないでいく作業のこと】。数年前(1995年時点の)からビデオ化が進み、ビデオはネガ編集の作業がないので仕事が来なくなった…。
父子家庭:区役所に勤める父親(42歳)と娘(10歳)の二人暮らし。妻とは結婚11年目に離婚した。
身の上話:タクシー運転手(43歳・女性)の身の上話。学生の時19歳でデキ婚→第2子出産→夫浮気→離婚→生命保険会社勤務→ちり紙交換→スナックホステス→キャバレホステスー→再婚→夫逮捕で離婚→生命保険営業・居酒屋アルバイト→カードローン借金→タクシー運転手(39歳のとき)。
別れた男たち:離婚した男側の話、数名の例。家事をどうしているのか、というのがテーマ。元大学教授68歳。雑誌・本のデザイナー46歳。フリーライター38歳。
女優志願:舞台女優を続けるかどうか。才能が無いのでは。27歳の迷い。
うつ病:28歳、鬱病になった男性の23歳からの日記から。
離婚:45歳、離婚して家事はすべて家事代行サービスに頼んでいる男性。仕事は小学校の事務職員。30歳~5年間結婚しているときは自分が料理をしていた。100%自分のために使いたいから家事は出来るけどしない、というスタンス。
リストラ:入社2年目(二十代の最初の方で)リストラをされた現在二十代後半の男女6人グループの話。
あとがき:1996年8月 「友よ」の後日談。少しほっとした。
文庫版のためのあとがき:1999年10月

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