2016/06/06

マンション買って部屋づくり

マンション買って部屋づくり (文春文庫)
文藝春秋 (2012-09-20)
売り上げランキング: 17,513
kindle版
■岸本葉子
kindleのポイント還元セールで¥399でポイント¥136(25%)だったこともあり、テーマがインテリアだったので読んでみた。岸本さんの本は2冊目、かな? すごく賢いひとなのに、ドジとか失敗とかしてて親しみがわく。文章もとても読みやすい。
本書は2000年に文藝春秋単行本刊、2002年10月文春文庫刊の電子書籍版である。
岸本さんは1961年生まれなので、2000年は39歳。
本文中には「30代半ば」という表現があった。30代後半の独身女性作家が中古マンションを買って中のインテリアを整えたり、庭付きなのでその庭造りをしたりという日々を書いてある。それまでは賃貸アパート暮らしだったのが、「毎月賃貸料を払っているのはもったいないし、そろそろマンションでも買おうか」となんとなく不動産屋を訪れたことがきっかけで意中の中古マンションの部屋を発見してあれよあれよというまに購入契約、転居、リフォーム…と怒涛の展開を見せる。面白いエッセイである。まあ、決まるときはこんなものなのかも知れないが、以前から散歩の途中で見て「こんなところに住めたらいいな」と思っていたマンションの1室が偶然売りに出ていたというのは運命的だなあ。

わたしは賃貸暮らしでいまのところ購入は考えていないのだが、「家を買うとなるといろいろ調べたり大変だろう」と思っていたよりは著者があっさりと家を決めてしまうのでびっくりしたが、10年以上その近所に住んでいたことや、チラシを見てそれなりに勉強してあったということ、何より甲斐性があるっていうのが強いと思う。昔読んだ漫画家の伊藤理佐『やっちまったよ一戸建て』では銀行にお金を借りるのも大変だったという展開が書いてあったが、岸本さんの場合はわりとあっさり通ったようで、1,2行触れてある程度である。まあ、東大卒の才女だしそれなりの貯金もその時点で既にあったようだし経歴見ればそのへんの会社勤めよりよっぽど条件が良いのかもしれない。

本書で多く書かれているのは「購入してからの室内インテリア。カーテン選びからソファ選びまで」ということ。これはでも賃貸でもある程度腰を据えて暮らそうと決めたら誰しも通る道じゃないのかな。わたしも5年程前に引っ越してきてカーテンからテーブルから買い揃えたときのことを思い出したりして興味深く読んだ。まあ、リフォームがある程度自由にできるというのは釘一本打てない賃貸と分譲マンションとの大きな違いだけど。
根本的な違いなのだけれど、岸本さんはインテリアのことをどうも半分「おしゃれにしなくちゃ」「センスよく揃えたい」という義務感っぽい感覚でされているらしく、「どこからでも自由に選べるなんてなんて楽しいの~ うきうきわくわく~ さあどうしましょうね~」という高揚感があんまり伝わってこなかったので意外といえば意外だった。わたしはどっちかっていうと自分の好きに出来るというのが楽しかったので。

無しというわけにはいかない家具で値段的にピンからキリまであるといえばカーテンで、岸本さんのお宅は窓のサイズが特殊だったために注文カーテンになったそうだがご存知のように数十万円の世界。ウォッシャブルの、洗濯しても数パーセントの縮みの布を選んだけれども1年後に一念発起して洗濯したら5センチほど縮んでしまい、いままで床を擦っていたのが床から浮いた、しかも布の状態も少々変わってしまった、所詮は「消耗品と考えなくてはいけない」というくだりを読んで、うーむ、つまり何十万出して買おうと経年劣化は避けがたいのだ。なんという事実。うちは最初に買ったカーテンも数か月前に買ったカーテンも既製品の安物だが、お墨付きを貰えた(?)ような気がしないでもないが、まあ、高いカーテンはやっぱり見栄えが違うと思うざんすよ。ところで、最近買ったほうは遮光・遮熱・防炎などを重視して買い直したのだけど、岸本さんのエッセイを読む限りはそういう観点は気になさらなかった模様。ひたすら色(インテリアのバランス)とウォッシャブル重視。岸本さんの知人の例も、やれイタリア製だ、やれ自然素材だと布へのこだわりばかりが書かれている。カーテンひとつ取っても各々気になるポイントは違うんだなあ。
ソファ購入の顛末も「こんなに大変なものか」と思ったが(うちはソファは不要派)、その後にまさかああいう展開が待っているとは。努めて淡々と書かれている文章に、胸をつかれる思いがした。誰にでも、いつかは起こること。他人事ではないからなあ。

あと、これも賃貸・分譲あんまり関係ないと思うが鍵の問題(オートロックとか)。開かなくなったとか鍵をなくしたらとか。あといろんな備品とか配線の不具合とか。引っ越してすぐの時点でいろいろトラブルがあったようで、大変そうだった。まあ、いいエッセイのネタが出来たという解釈も出来ようが。
もともと分譲マンションには興味がないが、本書を読んでも変わらなかった。やはり「買う」となると大変そうである。そして買ったからといって一生安泰とは限らない。岸本さんはそれほどでもないが、彼女の友人の階下の住人とのトラブルなど読んでいるだけでげんなりした。
本書が書かれたのは2000年なので、阪神大震災のことは出てくる(それで家具に耐震補強をしたりする)。現在も岸本さんはこのエッセイに出てくる中古マンションにお住まいなんだろうか。この続篇も読んでみたいなと思った。

目次
インテリアは三歳で決まる? /ドアが開かない! /ウォッシャブルにこだわる /地震に備えて /リフォームに挑戦 /庭づくり、草むしり /無理やりガーデンライフ /みんなの悩み、収納問題 /仕上げはソファ /「和」へのあこがれ /あとがき