2016/06/30

タイム・マシン ウェルズSF傑作集1

タイム・マシン ウェルズSF傑作集
東京創元社 (2012-10-25)
売り上げランキング: 6,403
kindle版
■H・G・ウェルズ 翻訳:阿部知二
先日kindleのセールで安かったので購入した。
短篇5つと中篇1つ。
ウェルズの作品は子どもの頃に読んだことがあったかもしれないが、大人向けのは記録に取ってない大昔に『透明人間』は読んだことあったかなあ…(曖昧)。セイント『透明人間の告白を読んだときに比較している感想が残っていたので既読なんだろうなあ。でも本書は初めて読んだと思う。
「いまさらウェルズか~そりゃSFの祖だけど…古いんじゃないかな」と思って今まで読まずに来たのに読んでみたら全然古くなくてすんごく面白かったのでびっくりした!(翻訳はさすがに少々古いかなと思ったけどそれも気にならない程度)。もっと早く読んだらよかった、まあ今でもいいんだけど。
戦前にこんなこと考えてたなんてウェルズってやっぱ凄ぇえええ! と感動した。

「塀についたドア」★★★★★
早々にオチは読めたが、そこをもっとはっきり書くのかと思ったら案外ぼかしてあった。こういう話好き。面白いなあ。まずシチュエーションが良いよね。白い塀があって、紅色のツタがはっていて、緑色のドアがある。なんという美しいコントラスト。そんなの絶対開けたくなるよ~。むしろなんで2回目以降は開けなかったの?って思うけど現実の日々の忙しさの中でそこでロスする時間を考えて開けられなかったというのがすごくリアルでもある。自分でもそうなるかな、って思う。なんかこういうの星新一っぽいって思う。ノートの中に彼の現実が(過去の日々が)見えた、っていうのも面白い~。
「奇跡をおこせる男 ―散文詩―」★★★★
その準備もなく心構えもない人間が突然超能力を手に入れたらどうなるか、という展開が大変リアルで面白い。地獄に行かされたひとはどんな恐ろしい目に遭ったんでしょうね。怖すぎるわ。んで遠くの町にいきなり戻すとか。発狂しなかったかなあ。早く助けてやれよ、と気をもんでるのに…。地球に自転をやめよと命令したあとの現象が無茶苦茶面白かった~!
「ダイヤモンド製造家」★
錬金術といい、ダイヤモンド製造といい、まあ、こんなもんでしょうな。
「イーピヨルニスの島」★
イーピヨルニスという生物の造詣がすごく面白かった。でも探検隊の給料云々の部分は、要るかなあ。あと未知の太古の生物の卵を食べるとか絶対無理。しかも生とか。うええええ。
「水晶の卵」
水晶の真実(?)の設定は良かったが、古物商の店主および妻などの設定が不愉快でそちらに半分以上気をとられたのが惜しかった。なんで売りたくないものを店先に出しておくんだ、客に聞かれた時点で「売り物じゃないんですよ」と何故言わない?とか苛々させられた。後添えの妻は傲慢で貪欲だし。せっかくの水晶の面白設定が濁るわ。
「タイム・マシン」★★★★
いままで読んだSF物で未来を扱ったものはいくつもあったが、せいぜい何千年か未来程度で、この作品の4章で「八十二万二千年後の」と出てきたときは目を疑って何回も見つめてしまった。うわあ!凄い!82万2千年後と来たよ!
そういえば過去に遡るのは恐竜がいた時代に行ったりしてそれはそれこそ何億年前、とかの世界だからスケールが違うんだけど、でも過去のことは歴史とかで習ってるから「創作」するにも「事実の下地」があるもんなあ。とっかかりというか。それに比べて未来のことは完全に創らないといけない。だいたい82万年後とか言われたって全然ピンとこないし、「人類いないんじゃないの?」とかすら思っちゃう。
82万年後の人類がどうなっていたかとかいうのはその「年」について驚いたこと以上のものは無かったんだけど「共産主義」がこの時代としてはまだ未来的なものとしてとらえられていたというのは別の本でもちらっと読んだことがあったし、ふーんこういうところで出てくるのかと思った。地上と地下の人類の設定はなかなかショッキングだ、というかいろんな後発の物語の原点がここで既に書かれていたんだなあ!最後のウィーナの扱いの雑さにはちょっとうーん。
そして終盤になると82万年後で驚いていたのが今度はさらに進んで何百万年後(具体的数字はなかったけどその時間移動の速さの描写などから少々の移動ではなくかなり思い切った年数の移動だと思う)、果ては3千万年後の地球まで出てきたのにはわくわくするもどこか恐ろしいような気持ちに。描写は美しかったけれどそこに人類がいられるのだろうかという恐怖が一番にきた。だいたいこのタイム・マシンは車でいうところの屋根が無い乗り物でしょう。シートベルトの描写もないし。よくこんな無防備に何千万年後とかに行けるもんだわね。空気ないかもとか地球がないかもとか想像しなかったのかなあ。
まあとにかく予想以上にすんごく面白い作品集だった。ウェルズ天才っていうのは本当だなあ(今更何言ってるんだろうね!)。