2016/06/14

日々是作文

日々是作文(ひびこれさくぶん) (文春文庫)
文藝春秋 (2012-09-20)
売り上げランキング: 56,223
kindle版
■山本文緒
いまのところまだ続いているamazonのkindle本ポイント還元セールでまとめ買いした内の1冊。¥432でポイント119pt。あら? なんか今は¥589で117ptになっているわね。同日に数冊買ったのでそのポイント分が引かれているのか、価格改定されたのか、よくわからん…だいたい「セール」と銘打っているのにいつからいつまでと明記されていないっていうのがなんでなのかな? Amazonとの上手なつきあいかたってまだ不明。
これは前から気になっていてどうしようかな~と保留にしていた本の1冊だったので、良かった。
本書は2004年4月文藝春秋から単行本で刊行され、2007年4月文春文庫化したものの電子書籍版である。

いまから12年前に出版された本だが、「まえがき」にこのようにある。
本書は四十一歳になるまでの約十年、あちらこちらの雑誌から依頼を頂き、あちらこちらに書き殴ったエッセイを、空のペットボトルをちまちま集めてまとめて再利用に至ったがごとくの、リサイクル本といえるでしょう。
ここには三十一歳の私がいました。感慨ですよ。感慨。いやはや三十一歳の、離婚したばかりで仕事もお金もほとんどなくて、実家に寄生するしかなかった私に、こっそり教えにいってあげたいですよ。そのうち吉川英治文学新人賞と直木賞をとれるよ。引っ越しの度に部屋が広くなるよ。三十九歳には再婚までしちゃうよ。でも気を付けないと体重が十キロ近く増えちゃうよ。三十四歳のときにイタい失恋をするよ。直木賞とったからって浮かれていると、うつ病で入院することになるよ。言われたところで信じないに違いないが、三十一歳の私。

というわけで、十年といってもかなり激動の十年だったようで、ここを読んだんだけで凄いなあ~と感心した。
わたしは山本文緒の良い読者ではなくて、ほとんど読んでいなくて、何故かと云うと彼女が書く小説は「恋愛小説」だからで、わたしは「恋愛小説」を何かもうひとつ動機付けが無いと読まないからである(たとえば、好きな作家の作品であるから、とか、ミステリーでもある恋愛小説だから、とか、世間の評価が非常に高いから、とか)。
で、そんな薄い読書でも薄々そうじゃないかとは思っていたのだが、本書を読んで「やっぱりなあ。このひとみたいなのを恋愛体質、って云うんやろなあ。とりあえずわたしとは考え方とか生き方が全然違うなあ」ということをずっと強く感じ続けた。

いろんな時期の山本文緒の寄せ集めと書いてあるけれど、まあ中心は三十代です。大学を出て、就職して自宅から通勤しおしゃれな洋服を買いまくるというOL生活をして、東京に住みたかったからお金を稼ぐために副業でコバルトで少女小説を書くようになって、二十四歳で結婚して会社は退職して、六年後に離婚して、しばらくは親元に帰り、その後晴れて東京で一人暮らしして、結婚には至らなかったけど恋愛も何人かとして、三十九歳で再婚。
凄いですね。いろいろあったのですね。でもそのいろいろのあいだもずっと変わらなかったのが小説や雑文を書きまくっていた、ということだった。だから山本文緒は最初のきっかけはどうであれ、小説を書く、ということが天命であったのでしょうね。後の方のエッセイではもうちょっと違う表現でそのことを書いてあった。書くべくして、作家になったひと、なんだと思う。

読んでいて「何を考えてるの?」と呆れてしまうことも少しあったし、「なるほどね」と共感することもあった。
全体的な印象としては「危ういなあ…なんだろうこの不安定感」。
山本文緒はリアルタイムではわたしより結構年上だけど、本書の中の山本文緒はわたしより若い。でも違う。若いから、不安定だったり危うい感じなのではない。作家の書くエッセイで年下のひとのを読むのは決して初めてではないが、タイプが違い過ぎるのだ。こんなにも「ひとりでは生きられないの、(夫かそれに類する)パートナーが欲しいの」と主張し続けているエッセイというのはわたしの読書範囲の中ではすんごく珍しいのだ。やっぱ恋愛体質だからかなあ。この本には出てこないけど、この本の後の時期に鬱病になる、っていうのはなにか関係があるのだろうか。

感覚がわからないので自分が読む作家の中でちょっと比較。
山本文緒1962年生まれ。
で、小川洋子も1962年生まれ。内田洋子が1959年生まれ。平松洋子が1958年生まれ。梨木香歩1959年生まれ。宮部みゆき1960年生まれ。絲山秋子1966年生まれ。角田光代1967年生まれ。若竹七海1963年生まれ。岸本佐知子1960年生まれ。吉野朔実1959年生まれ。よしもとばなな1964年生まれ。
つまり世代はだいたいこのへんだ。このへんの世代が30代だったころの文章をそんなに読み倒しているわけではなくてどうしてもここ10年くらいに書かれたものがイメージとして強く出てくるので単純に比較は出来ないが、まあこれだけ「恋愛恋愛」しているのは山本文緒くらいだろう。よしもとばななとか角田光代も恋多き女、だと思うんだけど恋愛体質にもいろいろある、っていうことかな。

本書のほぼ最後らへんで山本文緒は再婚し、もう少し近著の『ひとり上手な結婚』(2010年8月講談社/2014年2月講談社文庫)では安定した結婚生活をエンジョイされている様子だったから、良かったが、本書だけ読んでいたら「大丈夫かなこのひと」って心配に思ったかも。
「あの素晴らしい傑作『恋愛中毒』を書いた作家のエッセイ」っていうリスペクトがある、っていうのは最後まで読ませた大きい要因かもしれない。
本書で一番「おおっ」と目を見開き、頷いたのは、
「愛している」という言葉は口語じゃないと思うので、なるべく使わないように気を付けている】という一節。至言ですな。

目次(章タイトルだけ写す。)
まえがき
花には水を。私に恋を。
今宵の枕友だち
こまかいお仕事(ワープロ時代)1993~1997
こまかいお仕事(パソコン導入後)1998~2003
初出一覧