2016/06/28

洋食屋から歩いて5分

洋食屋から歩いて5分
洋食屋から歩いて5分
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東京書籍 (2015-03-13)
売り上げランキング: 5,760
kindle版
■片岡義男
初・片岡義男。
たぶん恋愛系、小洒落た雑誌にカラー付写真と共に短い文章を載せているような作家――というイメージがあるのだが実際のところは間違っているかもしれない。まあそんなこんなで守備範囲外だろうと読まずにきた。
今回はAmazonのオススメで上がってきて、ごはん・料理ネタエッセイらしいタイトルで、単行本価格は¥1,404だがkindle版では¥561円という半額以下になっていたので試しに手を伸ばすには気易かったこともあり。

途中で著者についてあらためてググったりして確認したが読みすすむと結構プロフィールがわかる内容でもあった。1939年3月20日生まれ。幼い頃に疎開のために山口県の岩国で暮らした。祖父がハワイに移民して、父親は日系二世ということで、【英語しか理解していない人だった僕の父親】と書いてある。ご母堂は日本語を話された。そんな環境で育ったので、英語と日本語両方で考えたり喋ったり出来るバイリンガルとなったらしい。

1冊のエッセイを読んだだけでは多くはわからないが、わたしが漠然と抱いていたイメージはそう間違いでもなかったかなという感じだ。恋愛系。恋愛体質。本書だけで「妙齢の美女」「白い指」が何回出てくるか。これは近著なので掲載は2004年~2012頃(2009年以降がほとんど)なのだがまだまだ関心は衰えずといった風情。なお、「妙齢」は若い女性のことを指す日本語だが、本書での使われ方は【年齢不詳という佳境にさしかかっているがゆえに、妙齢という言葉がまさにふさわしくなっている美しい女性】【僕、そして僕より十歳年下の男性、さらに十歳下の、おなじく男性、そしてもう一度さらに十歳だけ年下の、僕たちは妙齢と言っている女性。】というふうになっている。このエッセイ「コーヒーは俳句を呼ぶのか」は2011年掲載。ざっと72歳。72-10-10-10=42歳ということになる。辞書的に「妙齢」かというと国語のテストでは不正解となると思うが72歳から見たら42歳はまあ若いんだろう。

1966年頃(26歳だったと書いてある)田中小実昌(1925年生まれ・当時41歳くらい(!)か)に誘われて船橋の小劇場に行ってそのあとで寿司を食べ、歌舞伎町でスナック(というのだろうか)を何軒もハシゴしていよいよ全部看板になって帰るのかと思いきや始発までの時間一軒の店に入って味噌汁など飲んで時間をつぶす話が面白かった(「コーヒーに向けてまっ逆さま」:書き下ろし)。
本書のエッセイは掲載誌もばらつきがあり、長さも短いのやちょっと長めのやいろいろだ。若い時(1960年の終りか1970年頃)に吉行淳之介(1924年生まれ)との対談に呼ばれたときのエピソードもくだんの作家の人柄の一辺を知れたようで興味深い(「定刻に五分遅れた」)。
驚いたのが「こうして居酒屋は秋になる」は品書きに続き、【夏の初め、一軒の居酒屋を僕は発見した。】と書いてあり、さぞいろんな居酒屋に行きつくした末にちょっと良い自分だけの店を見つけたという話かと思って読んでいるといきなり【この居酒屋は僕の人生にとって最初の居酒屋だ。】と書いてあったこと。ええと、この回の初出は2011年だ。最近じゃないか…!
文藝春秋webにもそれについてのコメントがあり、やはり間違いではないようだ。ほえー。それまではスナックとかバーとかで飲んでらしたんでしょうね。逆にわたしスナックもバーも入ったことありません。
料理本の思想」の紹介の仕方は買いたくなる。「弁当の秋」に『おべんとうの時間』が出てきたのでおお~と嬉しくなった。このひとの本の紹介の仕方さりげなくってピンポイントで要点ついてて、良いなあ。

目次よりも後の初出一覧から写した方が面白いのでそっちから写す。
いつもなにか書いていた人「AZUR」2010February
残暑好日、喫茶店のはしご「日本経済新聞」2009.9.13
彼女と別れて銭湯のあと餃子「Coyote」
トゥナ・サンドイッチにコーヒー、そしてエルヴィスの歌「AZUR」2011
撮りそこなったあの雨の日 「AZUR」2011December
トマトを追いかける旅「AZUR」2011June
冬の寒さのなかを、ずっと遠くまで「四季の味」2011冬号
風船ガムを求めて太平洋を渡る「AZUR」2009December
2011年外国旅行おみやげめぐり「AZUR」2012February
いきつけの喫茶店について 「AZUR」2011August
一杯だけのコーヒーから「四季の味」2012夏号
料理の思想「THE NIKKEI MAGAZINE」92号 2010.12.19
洋食屋から歩いて五分で古本屋「AZUR」2011October
栗きんとんと蒲鉾のあいだ「酒林」第83号2012.1.1
こうして居酒屋は秋になる「四季の秋」2011秋号←電子書籍ママ。「四季の味」の誤植かなあ??
まず一杯の水をテーブルに「四季の味」2011夏号
コーヒーに向けてまっ逆さま 書き下ろし
定刻に五分遅れた「酒林」 第82号2011.11.1
醤油味への懐疑の念とは「四季の秋」2012春号←と思ったらまた出てきたからこういう雑誌があるのかな?検索しても見当たらないのでやっぱ誤植かなあ。
弁当の秋「THE NIKKEI MAGAZINE」90号2010.10.17
東京はなにの都か「THE NIKKEI MAGAZINE」84号2010.4.18
湯麺がひとつ本棚にある「AZUR」2010October
旅先にうまい水あり「AZUR」2009October
旅は日曜日に始まる「AZUR」2011April
かき氷は食べましたか 「AZUR」2010
「スキヤキ」の次は「スシ」だった「酒林」第78号2009.11.1
鮎並の句を詠む「先見日記」2004.3.23
コーヒーに俳句が溶けていく「公明新聞」2010.1.31
コーヒーは俳句を呼ぶのか「酒林」第81号2011.1.1
知らない町を歩きたい「AZUR」2011February
追憶の春、現在の春「四季の味」2011春号
数の迷路を旅する「AZUR」2010April
真夜中にセロリの茎が 書き下ろし

※「AZUR」年号の後に月表記が無いものが数件ありました。

四季の味 2016年 07 月号 [雑誌]

ニュー・サイエンス社 (2016-06-07)

船の旅 AZUR (アジュール) 2011年 12月号 [雑誌]

東京ニュース通信社 (2011-10-22)