2016/05/18

さよなら、シリアルキラー

kindle版
■バリー・ライガ 翻訳:満園真木
Amazonの5/13日替わりセールで¥599だったので購入して数日ほっぽってあったのを読んでみたけどうーん、昔はこういうサイコキラー系のミステリー嫌いじゃなかったんだけどな~なんか今だけなのか、以降はもうダメなのか、それかこの話に限ってなのかよくわからないけど要は肌に合わなかった。
半分までは真面目に読んだ(kindle版なので53%とわかる)。それ以降は話のスジだけを追う感じの、流し読みで読了。

なお、本作は三部作の第1作目であり、この本だけですべての謎が解けるわけではない。というか、三部作全体に影響を与えるであろう大きな出来事が発生するがそれについてはまさに「発生する」だけであり、「展開」を知りたければ第2作、第3作を読まないといけない。
一応、第1作のメインとなっている殺人事件の犯人はこの本の中で捕まるけど、どうやら黒幕がいる…というところまでしか書かれないのでそれも知りたければ(以下略)。

本シリーズはアメリカではYA(ヤング・アダルト)扱いで、つまり十代向けの小説らしい。まあ、第1作の主人公は17歳の高校生男子だしね。だけど猟奇殺人起こるし、そもそも主人公の父親が124人殺して刑務所に服役中(なんと死刑廃止の州でもないのになぜか終身刑だそうだ。なんで!?)。
いや、いままで猟奇殺人犯人が出てくる小説はいくつか読んだけど、この小説が胸糞悪いのはこのキチガイ連続殺人鬼の父親がまだ10歳未満だった息子に殺人についてのレクチャーをしていたことで、だから主人公は父親が逮捕された13歳時点で既にいろんな知識や死体や殺人関係のあれやこれやを見たり触ったり手伝わさせられ、彼の中の思考もかなり洗脳されていたということだ。おまけに彼の母親は彼が8歳の時突然姿を消したのだが父親が殺したと主人公は悟っている。それどころか、思い出せないが繰り返し見る悪夢や記憶の断片から母親を殺したのは自分ではなかったのかと苦しんでいる…。

第1作で起こる連続殺人の犯人は早い段階から「ものまね師」として彼視点で書かれる章がときどき出てくる。気持ち悪い。模倣犯ってなんでこんなに気持ち悪いんだろう。オリジナルの犯人も恐ろしいが模倣犯はそれに加えてなんか無性に腹立たしい。オリジナルにのっかっているその根性が卑しさを感じさせるからかなあ。虎の威を借る狐的な。独善的だし。まあそれはオリジナルもなんだけど。

この小説を読んで、まず主人公の思考回路が異常で(常に人をどう殺すかとかばかり教えられて育ったので「この距離に立ったら殺せるな」とかずっと考えているし、周囲の大人だけではなく友達や彼女にまで演技をして自分の思い通りに話をすすめようとひとを騙す)、どうにも共感も同情も出来ず、不愉快だった。どうやら見目は良いらしく、笑顔を浮かべれば大抵の大人は騙されるんだそうだ。うーん。
あとキスシーンが何回も出てくるんだけど、それはまあいいんだけど、その描写が「これが子ども向け?」って眉をひそめたくなるねちっこい描写でまるで色欲のために親父が書いてるみたいな気持ち悪さ。フレンチ・キスなのをどうこう言ってるんじゃないよ。書き方とか、そのときの心理描写とかが。女の子はどうか知らないけど主人公が全然彼女への愛情(好きだなあとかかわいいなあとか放したくないとか切ないとか)を伴わないで頭の中で殺人の事とかを思い出しながら機械的にでもねちっこいのをしてる、それもほぼ毎回、ってのがなんだかなあ。それくらいならもっと「男子高校生の性欲はんぱねえ!」ってそっちの方向で書いてくれたほうがまだしも素直でしょうに。

あとこれは翻訳だけの問題なんだけど17歳の男子高校生である主人公がいつでも、親友との気の置けない会話のなかでも常に一人称「ぼく」なのが違和感ありまくり。連続殺人鬼の息子だけどこの主人公は傷つきやすいナイーブな少年なんですよ、という意図なんだろうけど…友達との会話でも「おれ」じゃなくて「ぼく」を使う高校生男子というキャラと、実際に小説で書かれている内面描写が釣り合っていないような気がするのはわたしだけだろうか。

第1作だけのミステリーとしての出来は「うーん」という感じ。小説としては「連続殺人鬼の十代の息子が主人公」というセンセーショナルな設定が面白い。「青春小説らしく主人公があれこれ葛藤しながらいろんな問題に向かっていく」というベタな話だけど、設定が変わっているから。
他の人の感想を散見するに、三部作通しての主人公はこの話の高校生ではなくその連続殺人鬼である父親なんだそうだ。うーん。それならそうと最初っからそういう方向で書けば良かったのにね、ってそれじゃあ既存の作品と差別化できないかー。
まあわたしに限っては本作だけで終了としておきたい。