2016/05/12

お早く御乗車ねがいます

お早く御乗車ねがいます (2011-09-22T00:00:00.000)
阿川 弘之
中央公論新社 (2011-09-22)
売り上げランキング: 223,572
kindle版
■阿川弘之
阿川弘之という名前を知ったのはハイティーン時代に特に親しんだ北杜夫や遠藤周作のエッセイでだったと思うが、その作風が北杜夫や遠藤周作に比べてとっつきにくいようなイメージがあり、ほとんどきちんと読んだことはないままここまで来てしまっている。いまや世間では「阿川佐和子さんの御尊父」といったほうが通りがいいのかな。そんなこと云ったら叱られそうだけど。阿川佐和子のエッセイなんかで出てくる阿川弘之という像はユーモアを解すけどとりあえず「昔ながらの頑固な雷親父」って感じだし。

さて本書は中央公論社から1958(昭和34)年に上梓された単行本が2011年にして初の文庫化だったらしいのだが(中公文庫)、その電子書籍版である(当時はまだ中央公論新社ではない)。
阿川弘之といえば戦争中は海軍だったし、船好き、鉄道好きで有名だ。そのエッセイということで面白そうだなと(わたしは鉄道マニアではないが、珍しい電車をみたら写真を撮りたくなる程度には好きである。また、マニアのひとが書いた作品を読むのも好きだからである)。
目次は時系列順にはなっていないが、だいたい昭和28年~昭和33年くらいに雑誌「旅」はじめ、あちこちの媒体に書かれたものをまとめたものらしい。「あとがき」に【この本は、中央公論社出版部の宮脇俊三さんという、奇特な汽車気違いのお蔭で陽の目を見ることになったので、】と書いてある。宮脇俊三といえばやはり鉄道マニアとして有名だ。北杜夫さんの編集者で確か北さんの隣の家に住んでいて、しょっちゅうエッセイに登場していたっけ。

また作家で鉄ちゃんといえば内田百閒だが、本書では内田百閒先生のことに触れたり、百閒先生とニアミス(とは違うが上りと下りで…)したりしたというエッセイもあり、ニヤリとしてしまう。ちなみに阿川弘之は1920(大正9)年生まれ、内田百閒は1889(明治22)年生まれなのでざっくり30歳ほどの年齢差。本書の文章が書かれた1955(昭和30)年前後は阿川弘之35歳くらい。
頑固親父のイメージだが、この文章書いているときはまだ30代だったのだ。若いお父さんだ。文中には奥さんと幼いお子さんを抱えてあわてて船や電車に飛び乗るシーンが出てきたりするがそのお子さんが佐和子さんなわけだなあ。

目次
特急「かもめ」/ 時刻表を読む楽しみ/ 僕は特急の機関士/ 僕は鈍行の機関士/ にせ車掌の記/ 駅弁と食堂車/ ビジネス特急の走る日―架空車内アナウンス/ 日米汽車くらべ/ アメリカとヨーロッパの列車/ 汽車のアルバム/船旅のおすすめ/瀬戸内海縦断の旅/可部線の思い出/温泉の楽しみ方/鳴子から秋田へ―みちのくの風物詩/東京都内の峠ドライブ/鉄道研修会/観光バスに望むもの/埃の日本・騒音の日本/あとがき

本書は日本の鉄道だけではなく、アメリカやヨーロッパの鉄道、また船やバスの事も出てくるが、割合としては機関車、汽車のことが多い。

「こだま」というと新幹線の名前と思っていたので昭和32年10月発表の「ビジネス特急の走る日」に東京駅発大阪行きの「特別急行こだま」が出てきたのはどういうことかと思ってウィキペディアで「こだま(列車)の項目を見たらこういうことだった。
「こだま」の名称は、1958年(昭和33年)、東京 - 大阪間の日帰り可能な電車による「ビジネス特急」新設にあたって、最終的には国鉄末期まで広く使われたJNRマークやアルファベットの「T」をモチーフとした特急エンブレムが採用されたシンボルマークとともに、一般公募によって決められたものである。東海道新幹線開業に伴う東京駅 - 大阪駅間在来線特急の廃止により、在来線特急としての「こだま」は1964年9月30日に廃止され、翌日10月1日から新幹線の列車名として使用されている。
なるほどねえ~、面白いなあ。

阿川先生は駅のアナウンスが何度もおなじことを延々いうのとかがうるさくてしょうがなかったらしく、何回もそのことを書いておられる。そういえば昔『うるさい日本の私』という本(中島義道)でおんなじようなことを書いていたひとがいたが阿川先生昭和30年からおっしゃってたのか。ていうか、そのときから言ってるのに全然改善されないどころか悪化しているような気が。

ちなみに『うるさい日本の私』初読みはいつか不明だが2004年3月22日のホームページ掲載用の日記に再読時の感想が残っていたのでここに引っ張り上げて置く。関係ない記述もあるけどまあ日記なのでまるごと。

2004年3月22日(月)
◆昨日朝テレビの報道で知ってかなり衝撃を受けたのだが、いかりや長介さんが亡くなられた。ドラマを観ない人間なので最近のご活躍は風の噂でしか存じ上げなかったが、小学校の頃はドリフに愉しませてもらった世代である。ジャンケンをするとき、「♪最初はグー、またまたグー、」と歌わずにはおれなかった世代である。残念だ。非常に残念だ。謹んで、御冥福をお祈りしたい。
◆お風呂が沸くのを待ちつつ中島義道『うるさい日本の私』(新潮文庫)を本棚から引っ張り出して久々に再読。しかし読んでいて心が和やかになるのと全く反対の本なので(だって著者が日本の煩わしいスピーカー反乱に抗議しまくった実「戦」録だもん。以前読んだときはどう思ったのか忘れたけど、まあ確かに面白いんだけど、それにしても改めて読むとこの著者ってかなり迷惑な存在である。騒音云々はその通りかもしれんが「和をもって尊しと為す」の精神知ってるか?と言いたくなる。大学教授なんて職業だから成立するんだ。サラリーマンだったら3日でクビだー)、風呂読書には不向きと判断し、南伸坊『シンボーの常識』(朝日文庫)を本棚から引っ張り出してきて風呂場へ(これも久々)。両者の生き様のあまりのギャップに「ああ、私はミナミシンボーのようでありたい」としみじみ思う。共にそぞろ読み程度。



うるさい日本の私 (新潮文庫)
中島 義道
新潮社
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シンボーの常識 (朝日文庫)
南 伸坊
朝日新聞社
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