2016/05/10

猫が死体を連れてきた

猫が死体を連れてきた ピーター・シャンディ教授シリーズ (創元推理文庫)
東京創元社 (2016-04-28)
売り上げランキング: 6,116
kindle版
■シャーロット・マクラウド 翻訳:高田惠子
ピーター・シャンディ教授シリーズ第4弾。
家政婦ローマックス夫人は飼い猫がカツラをくわえているのを見つけて取り上げ、持ち主に返そうと部屋に行ってみたがどうやら昨晩から帰ってきていないらしかった。不審に思った夫人が探しに行くと…。

架空の町、バラクラヴァでまたも殺人事件が起こってしまった。無難に済ませようとする無能な警察じゃ頼りにならないとあてにされたシャンディ教授。すっかり「探偵」としてみんなに認められているようだ。

今回読んでいて楽しかったのは今までステレオタイプに無能な「地元の警察」の代表であるような書かれ方をされていたオッターモールが序盤はともかく、途中からだんだん覚醒して有能ぶりを発揮していき、終盤ではすっかり素晴らしい警察署長となってシャンディに見直されていくという意外な展開。良い奥さんと家庭みたいだし、人柄も思っていたよりずっと良いし、あれ? 第3弾までってどんな書かれ方されてたっけかな? 
第4弾も最初の方はややこしい事件が起こって欲しくないからとわざと事件じゃなくて事故として処理しようとしたり、金メッキのボールペンを自慢したがったり(よくわからないけどそれってかなり高級なのかな?)、探偵小説にありがちな「ウザくてうすのろな署長」だっただけに、途中から「あれ?」「お?」ということになっていくのにびっくりした。

シャンディ教授は第2弾以降すっかり常識人だけど、50歳を越えているのにあいかわらず奥さんとラブラブで(まあまだ新婚さんだからか)、文化の違いもあるんだろうけど大学の食堂で熱烈なキスをしたりしている。わー日本じゃ考えられない。

このシリーズで一番ユニークなのはなんといっても学長のトールシェルド・スヴェンソンなんだけど、今回はちょっと彼に災難が降りかかる。よくこの学長をはめようなんて恐ろしいことを考えるなあ。まあ、全然負ける気しないから心配しなかったけど。
終盤にはトールシェルドと犯人のものすごいバトルシーンも展開されて、凄かった。ヘラジカの雄同士の闘いもかくや、って感じだ。

和訳タイトルに「猫」が入っているけれど話そのものに猫はそんなに出てこない、最初と最後に少しだけ。猫目当てで読んだら全然物足りないだろう。
そういえばエドモンドはなんでアングレー教授の部屋のミルクを飲まなかったのかな? 「犯人が家探しに来ちゃったから」ってことでいいのかな。最初のほうでやたら強調してるから「毒入りだから野生の勘で飲まなかったとか?」とか深読みしてしまった。
今回の事件の犯人はちょっとクリスティのあの名作の犯人トリックを思い出させた。大枠は同じだわね。いろいろ変えてあるけど。
「どうしてクラブに入るのがそんなに難しいか?」の理由を考えたらだいたい想像がつく謎解きだったけど、いろいろ枝葉があって頭のなかが結構混乱したのでまた落ち着いたらシリーズ第1作からゆったり再読したいものだ。ミステリーだけじゃない面白さを含んだシリーズだから再読の価値絶対あるはず。

解説の澤木喬というかた(調べたらいろいろ面白いひとだった。興味あるかたはウィキペディアをどうぞ。)がこのシリーズは動物のことは詳しく書いてあるのに植物のことは描写が足りない・少ないという意味のことを書いていらして「本当だ!」と目を見開かされた。シャンディ教授は植物とか専門っぽいのに(農業大学の応用土壌学教授だぞ。よくわからんが新種の蕪とか作った実績で有名らしい)。まあ、前回とか花の新種とか作って名前考えたりはしてたけど、たしかに日常目につく周囲の植物とかについてのモノローグとかほぼ無いもんな~。植物好きだったら空気吸う感じで植物のことに目が行くもんだけど、うーん。著者自身はあんまり植物に関心が無いのかなー。良い視点の解説だった。珍しくkindle版で省略されていなかったのが僥倖だ!!

旧版表紙はこんなのだったらしい↓猫がユーモラスたっぷりな表情してて面白い。でも何度もいうけど猫登場シーンが少なすぎるんだよ~! 

猫が死体を連れてきた (創元推理文庫)
高田 恵子 シャーロット・マクラウド
東京創元社
売り上げランキング: 223,921