2016/04/21

ゲゲゲの女房 人生は……終わりよければ、すべてよし!!

ゲゲゲの女房 (実業之日本社文庫)
武良 布枝
実業之日本社
売り上げランキング: 75,430
kindle版
■武良布枝
これはNHK朝ドラにもなった、漫画家水木しげるの妻が書いた自伝。2008年実業之日本社刊。の、2011年9月同社文庫の電子書籍版。
4/17の日替わりセールで¥199だったから購入して読んでみた。定価だったらまず買わない守備範囲外の作品。
ちなみに朝ドラも観ていない。水木しげるとその妻の役を誰が演じたかくらいは知っているが。

著者の苗字はこれで「むら」と読む。水木しげるの本名は「武良茂」なんですな。
「ゲゲゲの女房」というタイトルだが、最後まで読んで最後の7章でやけに教訓めいたことを語りだすなあと思って「あとがきにかえて」を読んだら編集者である実業之日本社の鈴木さんというひとに著者が何気なく言ったことが印象に残って「自伝を書かないか」という話があったらしく、その台詞というのがサブタイトルにもなっている「人生は終わりよければすべてよし」だったらしい。

水木しげるの漫画は読んだことが無いけどテレビアニメで「ゲゲゲの鬼太郎」は観ていたし、京極夏彦が崇拝している漫画家だということも知っているし、戦争でいろいろご苦労なさったかただというのもたびたびテレビで紹介されている。その方の奥さんの話。朝ドラになったりしたこともあって、なんとなく「夫に従って、いろんな苦労を重ねてこられた古き良き時代の日本の奥ゆかしい奥さん」というイメージを持っていたが、本書を読んだらまさにその通りだったので、逆に少しびっくりした。絵に描いたような夫唱婦随の人生というか…。
「あとがきにかえて」でご本人が「私は古い日本の女性の生き方を、そのままとおしてきたように思います。」と書かれていてそうか、ご本人もそう思われるのか、とまた少し驚いた。
続けて「『すべてを受け入れる』だけの人生でした。」とも書かれているけれど、決してマイナスの意味ではなく、プラスで書いているからこそ「私は不幸ではありませんでした。」「『終わりよければ、すべてよし』なのです。」という言葉につながる。著者は続けて書く。

  なんだかいまは、「家庭環境」、「結婚」、「就職」など、人生の入り口でどれだけ幸運をつかむかで、その後のすべてが決まってしまうかのように思い込んでしまう人が多いと聞きます。
  人生の入り口での状態は、といえば、水木も私も、お世辞にも、幸運だったとはいえないでしょう。でも「いろいろなことがあったけれど、幸せだ」と素直にいえるのは、「水木が自分自身を信じ続け、私も水木を信じ続けてきた」からだと思います。

島根県安来市に生まれたところからの始まり、故郷の紹介、子ども時代の思い出、女学校を出て家業を手伝った時代、そして見合い話で水木しげると出会い、なんとその5日後に結婚…。
昔はそんなこともそう驚くような話ではなかったのかもしれないが、さすがに5日というのは短かったようだ。本人たちも記憶があいまいになっていて、長い間10日後だったと覚えていたのが、子細に日記を残していた兄が見直したら5日後だったとのこと。

そして貧乏生活!
水木先生は最初貸本屋で漫画を描いていて、その原稿料がものすごーく低かったらしい。税務署のひとに「こんな収入で食べていけるわけない」と疑われてしまったというエピソードが面白い。
でも貧しい中でも一生懸命に働き続け、そんな中で何故か夫婦して戦艦の模型作りにハマったりしていて、楽しそうなのがリアルで、ああ人間、貧乏でもこういうふうに楽しみを見つけて仲良く生きられたらいいなあ、と思ったりした。

最終的には「ゲゲゲの鬼太郎」やなんかで売れっ子漫画家になって……という現在の評価を知っているからどこかで安心して読んでいたけど、売れてからも貧乏時代が骨身にしみているから仕事を断れずに働き過ぎて過労になるとか、本当にご苦労なさったのだなあ。
でも、奥さんとしては、売れてからどこかカヤの外になってしまって、むしろふたりで頑張っていた貧乏時代の方が幸せだったとかいう気持ちの吐露があったけれど、それはよくわかる、と非常に同情した。

本書にはアシスタントとか編集とかの絡みでいろんなひとが出てくる。中でも、つげ義春がアシスタントだったとか、ガロの編集者時代の南伸坊だとか、興味深かったなあ。

文章も構成もすごく上手くて、とても普段文章を書かない人が初めて書いた本とは思えないくらいよく出来ている自伝。「あとがきにかえて」に「ライターの五十嵐佳子さんに、執筆にあたっていろいろとアドバイスをいただきました。」と書いてあって、なるほど、プロの手助けがあったのかと納得。
水木さんの自伝漫画からの引用的挿し絵や写真などが数多く収録されているのも読んでいて楽しかったしわかりやすかった。