2016/04/17

柴田元幸講演会「エドワード・ゴーリーを見る/読む/訳す楽しみ」レポ @伊丹市立美術館2016.04.16

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Edward Gorey
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▲当日会場で購入した原書 ¥1,728円。

ゴーリーの没後、アメリカ・ペンシルバニア州のブランディーワイン・リバー美術館で2009年に行われた回顧展 'Elegant Enigmas: The Art of Edward Gorey' は大きな話題となり、その後世界各地を巡回しました。この「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密展」が、ついに日本初上陸。約2年間の予定で全国の美術館を巡回します。

いつも素敵な情報をくださる旅犬さんに教えていただきまして、昨日、伊丹市立美術館で行われた柴田先生の講演会にご一緒してまいりました。

柴田先生の翻訳やエッセイのファンであるわたしですが、エドワード・ゴーリーはどうもテーマが暗そう怖そう&どこから手を出すのが正解かわからない……ということで実はいままで1冊も読んだことがありませんでした。

ちなみに伊丹市立美術館にも初訪問。
このあたりは美観地区に指定されているため、ニトリやタリーズコーヒーなども瓦・白壁調を取り入れています。美術館も石庭などがある和風の外観。そこにゴーリーのポスターなどが貼られている様は柴田先生もおっしゃっていましたがなかなかシュールな感じです。
中は地上2階、地下2階で一回庭にある通路を通っていく構造など、ちょっと迷路っぽくて(?)面白かったです。

10時開館でまず展示をじっくり拝見。
空いていたのでゴーリーの原画を自由に至近距離で好きなだけ凝視することが出来ました。
絵だけじゃなくて字(レタリングっていうんでしょうか?)も全部手書きなんですよね、あまりに美しいから活字かと思っちゃうくらい、でも活字にはないユニークさと個性がある。
旅犬さん「1ヶ所もお直しが無い…!」の指摘に、そう言われれば、と。
ホワイト修正とか、誤魔化した跡がいっさい無いのです。

ゴーリーと云えばモノクロで細かい線で描き込み!というイメージでしたがカラーも数少ないけどある。人間の描き方に比べて猫のそれの愛らしさ、ユーモラスさは何なのでしょう…。
柴田先生の講演でもゴーリーの本では「子どもは酷い目に遭ってばかりだけど」猫や犬はそういう目には滅多に遭わない。とおっしゃっていました。でも会場から質問があってそれに答えられたのですが実際のゴーリーが子ども時代にトラウマがあったという話は1回もされたことがなく、また甥っ子さんも「やさしいおじさんだった」と言われたそうです。

柴田先生の講演で最初におっしゃったのが名前についてで、そこから既にすごく興味深くて、まさに「ツカミはオッケー」という感じ。
「エドワード」という名前は現代のアメリカ人の名前では1925年生まれのゴーリーが最後くらいで、今は「エド」とか「テッド」とかが一般的だと。ゴーリー[GOREY]という名前も綴りの1文字[E]を抜くと「血みどろの」という意味になる[GORY]になる。
エドワード・ゴーリーって本名なんですね(←というくらい知らなかった)。本名なのに、作風に合わせたペンネームかの如くだ、っていうのが凄いですよね。ファースト・ネームも時代によって違いがあるんだなあ。日本の名前でそういうのはわかるけど英語圏もそうなんだ~!

他にもゴーリーが最初はペーパーバックの会社でサラリーマンやっててそこでフォントなどで認められていった話とか、柴田先生がお若い頃にゴーリー装丁とは知らずに英語を学ぶ基本中の基本の書で学んだりTシャツを買っていたこと(つまりアメリカでは絵本作家になる前のゴーリーが既にメジャーな存在だった)とか、文章が別の人の作品に挿し絵をつける場合は暖かみのある絵を描いたりしてる例だとか、アメリカでいちばん売れているゴーリーの作品(先生ご自身は「ゴーリーの作品の中で最もつまらないので自分では日本で訳して出版するつもりはない」とのこと)の紹介だとか、柴田先生のお気に入りのゴーリーの作品の紹介だとか、盛りだくさんでした。質問タイムを最後だけに取るんじゃなくて、2時間の講演の中で3回も取って下さるのとかは大学で教鞭を取られていたからでしょうか。英語で「clever」は誉め言葉では無いとか、へえ~って。

エドワード・ゴーリーの絵が使われたテレビ番組のオープニング・アニメーション。


講演会でご映像を流しておられ、ミステリアスでカッコ良かった。ユーチューブで簡単に見ることが出来るとおっしゃっていたので検索してみました。

そういえば『うろんな客』の「うろん」という日本語はいしいひさいちの漫画につかわれていて、それから取ったとおっしゃっていたのが意外だったなあ。原題[The Doubtful Guest]の[Doubtful]が現代英語での使われ方よりも少し古い意味で使われていると下書きなどから判断できたのでそっちの意味で訳そうと思ったというエピソードの後にさらりとおっしゃっていました。面白~い!

うろんな客
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思ったよりもたくさん朗読をしてくださったのですが、それが日本語だけじゃなくて英語でもたくさんあって、それであの、めっちゃくちゃ朗読がお上手なんですよ! 日本語はもちろん、英語も、なんていうか、全然構えてなくて、超ナチュラルで、「英語が母語じゃないひとが英語を話そうとしてる感」がぜんっぜんなくて境目が無いの! 東大で英語を教えてらして、英語で仕事をされている方ってこういうことなのか! もう聞こえてくる「音」が「声」が美し過ぎる!!! なんなのこのひと凄過ぎるネ申か、ネ申がここにいらっしゃる!!! って感じでもう驚異に目を見張り耳はすべての音に集中しまくり、堪能しまくりでした!!! 眼福ならぬ耳福!!!

しかもしかも、美術館のホームページには「講演会」としか書いていなかったのにその後サインをしてくださる手筈をスタッフの皆様が整えてくださっていたのですよ!
サインしてくださる前に確認の言葉のやりとりがあり、嬉しいお言葉まで頂戴でき、頭のなかが真っ白になって思わず「大好きです」と口走ってしまった。告白してどないすんねん。
しばらくテンション上がりまくりで手が緊張で震えていました。あーすんごく偉い方なのになんって気さくでお優しい方なんでしょう!!!

その後、先生の講演を踏まえてもう1回ゴーリー展を見直してから帰路につきました。
心の洗濯、という言葉をすごく実感できた素晴らしい一日となりました。
(講演会前に待っているときに目の前を小川洋子さんがすーっと通り過ぎて行かれた、関西在住でいらっしゃるし、柴田先生のアンソロジーにも作品掲載されているし、そのへんのご縁でいらしたのかしら! 『ブラフマンの埋葬』サイン会(2004年4月)以来の生・小川洋子先生まで拝見出来るとは……! 望外のヨロコビ!)

旅犬さん、柴田先生、スタッフのみなさま、本当にありがとうございました…!!!


★展覧会 次は福島、下関と回られるようです。
詳しくは雑誌「MOE」のこのページとか。リンク貼っておきます。


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