2016/03/29

図書室のキリギリス

図書室のキリギリス (双葉文庫)
竹内 真
双葉社 (2015-09-10)
売り上げランキング: 90,723
kindle版
■竹内真
初めて読む作家さん。アマゾンのオススメで上がってきて、「まぁ図書館とか本屋が舞台になっている話はそれだけで興味あるし、」とまずは最初のほうを無料試し読み。可もなく不可もなくといったところで、どうしようかと迷ったが他に読むものもないし続きを読んでみた。そしたら何の期待もしていなかったのが良かったのか、どんどん面白くなってぐいぐい引き込まれてあっという間に読了。
具体的に実在する作家さんとか本やその内容について「本が好き!」という愛があふれた会話を登場人物たちが嬉しそうにするのがなんとも楽しくてうらやましいんだよなあ。ああ、リアルでここまで本ラブ!な会話が弾む環境なんてどれだけ貴重なことだろう。

主人公、高良詩織は最近離婚したばかりで職探しをしている三十代前半の女性。
教職も取ってないし司書の資格も持っていなかったが、それでも大丈夫だという県立高校で音楽教師をやっている友人からすすめられて「学校司書」の面接を受けにいく。このお話を読んで初めて知ったが司書教諭の資格を持った人がいて、でも実務的には別途「学校司書」っていうのを安く(資格は要らないかわりに)雇ってるっていうのがあるらしい。身分的には「臨時雇いの公務員」扱い。中身をもっと詳しく読んでいくと、「司書」っていうよりは「学校事務員」として雇用されて、図書室以外の事務仕事も頼まれたりするみたいだ。ふーん。

司書資格持ってても図書館の仕事ってそんなにないから誰でもなれるわけじゃないのに……ってちょっと思っちゃって(現にわたしも司書資格は持っているけど司書で働いたことは無くて、本にはなんの関係もない会社勤めをしている)、自分のことをアリとキリギリスのキリギリスに例えたりする主人公に軽く反感を覚えたりも最初の頃はしたんだけど、読み進むうちにこのひとの人柄が伝わってきて(全然キリギリスじゃないじゃないか)、好意に変わった。なにより、いろんな本をたくさん読んでいて、読んだ本(の内容)を大切にしているのが良い。詩織さんにすすめられたら読みたくなるな、って気がする。

また、登場する高校生たちがとっても素直で良い子たちで、本を読む子が多くてにこにこしてしまう。現実はそんなじゃないよーって言われるかもだけど。自主的にいろんなことをどんどん進めて行ったりほんと頼もしい。頭のよい子たちだなあ~、わたしが高校生の時こんなにしっかりしてなかったよ!って尊敬しちゃう。

わたしは本が好きだけど所有欲も強くて「借りて読む」と云うのがあんまり好きじゃないので中学校、高校は図書室にはほぼ行っていない。小学校の時はまだ自分で本を買えなかったから図書室も学級文庫もおおいに利用させてもらったし、大学図書館は雰囲気が気に入ったのと調べものをしたりなんだりで足繁く通ったものだが。
でもこの本を読んでいると図書室って本を借りるだけの場所じゃないんだなあ。こうやって、本を通じて友達と語り合ったりすることができる図書室だったら通って見たかったなあ。
司書の資格を取るときにその仕事内容は習ったけど、レファレンスとかがメインでこの本に出てくる「ブックトーク」「ブックマーカー」「ブックテーブル」なんてのは教わらなかった。時代が古かったというのもあるかもしれない。言い方が違うだけで、似たような感じのは、例えば「ブックテーブル」は昔「読書会」って言ってたのと同じじゃないのかな、って思うんだけど。どれも楽しそうだけど自分が高校生の時にこんなに人前で本やその感想を積極的に話し合えたかどうかは……どうなんだろうなあ(苦笑)。登場人物たちの発表の完成度高すぎじゃないデスか?

素直でまっすぐで吸収して成長していく生徒たちを毎日みている詩織もまた(その影響もあり)、自分の生き方について思いを固めていく。
前任者のちょっとお姉さんのひとの人生の舵のとりかたを知ったこともあったと思う。この前任者のひとの生き方もざっくり語られただけでもかなり興味深く、彼女が主人公の物語もまた別に読んでみたいくらいなのだが(以前のも良いし、これからの古本屋生活も絶対面白いはず)。
最後の方の展開で、詩織が選ぶ決断がちょっと意外だった。えー。どうして両方出来る方向を選ばなかったのかなあ。片っ方だけしか出来ないわけじゃないと思うんだけどなあ。でももう決めちゃってたんだね…。

ちなみに本書に出てくる具体的な作品をkindleで検索してみたけどほとんどは無かった。紙媒体だとけっこうあるが古本じゃなきゃだめなのもあったし、何年も前に出た本なのにいまだに単行本だけで文庫化していないのもあった。どんな本が取り上げられているのかをここで羅列してもあんまり意味がない。物語の中でどういうキャラにどういう思いで語られているか、そこを読むことでぐっと興味がわくような紹介をされているのだから、是非『図書館のキリギリス』を読んでのお楽しみということにしていただきたい。巻末に作品に登場した本のブックトーク風コラムも収録されているし。

著者のあとがきに自宅の暖炉から外から入ったらしいフクロウが云々のエピソードがあり、いったいどちらにお住まいなのかググってみたがよくわからなかった。東京じゃあ、フクロウいないよね…いや東京でも23区外だったら有りなのか…???
そんなこんなで著者のブログ(サイキンのタケウチ出張所)に行ってみたら以下のような嬉しいお知らせが。

おかげさまで去年の秋に文庫が出て結構売れた『図書室のキリギリス』の続編を書くことが決まりました。1冊目で学校司書になった高良詩織が、2年目も仕事を続けられるのか……ってな話を書こうと思ってます。 ぼちぼち準備を始めてるとこなんで、「こういう話を書いてほしい」とか「こういう本を取り上げてほしい」とか「学校司書のこういう面に言及してほしい」とかのご意見があったらお寄せください。

学校司書のリアルな細かいところを知りたいんだけどなかなかみんな喋ってくんないんだそうだ。書いた文章について「違うよ」とは云っても「どう違うのか」は教えてくれないんだって、えーそうなのー?なんでー? 文句だけ云って教えないってどうなのかなあ~。いろいろ職業上の守秘義務とかに引っかかるからだろうけど。うーん。

なにはともれ、すごく面白いお話だったので続篇嬉しい! この話が読めて幸せだった! この本に出てきた作品もいくつか読んでみたい(んだけど先刻上記したような状態だからどうしようかちと迷う。いまさら2009年刊行のモーフィー時計の単行本買うのか~? え~文庫化しないの~? と思って発行元確認したら国書刊行会だった……アカン……文庫無いわ……どっかよその出版社でしてくれんかなー…)。