2016/02/25

にぎやかな眠り

にぎやかな眠り ピーター・シャンディ教授シリーズ (創元推理文庫)
東京創元社 (2015-10-30)
売り上げランキング: 263
kindle版
■シャーロット・マクラウド 翻訳:高田惠子
Amazonの月替わりセールで出てきた。
全然期待せずに冒頭部分を試し読みしてみたらあまりにも皮肉が利いたユーモラスなシーンから始まっていたので即刻購入。2日間かけてじっくり楽しんだ。めっちゃ面白かった~!!!

シャーロット・マクラウドはアメリカの推理小説家で1922年生まれ。和暦でいうと大正11年だ。
この作品は1978年、昭和53年に出版された。
読んでみたけど古さはほぼ感じさせない。アメリカの架空の町、バラクラヴァ農業大学とその周囲が舞台。
季節はまさにクリスマス。

バラクラヴァ・クレッセントでは1931年から華々しいグランド・イルミネーションをおこなうことが伝統になっていた。18年前にこの家に越してきて以来、ピーター・シャンディ教授(56歳・応用土壌学教授・独身)は近所やイルミネーション委員会から家の飾り付けのことで毎年おせっかいを受けてきた。中でもミセス・エイムズときたら「この18年間で73回」も文句を言いに来ていた。シャンディ教授は数を数えるのが大好きなので3つ以上のものがあるとつい数えてしまうのらしい。クリスマスは好きだが、静かなクリスマスを望んでいた教授は毎年押し付けられる「伝統は守らなくては」という理屈と町中の騒々しさに苦しんでいた。
ある日ついに教授はぷちんとキレる。そしてある方法で仕返しを試みる…。このやりくちがとっても痛快で爽快! よくぞやった!と声を掛けたくなる。
だが教授の企みは一定の効果は上げたが、想定外の評価を受けたりもした(このへんの教授の表情を想像するだに笑いが込み上げる)。そして何よりも船旅でしばらく家を空けた後帰宅した彼はなんと死体を発見する破目になる。それはあの、ミセス・エイムズだった。しかも一見事故死に見える彼女はどうやら殺されたらしい……!

罪を被せられて名誉挽回するために真犯人を探すというパターンかと思ったらそうではなく、教授はほぼ疑われない。なんせアリバイばっちりだったし。そもそもミセス・エイムズは警察や医者に「事故死」として公式に葬られてしまうのだ。しかし教授自身が納得出来ていなかった。そのきっかけは床に転がっていたビー玉だった…!

狭い町で噂話好きの住人たちの目が光っていてどんなこともあっというまに広がるのとか、お互いの干渉がやたら激しいのとか、日本でも田舎ではこんな感じだがアメリカでもそうなんだなあと思いながら読んだ。家々のクリスマス・イルミネーションがさかんになったのは日本ではここ10年、せいぜい20年くらいのものか?
ミステリとしてもなかなか面白かったがアメリカの都市部ではない濃厚な人間関係をユーモラスに描きいてあり(どろどろしたものは描かれていない)、楽しかった。
主人公の一筋縄ではいかないキャラクターもすごく良い。ひねくれているというとちょっと違うんだけど、クールというか。少し変わり者かな? でも常識家だし、近所づきあいだってするし、あと恋もしますよ! 解説の浅羽莢子さん(嬉!!)が「中年だが独身、そしてこの作品の中で出会う女性が妙齢の美女ではなく素敵な中年婦人であるところがまたいい。」と書いていらして、たしかにミステリーで恋愛が絡むことはよくあるけれど相手の女性がだいぶ若い美女という設定が多いもんなあ。
ピーターはずっと独身だったのかと思って読んでいたけれど(植物学専攻の女性教授との「異花受粉は失敗に終わった」とか最初のほうにあったので)、終わりの方で「独身でいらしたあいだが――」「そう、とても長かった。」という台詞があり、どうなのかなあ。「あいだ」ということは「独身じゃなかった」時期に挟まれているっていうこと? 単なる言葉のアヤ? まあどっちでもいいんだけど。

のんびりした町の話だから殺人は1回きりだと思っていたらそうは問屋が下さなかった。おやおや。読んでいて「こいつはあやしい」と根拠なしに勘で考えていた人物は2名はいたが、主犯についてはノーマークだった。おお、そういえばそうであったかという感じ。

この話、警察が全然キャラ立ってないね。医者の方がまだ個性があった。まあ他が濃すぎるとも云うけど。特に学長のトールシェルド・スヴェンソンが凄い。絵的にも迫力的にも台詞回しもキャラクターもみんな漫画みたいだ。その妻シーグリンデもなかなかだし。ペアで登場すると最強だ。
このシリーズは現在第3弾まで翻訳が出ているみたいだからまた会えるだろう。楽しみだ。

表紙イラストは近年実に書店で表紙を手掛けておられるのをしょっちゅう見掛ける売れっ子イラストレータの加藤木麻莉さん。このひとの絵、いいなあ好きだなあ~とホームページを拝見してうっとりしてしまった。東京創元社の60周年キャンペーンキャラのうさぎの着ぐるみをかぶった黒猫さん(名前は「くらり」というらしい)もこのかただったのですね。

ちなみに本作の邦訳出版は1987(昭和62)年12月で、今回の新版は翻訳は同じで表紙イラストなどが新しくなったものらしい。ググったら旧版はこんなの。うーん全然イメージが違うなあ。

にぎやかな眠り (創元推理文庫)
高田 恵子 シャーロット・マクラウド
東京創元社
売り上げランキング: 365,152