2016/02/22

凸凹デイズ

凸凹デイズ (文春文庫 や 42-1)
山本 幸久
文藝春秋
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kindle版
■山本幸久
初出「別冊文藝春秋」253~257号(「凹組太平記」を改題)
単行本2005年10月文藝春秋刊 「凸凹ホリデー」は文庫版書き下ろし
電子書籍版は解説が省かれている。

というわけで山本幸久をもう1作読んでみた。わりと面白かった。これもリアリティ追求よりは「読んで元気になる小説」であらんとするスタンスを大事に書かれているかな。くすぐりは「アヒル」ほど多くないけどところどころ笑える。なにより主人公のキャラクターが元気で打たれ強くて、良い。

広告業界の話。広告代理店じゃなくて、デザイン事務所。と言われて想像するような華やかさからはずいぶん遠い。和菓子屋のパンフレットや東京郊外のスーパーのチラシ、ラーメン屋の看板、地方都市の電機メーカーの会社案内やエロ雑誌のグラビアのレイアウトなどなど。
そんなところへ遊園地のリニューアルという大きな仕事が回ってきた。そのコンペに向かう電車内のシーンから物語は始まる。

主な登場人物。
主人公は凪海(なみ)。苗字はウラハラ。漢字はどっかで出てきたっけなあ。九品仏駅にあるぼろアパートの一室(和室)にある凹組(ぼこぐみ)というデザイン事務所に勤めている駆け出しのデザイナー。身長150センチそこそこ。
事務所の中心っぽい役割のオータキ。大滝(ナミの専門学校の先輩)。30代前半。身長185センチ。だいたいいつも海外のキャラクターもののシャツを着ている。
同じく黒川。クロ。ムサビ卒。身長188センチ、体重100㎏、いつもよれよれの色あせた着物を着ている(けっして粋ではなくだらしないだけ)。って相撲取りみたいだなあ。
ライバル的な存在の、もう少し大手のデザイン事務所QQQの女社長、醐宮(ごみや)純子。ムサビ時代からの黒川の同期。身長はナミくらい。
この身長さから「凹組」という社名や「凸凹デイズ」というタイトルになっている。
未名未コーポレーション(広告代理店)の磐井田(大滝達より7歳年長)。いつも笑顔で喜怒哀楽を表現する。

主な登場人物以外にも大滝たちが20代前半だったころに勤めていた事務所「ゴッサム・シティ」の上司(あだ名はシャチョー)の木村とか、そこの大滝が「番頭」とあだ名を内心で付けた横井だとか、脇もなかなか味のあるユニークな人物が揃っている。遊園地の副社長は……バカに見えて実はというオチかと期待していたのに本当にバカだったという…。

書き下ろしの「凸凹ホリデー」は磐井田視点。

まーしかし30代前半とかってまだまだ若いよなあ、ナミなんかまだ20代半ばだもんなあ、とその「伸びしろ」の大きい夢のある描かれ方に随分眩しいような気持ちになった。磐井田さんは最初出てきたときずっと笑ってるとか胡散臭い~って思ったけど読み込んでいくとすごく苦労人でいいひとなのだった。書き下ろし小説では少し落ち込んでいたけど、最後元気になってほっとした。これからこれから! この話に「アヒルバス」がちらっとだけかすっていたのが楽しい。