2016/01/02

二度寝で番茶

二度寝で番茶 (双葉文庫)
二度寝で番茶 (双葉文庫)
posted with amazlet at 16.01.02
双葉社 (2014-04-21)
売り上げランキング: 53
kindle版
■木皿泉
もう何年も前になるが旅犬さんと本屋に寄った時、書棚にポスターが貼ってありそれを指さして彼女が「このひとたち良いよ」と教えてくれた。目をやると穏やかそうな年配のごくふつうのおじさんとおばさんが笑っていて「木皿泉」と書いてあった。面白い名前だなあと思った。その後ひとりで本屋に行ったときに『すいか』の文庫本が出ていたので旅犬さんが言っていたことを思い出し、手に取ってみたが中を確かめたらシナリオだったのでうーんと唸って棚に戻したということがあった。

そんな木皿泉のこれは2010年9月刊行のエッセイ集の電子書籍版。先日のkindleの日替わりセールで安かったので「おお!」と購入。年末年始にかけてぼちぼちと読んだ。

目次。
特別コラボレーション
木皿泉(文)×高山なおみ(料理)
木皿泉のエッセイを読んで高山なおみが料理を作ってその写真が載っている。
[気まぐれな店/誰かを想う/初めての仕事/明日を待つ/誰でもよかった/喫茶「思いつき」

二度寝で番茶
[逆ギレのワケ/色即是空/情けの値段/私のランク/保留の効能/笑門在鬼/少子化襲来/東は東、西は西/二人の仕事/スペードの女王/最悪の中の幸せ/手放したもの/負けの美学/こわい話/男の中の男/ものをつくる/旅行けば/パターンな話/湯気至上主義/贈る言葉/恋ばな/子供の言い分/解きの過ぎゆくままに/誰かの妄想/呪縛の日々/見出された時/がんもどき製造機/偕老同穴/暴力にはお茶を/夕焼けの二人/勝ったり負けたり/老いの実感/ワタシの欲望/日本の空気/監視されたい私/シナリオのつくり方①②③④/これでオシマイ]

描き下ろしマンガ 「今日のつづきは また明日」
あとがき/文庫版あとがき

木皿泉というのはペンネームで、書店で見たポスターに載っていた2人(夫・和泉努・1952年生まれと妻・妻鹿年季子・1957年生まれ)が共同で脚本やらなんやらを執筆されているということだ。脚本はプロット考えるひとと書くひとかなーとか思ってたらそういう分担でもないらしい。どうやってるのか、本書でもさらっと説明してあるけどよくわからないけど、まあご本人たちはそれで長年やってこられたんだから、それこそ阿吽の呼吸があるんだろう、説明とかじゃなくて。で、ずっとご夫婦なのかと思ったらほとんど事実婚だったけど籍を入れたのはこのわりと最近だとか書いてあって、へえーという感じ。
文中では「かっぱ」「ダイフク」という名前で対談風になっている。

わたしはごくまれにしかテレビドラマを観ないので、木皿泉というひとのプロフィールを読んでも観たことないのだけれど、聞いたことがあるなあ、というのがいくつか含まれていた。特に「すいか」は気になっていたので、このエッセイを読んで「このひとたちが作られた映画とか見てみたいなあ」と思ったので、気力がわいて気分が乗ったら見てみたいと思う。

エッセイは、予想したとおりのトーンというか、過激の逆、淡々としたトーンで常識的なことが書いてあるのだがどこかのほほんとしたまったりとした空気があって、呑気に読めた。
「家族も誰かの発明だ」とかそういう核心を突く発言が日常的な会話の中にさらりと入っていて(それもちょこちょこ)、このひとたちはすごく頭が良いというか、さすが年の功というか、人生の先輩だなあ、勉強になるなあ、と思う。毒舌にならないけど実は猛毒を持っているんだろうなと窺わせるというか、だって、人間だもの。
エッセイの冒頭に映画や小説からの引用文が毎回付いているのだけれど、それについての言及がほぼ無い(少しかする回もあった)ので、ちょっとそれについて聞きたいような気が毎回した。土橋とし子のイラストが付いているのだけれど、最初の高山なおみとの写真コラボが良かったので、その線で行ってもらった方が雰囲気が合っていたような気がしないでもないが、まあこういうちょっと前衛っぽい絵も悪いことはない。

最後の漫画に出てきた「小2くらいのが高速移動って言いながら横走りで去っていく」というのが一番面白かった。これは実際にあったことなんだろうけど。こういう細かい日常の面白いところをきちんとひろっていくとその積み重ねで人生って愉しくなるんだと思う。