2015/12/24

ボーイミーツガールの極端なもの

ボーイミーツガールの極端なもの
山崎ナオコーラ
イースト・プレス (2015-04-17)
売り上げランキング: 96,036
■山崎ナオコーラ
2015年4月単行本刊。
フリーペーパー「honto+」(2013.7-2015.2)連載分と書き下ろし2篇を含めた10篇から成る。
秋頃に「サボテンの写真が話ごとに載っている」と知ってサボテン目的で購入し、長らく積んであった本ようやく読んだ(単行本なので通勤に持って行きにくいので遅くなった)。

この本に紹介されているサボテンはみんな変わっている。種そのものも珍しいと思うんだけどその突然変異的なものが実に多い。「生長点異常」でスパイラルに生長したのとか、接ぎ木したのとか。だから「これと同じのが欲しい」と思っても難しいんだろうなあ。まぁ植物なんで、みんな大なり小なり個体差があるのは当たり前なんだけどそれにしても。
うちにもサボテンが2つ、多肉植物は1種類3株(増えた)あるが、そのへんの花屋やイオンで買ったごくオーソドックスなものばかりだ。
人気多肉植物店・叢Qusamuraの店主・小田康平が植物監修を務める。】とあり、ググると広島のお店だとわかる。面白いお店だ。ちょっと高価そうだけど。希少価値があるしこれだけおしゃれにしてあったらそうなるかなあという感じ。文中では「小さい森」という広島の店になっていた。
サボテンの写真は全部カラーで、特別な紙に印刷されていて、サボテンについての説明文も付いている。
正直、お話とサボテンのつながりはわりと無理やりというか、プレゼントしたりされたりとかで、「関連付けありき」で書かれている感は否めない。

サボテンが変わっている、それを絡めたお話ということで、お話もみんな変わった設定ばかりだった。「ボーイ・ミーツ・ガール」じゃないほうが多いし…まあ「極端なもの」って書いてあるもんなあ、そのとおりだったなあ。
でもみんな面白くて、時々「えーっ、そうくる」「えーっ、んな漫画みたいな展開」と驚いたりしながら読んだ。
短篇集風だけど、各話がつながっている連作短編集なので順番に読んだほうがいい。一~三、四~六、七~九が明確な連作で、最後のエピローグで全篇が繋がる、アイテムは勿論サボテンで。

以下、各話感想、ネタバレしてますじゃんじゃんバリバリに。
なので未読の方は華麗にスルーなさってください。


目次
第一話 処女のおばあさん
タイトルからセンセーショナルだが、内容は別に大人しい。いくつになったって、ときめいたり恋に憧れたり出来るのはすごく羨ましい、素晴らしいことだ。

第二話 野球選手の妻になりたい
第一話のおばあさんの姪っ子の話。
小学校3年生のときの「結婚観」を高校3年生になっても変わらずに持っている主人公は凄いなと思った。小学校、中学校、高校で恋愛についての考え方ってもっと変わっていくと思うんだけど…。大学進学前に気付けて良かったね。

第三話 誰にでもかんむりがある
タイトルと中身が結びつきにくかったがこの話が読んでいて一番展開(の内容と速さ)に驚いた。んなあほなー。でもドラマチック! 紫はともかく、自分にドンピシャのブランドを見つけられるって素敵よねとは思った。大人ならではの恋って感じだなあ。夢っぽいけど…。

第四話 恋人は松田聖子
引きこもりの青年の話。そのわりに健全な内容だった。松田聖子について(彼女が他のアイドルとはどういう点が違って素晴らしいかなど)熱く語っていて興味深く読んだ。松田聖子についてこんなふうな視点で語られているのが面白かった。

第五話 「さようなら」を言ったことがない
第四話の青年の弟の話。兄視点では弟はルックス良し、頭良し、スポーツも出来ておまけに親兄弟思いという非の打ちどころのないやさしい青年だったが…こんな厄介な性格しとったんかい、という話。この話も最終部の展開にギョッとさせられたなあ。えええええって感じ。いろんな意味で酷い…どうにかならんもんなの? このひとはこのまんまなの? っていうか最初に「自分には既に彼女が複数いるが、それでもかまわないのか」くらいは確認しろよ! 大学生にもなって「嬉しいありがとう」じゃねーよ、バカ! 話としては面白く読んだがこの話しの主人公には腹が立ったわ。

第六話 山と薔薇の日々
第四話と第五話の兄弟の母親(と少し父親)の話。
この母親も読んでいて腹が立ったのだが、このひとについてはこの話の中で自分で悟る展開があったのでほっとした。
まあでもしかし、家族の問題って難しいよなあ実際はなあ…感情とか、すぱっと割り切れるもんじゃなし。お話として読んでいるのとは違うよなあ。
それにしてもまさか天国の展開まで出てくるとは! 凄い! 予想外すぎて笑っちゃった。よくこんな展開を書くなあ。

第七話 付き添いがいないとテレビに出られないアイドル
彼女は引きこもりというのとは違うけど、あんまりオモテに出て自分の意見を言ったりするのが苦手、でもルックスは素晴らしく可愛らしく、仲良しの従姉(このひとの設定がけっこう劇的人生だけどそれはわりとあっさり描かれる)が黒子として発言などをサポートするユーチューブに動画をUPしたらあっというまに話題になり→ゴールデンタイムのテレビ番組出演→人気に火が付く、という経過をたどる。ネット全盛の今ならではだ。
最後の展開は女同士ではありがちだけどこれだけお世話になってても恋愛が勝つの?と思ってしまった。

第八話 ガールミーツガール
と、思ったらどんでん返しが。あーそうくるかー。でもちゃんとわかってるのかなあと危ぶまないでもない。ずっと頼りにしてきたお姉ちゃんだから…っていうのがまったくないとは言えないような、どうなんだろう。まあそんなの本人たちに云わせれば「大きなお世話よ」ってレベルだろうしな。
男の子が粘着せず予想外にきっぱりさっぱりと別れたのであれっと思い、そのあとひとりで泣くシーンにグッときた。気の毒に…ちゃんと好きだったんだね、業界人だから軽い気持ちだろうと誤解しててごめんよ。

第九話 絶対的な恋なんてない
第八話がそうならば、第九話はこうくるよなあ。でもあえて「プラトニックラブ」というのが男のロマン、なんであろうか。男性のほうがロマンチストだという意見もありますわね。

エピローグ
各話に出てきたサボテンを扱う広島の店「小さな森」店主が主人公。多肉植物ブームがきてむしろ心配になるとか、そういうものかなあと。お客さんでやってきた女性3人連れ、鳥子は名前を明記してあるのに他二人を「中年の女性」「若い女性」としてあるのはなんでかなあ。まあ普通に第二話と第三話の主人公だけど、その第二話の彼女の口からまさかのあのひとの名前が出てきてびっくり。えーっ(大丈夫なの…)!?