2015/11/23

味なメニュー

味なメニュー
味なメニュー
posted with amazlet at 15.11.23
平松 洋子
幻冬舎
売り上げランキング: 14,507
■平松洋子
「味なメニュー」は表紙も実際にあるお店のメニュー(この店は黒板に書くシステム、本文参照)、中身も「メニュー」を中心にその店のたたずまい、芯とするもの、大事にしていること、店とお客の関わり、風景といったものを丁寧に取材して書いてある。チェーン店には無い、個人店の店主それぞれの人と為りが反映されるのだけれども、個性それだけで突っ走ってしまっては商売にならない。やはり、そこは客とのやり取りの中で得たものや、リアルに出てくる売り上げの推移などを考慮して、どうやったら美味しくなるか、お客が集まるか、また来てもらえるかを試行錯誤の末、編み出されたもの。「初代の味を守っています」というお店も少なくないけれど、どうしても時代の変化(食材の変化・仕入れられる店・物の変化、売値と原価率の問題)は避けられず、マイナーチェンジをしたり、思い切って代替わりでメニューを見直したり。それでも、その店の「芯」は変わらないから、その思いが、いろんなものが積み重なって「いま」の味があるんだろう。

初出は文芸誌「GINGER L(ジンジャーエール)」1~18号に連載。雑誌全然チェックしないので初めて知った雑誌だ。
装丁は芥陽子。
カバー撮影は平松さんとよくタッグを組まれる日置武晴(表1:東京「甚六」)と小境勝巳(表4:水道橋「とんがらし」)。
文中の写真はすべてモノクロで、日置さんと小境さんそれぞれ担当。

目次に、出てくるお店+看板メニュー、感想メモを追記。
シチューと煮込み
東銀座「銀之塔」 土鍋でビーフシチューってところは家庭でも真似しても良いかも。お漬物にも神経が行き届いていそうなところが良いなあ。
森下「山利喜」の煮込み 「煮込み」というその言葉だけでもう美味しそう。だけどお店で注文したこと無いかも。「煮込み580円」って書いてあっても「なんの煮込みなの?」って思っちゃうかも…。

道頓堀の品書き
大阪道頓堀「たこ梅」関東煮(おでん) またたこ梅か! 平松さんのエッセイに何度取り上げられたか。大阪で働いているけど行った事無いんだよね…鯨のコロとか苦手だし…さえずりはどうかなあ? とりあえずここまで読んで辛抱たまらんくなり、本日祝日、急きょ予定変更しお昼用に朝からおでんの材料を買いに走りましタ。

ちょっと大衆酒場で
赤羽駅東口、大衆酒場「まるよし」 「せんべろ」って言葉平松さんの著作では、初登場かなあ…。
赤羽「OK横丁」の居酒屋「八起」 「豚王ぽ」で豚の尻尾とは! 豚の尻尾って食べられるのか…。
赤羽「まるます屋」 なんでもござれ。
お酒が強かったら、赤羽は天国みたいなところだろうなあ。美味しくて安くて気安いお店がたくさん。まだまだある。
赤羽「川栄」 鰻と鶏肉。すごいなあ。
赤羽「立ち飲みいこい」 ここも平松さんの著作で前も出てきたような気がする。支払システムが独特なので覚えている。

キッチンカーでランチを買う
大手町などのオフィス街のキッチンカー。「アジアンランチ」など。OL3人によるランチ談義もあって、面白い。お弁当の移動販売じゃなくて、その場で作る移動式のお店。こんなのがあったらランチタイムが充実するだろうなあ、でも毎日6、7百円はプチ贅沢かな、外食するよりは安いけど…週何日かがちょうどいいかも。

かつサンドの秘密
JR東京駅「万かつサンド」 かつサンドは美味しいけど少し高くてこれもプチ贅沢。東京駅ともなるといろんな美味しいお弁当がいっぱいあるから迷うだろうなあ。その中で「かつサンド」にするのはしょっちゅう東京駅に行ってればまあアリなんだろうけどもなあ…。JR秋葉原「肉ビル」(通称)=「万かつ」の「万世」。「排骨拉麺(ばーこーらーめん)」もいかにも美味しそう。

夢のかたち
代々木「ライオンシェア」キーマカリー。 キーマカレーはまだ食べたことが無い。ドライカレー(自作)はある。似てるけど違うらしい。
銀座「ニューキャッスル」 辛来飯。カライライス。つまりカレーライスのこと。量が4段階で「蒲田」「大森」「大井」「品川」だそうだ。「大森」と「大井」は東京じゃなくても想像がつくけど「蒲田」と「品川」ってのは…。
日本人のつくるカレーには夢のかたちがある。】というラストの一行。その後の[追記]にほえー。お客さんが跡を継ぐっていうのが凄いよなあ。すごーく「残したい味」だったんだろうなあ。

だからジューススタンド
中央線吉祥寺駅など「HONEY’S BAR」、その他「ジュースの森」「アシタ・バー」などたくさん。駅だけでなく、百貨店でもよく見かけるジューススタンドは、【ただし、玉石混淆である。】そうで、着色料、漂白剤、その他いろいろ添加物が入っているお店もあるそうだ。そんななかで、新宿御苑前「ぴーまん」、銀座「銀座青汁スタンド」、渋谷「遠藤青汁サービススタンド」、人形町「須賀屋ジューススタンド」などは平松さんの折り紙つき。スムージーブームで自分でも作ってみたことあるけどたしかに新鮮な野菜や果物を毎日入手してジュースにして、ってやってると馬鹿にならない金額がかかるんであっというまにやめてしまったもんなあ。しかも野菜中心だと栄養はあるんだろうけど美味しくないし…。

そこに立ち食いそばがあるから
銀座「よもだそば」、新橋「そば作」、中野「かさい」他、すべて立ち食いそば。立ち食いそばといえば「安い、早い、味は二の次」だと思っていたが店を選べば「安くて早くてしかも美味しい」というのがいくつもあるらしい。まあ、全部東京の話だけど…大阪はどうなのかなあ。立ち食いそばやるよりラーメン店のほうが儲かるらしい。ラーメン店、どこにでもあるもんな。街の蕎麦屋にはわりと行くけど、立ち食いそばかあ…まだその域には早いかなあ。

「立ち食いそばには『ナンバーワン』がない」
――大衆そば研究家・坂崎仁紀氏に聞く
「本の雑誌」の連載でも立ち食いそばをテーマにしてたし、平松さんのマイ・ブームなのかも。まあ、女性でもある程度年齢を重ねたから入れるようになったということもあるような気がする。

趣味のお茶漬け
新橋「鹿火屋」(かびや) 家のお茶漬けは「お茶」をかけるけどお店のは「おだし」をかけるんだね。美味しいけど、それメインに食べに行ったことはまだ無い。
日本橋「日本橋だし場」 かつを節にんべんのフラッグショップ。オープンの時テレビで紹介されていたなあ。

新橋駅前の楽園で
新橋「ニュー新橋ビル」通称「おやじビル」にて「オザワフルーツ」またも野菜ジューススタンド登場。「串かしく」。串揚げ。喫茶店「フジ」の焼きそばスパゲティは平松さん味見していわく「お祭りの屋台の味」。これも野菜ジュースの「ベジタリアン」ブームなんですね…。行き当たりばったりのマッサージ店入店体験談が面白い。居酒屋「ニューニコニコ」は外れだったので口直しに洋酒酒場「三番館」。日を改めてスタンド洋食「むさしや」の定食。
新橋ビルって大阪の駅前ビルみたいな雰囲気かなあ。いろんなお店があって玉石混淆で、おじさんの聖地。どこに行ったらアタリなのか素人にはわからないところも似てる…。

ホットケーキとパンケーキ
ホットケーキと云えばやっぱり『ちびくろサンボ』だよなあ。このあいだ読んだ米原さんのに詳しいこと書いてあったけど、平松さんも冒頭で触れられていて嬉しい。
神田「万惣フルーツパーラー」のホットケーキとフルーツサンドイッチ。
本郷「万定」「万定フルーツパーラー」
青山のパンケーキのお店「APOC」
ホットケーキとパンケーキはやはり違うものらしい。でも「パンケーキ」を注文して「ホットケーキ」が出てくるしなあ…よくわからん。パンケーキには砂糖を入れないっぽい。パン的なもの。おかずと食べたりする。

豚まんが愛される理由
大阪難波「551蓬莱」 奈良育ち、現在は兵庫なので自宅周辺に551のお店がない。通勤途中にも無い。大阪に近いからありそうなのに。神戸の中華街のパワーが強いからか。大阪のなんばウォークにあるけどそこで買ったことないんだけど別の場所のレストランには仕事絡みで行ったことがある。でも緊張する仕事関係のひとと食べたので味わう余裕が無かった。この文章を読んで、「近いうちに551の豚まんを買って帰ろう! 蓬莱に食べに行こう」と思った。
なお、よしながふみ『きのうなに食べた?』の最新刊11巻を買って読んでいたらここにも551の蓬莱の豚まんが出てきたのでそのリンクにびっくりした。東京にも浸透してきたってことなのかなあ。

黒板と筆ペン
ここへきてようやく「メニュー」へのこだわりを語る平松さん。初めて入った店の「メニュー」って楽しいし、「ああ、そういうお店なんだ」ってスタンスが垣間見えるよなあ確かに。
青山居酒屋「甚六」十年前につくった特注の額縁つき黒板に白墨で手書きのメニュー(表紙写真のお店!)。メニューは毎日変わる。並びもばらばら。消した後に書いていったらこうなったと。「初めてのお客さんは、メニューみてもなに頼んだらいいのかわからなくなっちゃうみたいで」そうだろうなあ。
吉祥寺「酒とお食事MIYAUCHI」は筆ペン書きのメニュー。これも毎日手書き。すごい。

メニューには、物語のはじまりがある。】そういうポリシーがある頼もしいお店を発見出来たら、それだけでそのひとにとっての「とっておきの宝物」だろう。


きのう何食べた? 通常版(11)  (モーニング KC)
よしなが ふみ
講談社 (2015-11-20)
売り上げランキング: 22
『きのうなに食べた?』は主人公のカップルがゲイですがラブシーンは一切ないのでそういうのに抵抗がある方にも安心しておすすめできます。個人的によしながふみの他の著作はどこか肌に合わない部分があるんですがこのシリーズだけはいけました。ネームがすごい量です。台詞で細かいレシピ、作り方を書いてあるのでお料理コミックとしても参考になります。自分より少し上の世代の親との問題とかリアルな面でも勉強になります。まだ続刊。