2015/11/17

紙の動物園

紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
ケン・リュウ
早川書房
売り上げランキング: 20,342
■ケン・リュウ 編・訳:古沢嘉通
又吉(直樹)さんがテレビ番組でオススメしたことで有名な本を紙の本で購入して家に持って帰るのが億劫なので会社に置き本して少しずつ読んだ(純文学系と思って読んでみたらSFだったのでびっくりした)。

ケン・リュウ(劉宇昆)は1976年生まれ。10歳くらいのときに家族でアメリカに渡った在米中国人。
翻訳者解説にある彼の経歴が凄い。ハーバード大学卒業後マイクロソフトに入社し、ロウスクールで法務博士号を取得し弁護士になり…という感じ。既にたくさんの作品を書いているらしいが、アメリカで本になるより先に翻訳書のほうが出版されたという。
本書は翻訳者選の短篇15篇を収録。

紙の動物園」★
この話を読みはじめたときは「文学」だと思っていたのでなんで紙で折ったヒョウが動くのかわからなくて比喩的な、文学的な表現かと思い、もう少し読んで「あれ? SF的な要素が入ったファンタジーなのかな」とやっと気付いた。この話の主人公も胸糞悪いがまあ少年だったから仕方ない面もあろう、金で妻を買ってその人間性を尊重しない父親も屑だが教育が無いのかアメリカに住んでいるのに息子の為になんの努力もしない母親も弱すぎる。病気で死んでその後に手紙で泣かせるその安直なストーリーには正直白けた。母親の手紙には感情が揺さぶられたけどこんな「泣かせ」の為の舞台設定で泣かされること自体腹立たしい。この話の素晴らしい点は折り紙の動物が動くという設定。

もののあわれ
どうして中国生まれアメリカ育ちの作者が日本のこういう微妙な感情を書こうとするのかなあ。表面だけなぞられてる感じが不愉快。しかもこれ『たったひとつの冴えたやりかた』の劣化版…。

月へ」★
高い高い木にどんどん登っていって、月に手をかけて月に到着、という最初のほうのシーンだけが良かった。後は何が云いたいのかよくわからなかった。

結縄」★
「結縄」は【古く、文字のなかった時代に、縄の結び方で意思を通じ合い、記憶の便としたこと。】縄を結う文化と、DNAの螺旋的なものを関連させて解明するという発想がなかなか面白い。有り得ないだろうけど、有るような気にさせられる。

太平洋横断海底トンネル小史
海底トンネルの工事に携わった日本の統治時代の台湾人の話。何が云いたいのかなあ。

潮汐
海辺の塔に住む父と娘の話。波にのまれて亡くなった母親へのセンチメント。最後の展開もお約束通り。

選抜宇宙種族の本つくりの習性
いろんな星の本作りの話、という素材は面白そうなのになんでこんなにつまらないんだろう。

心知五行」★
脱出ポッドで辿り着いた星は漢方を暮らしの中心に据えている文化だった。以前中島たい子『漢方小説』を読んであったのでそれを思い出しながら興味深く読んだ。ストーリーは型どおりだが設定が面白い。「紙の動物園」でお母さんが云ってたことと同じだけど、「頭で感じるか、お腹・胸で感じるか」っていうところだよね。食べるものが体だけでなく思考も、つまりその人間そのものを作っていくという考え方に共感。未来人の、悪いものは全部排除してきれい=健康っていうのもわからんではないけどそれじゃあ味気ないよね…。

どこかまったく別な場所でトナカイの大群が
家族それぞれが次元の違う空間に暮らす時代の話。ママは三次元で古代人だそうだ。設定は面白い。アニメーションにしたら面白いんじゃなかろうか(2次元では表現不可能か…)。

円弧」★
前半は昔のアメリカによくあったティーンエイジャーものみたいな展開。身体の中をいろいろ入れ替えて不老不死が実現していくその過程でまさにその施術者的の妻となった女性の話。『生ける屍の死』のエンバーミングを連想した。


途中で放棄。よくわからない。

1ビットのエラー
上に同じ。

愛のアルゴリズム
上に同じ。

文字占い師
前半は良かったのだが中盤以降の日本の侵略絡みのとこらへんからなんだかなあという感じに。きなくさい。微妙な問題をしつこく絡めてくるなあ。

良い狩りを」★
美しすぎる妖狐とそれを狩る職業の父。少年時代それを手伝って妖狐の娘と出会った「ぼく」は大人になって彼女と再会する。彼女の悩みに応じて作業した結果は…うわあ…そういう話なの!? ギョッとしちゃった。解説で紹介されている「きつねうどんかと思ったら蒸しパンだった、みたいな」という評はまさに云い得て妙!