2015/10/25

日本全国津々うりゃうりゃ 仕事逃亡編

日本全国津々うりゃうりゃ 仕事逃亡編
宮田 珠己
廣済堂出版 (2015-09-26)
売り上げランキング: 37,435
■宮田珠己
2012年3月刊『日本全国津々うりゃうりゃ』、2013年8月刊『日本全国もっと津々うりゃうりゃ』に続く津々うりゃうりゃシリーズ第3弾である。
奥付の裏のページや帯には「脱力出会い旅シリーズ」と書いてある。
初出は「廣済堂よみものweb」2014年5月から2015年3月まで連載された作品に、加筆修正したもの。最後の「都会」は書き下ろし。

本のタイトルにも副題にも初出の連載タイトルにも「脱力出会い旅」なんて言葉は出てこないんであるが、そもそもこのシリーズに「出会い」なんて人情系を思わせるテーマは皆無なんであるが、お馴染みクールな編集者・テレメンテンコ女史が命名されたんであろうか。

本書の奥付には「編集・川崎優子」と書いてあり、廣済堂よみものwebのページを覗くと同氏のツイートがたくさん上がっている。川崎さんのツイッターはhttps://twitter.com/1965aprilfoolとなっている……1965年4月1日生まれっていうことかなあ。宮田珠己大兄が1964年生まれなんで、ほぼタメなんである。おお。

日本のあちこち「行きたいところに行ってみた」感じのこの連載であるが、テレメンテイコ女史なくしては成り立たない、という感じになっていると第3弾を読んで思った。第1弾のときはあんまり意識していなくて第2弾からこの同行編集者について印象が強くなったのだがこれは主観だから改めていま第1弾を読み返したらどう思うのか後で再読してみたいところだ。
宮田珠己といえば昔から上司とかをおちょくるような物言いの文章が散見したが、このシリーズでは徹底的に編集者テレメンテイコさんを「いじり倒して」いる。他の出版社の仕事で担当編集者について書かれることはあるが、こういう書かれ方をしているのはこの方だけ。

テレメンテイコ女史は、非常に有能な旅のコーディネーターだ。いざ出かけるとなればインターネットを駆使して旅の情報を収集し、毎度的確な判断で段取ってくれるうえ、原稿の取立てが厳しく、〆切をどうしても守らせようとする往生際の悪さは、私への思いやりに欠け、血も涙もない。
(ちゃんと原稿を書くのか)、いつも人を疑わずにおれない彼女の猜疑心の深さには一度カウンセリングを受けることを勧めたいぐらいだけれども
西高東低冬型の気圧配置みたいな、いつものしんしんとした冷ややかな対応

こういうふうに揶揄しているけれども、テレメンテイコ女史の言動が書いてあるところを読んでみると仕事熱心な編集者、ということがちゃんと伝わるように書いてあり、信頼していて、こういうふうにキャラ立てしてネタにして大丈夫な相手だからこそなんだなあ。

第3弾の目次を写す。
・オホーツク
1、旅はしたいが、ワカサギはべつに釣りたくない
2、砕氷船の仕掛けについて
3、クマゲラの謎と、よく見えなかったゴマフアザラシ
4、流氷に乗る
・和歌山
1、粘菌探索行
2、エビとカニだけの水族館
3、モゲそう系とロックバランシング
・栃尾又
1、原稿地獄
2、西福寺~避けがたい運命の導き~
・立山黒部アルペンルート
1、テレメンテイコ女史、極楽浄土へ旅立つ
2、山の良し悪しは、山肌をゴロゴロ転がってみたいかどうかで決まる
3、謎の施設『まんだら遊苑』
・本州横断
1、ママチャリ『頓挫号』
2、草ぼうぼうの道
3、雨の谷中分水界
・宮崎
1、テレメンテイコ女史の災難
2、手漕ぎボートの聖地
3、陽気じゃなければ、B級スポットじゃない
・高知・徳島
1、鬼ごっこ仕様の沢田マンションに泊まりにいく
2、ジャングル風呂まであと少し
3、日本随一の地獄と襖からくり
・都会
1、スカスカした都会を楽しむには
2、心理面でセレブ
あとがき

なお、章タイトルはだいたい地名なのに「本州横断」は違うのはインパクトの都合かなあ。
天橋立に近い京都府の由良川河口から川を遡り、福知山から支流の土師川に入って、さらに竹田川、黒井川と伝っていけば水分かれまでたどりつくことができる。そこから今度は加古川に乗り換えて、川沿いをただただ下っていけば、西脇市を経由してやがて瀬戸内海まで、簡単に走れそうであった。
というのが地図上で計画を練った宮田大兄の「本州横断プラン」だったわけだが、実際はどうであったかは読んでのお楽しみ。
いい加減なふうを装っているが、実はけっこう真面目に「うりゃうりゃ」してる。1964年生まれだからもう50歳を越されたはずだが、オホーツクで流氷に乗ってみたいとか、水辺で石を拾いたいとか積んでみるとか、ママチャリで日本横断してみようだとか、ボートで探検気分を味わいたいだとか、違法建築スレスレのマンションに泊まりに行ってみるだとか、好奇心旺盛ぶりは相変わらずである。
WEBを覗きに行ったら現在新連載『日本全国津々うりゃうりゃ 休暇強奪編』が始まっており、これまた楽しみである。