2015/09/30

象を洗う 【再読】

象を洗う
象を洗う
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光文社 (2013-01-11)
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■佐藤正午
前回、光文社文庫でこのエッセイ・シリーズ3作を読んだときの感想として、このひとは普段のトークでも「創作」を混ぜちゃえるひとなんだ、というのが一番強かった気がする。小説家だから自分の体験を「創作」して語っちゃうこともふつーにあるよ、と書いてあって、でもそういうのはあんまり好きじゃないなあ誠実じゃないなあと思った。でも何故か今回3冊を通して読んであんまり不愉快を感じなかった。もう佐藤さんがそういうタイプだというのは承知の上で読んだからか、わたしも年を取ったということだろうか。
…いや違うな(確かに年は取ったけど、それがこの感想の違いの理由ではないという意味だ)。佐藤さんの小説家としての誠意、のほうを強く感じ取ったから、が正解のような気がする。
一般社会人としては~、まだ書けていない作品の原稿料を前借りするとかちょっと「おーすごいなあ、昔の無頼派みたいだ」と苦笑しちゃったけど。

目次は全部写す。
初めての文庫
1 セカンド・ダウン
自己紹介/世間知らず/借金/名文句/ペンネーム/打つ/総入歯/嘘みたいな話/落ち/ギャンブルの楽しみ/脚本/朝
葉書(小説)
2 佐世保で考えたこと
あら?/自転車/夏ばて/水不足/昨日の新聞/長い夜/映画/映画(承前)/おさらい/冗談/二度目/怒られる
ドラマチック(小説)
3 自作の周辺
勤勉への道/小説家になる前/ポケットの中身/休暇/三番目の幸福/裏話/悪癖から始まる/街の噂/悔やみ
そこの角で別れましょう(小説)
4 象を洗う
性格について/あなたと僕は違う/言葉の力/雨降って地ゆるむ/じわじわとはじまる/将棋ファン/ゲームの達人/テニス/テレビと野球/表札について/忘れ物/金魚の運/子供の名前/言葉をめぐるトラブル/先生との出会い/光に満ちあふれた日々/大学時代/賭ける/象を洗う日々/郵便箱の中身/真夜中の散歩/この街の小説/夏から秋へ
あとがき/文庫版あとがき/著作リスト/初出一覧

「この街の小説」の出だしの人気のない早朝の街の描写がすごく清々しくきれいだったのに、続けてこのひとは男女がこんなときに偶然出会ったら…みたいなことを書いていて、「あー恋愛脳というか、恋愛小説家というかだなあ」と思った。わたしはそこで恋愛なんて生温かいものを持ってきて欲しくない。主人公がゆっくり自分の時間にひたるべき貴重なシーンだと思う。どうせひとが登場するというのが必要ならばむしろなにか事件が起こったほうが面白いだろう、ミステリー「小説」ならね(現実では御免こうむるよ!)。

佐藤正午は競艇ファンだということ、結婚はどうやらこの3冊の間は少なくともしていないようであること、1つの作品を書きあげて30分後には次の小説を書きはじめることもあるということ(凄いなあと思ったけどプロの方では珍しくないそうだ)、知り合いはほぼ女友達であること、などが印象に残った。水不足の話は3冊の中で一番多く出てきて、よほど言いたいんだなあと思った。