2015/09/20

岸辺のヤービ

岸辺のヤービ (福音館創作童話シリーズ)
梨木 香歩
福音館書店
売り上げランキング: 450
■梨木香歩 /小沢さかえ・画
休日の朝からゆったりと大事に読みはじめて間に家事をしたり散歩に行ったり昼寝をしたりしつつ。夕方読了。
このお話は「第1巻」みたいな感じですね。
途中で脇道のことにちょいちょい触れつつも「それはまた今度ね」みたいな感じで先送りがあって。最後まで読んだら「次回」についての「ウタドリさん」からのメッセージがあって。

このお話を読む前から表紙はネットで目にしていて、『岸辺のヤービ』という題名で、なんだか小さな不思議な生き物の絵が描いてあるからこれがヤービだろう、というのは見当がついていて、なっきーはカヌーとかで水辺に親しんでおられるからその経験を生かしたお話なんだろうなと漠然と考えていた。実際読むときは児童書ということもあってあんまり大人の深読みはしないように、できるだけ子どものような素直な視点でまっすぐに受けとりたくてそういう心持ちで読んだ。

このお話の舞台は「マッドガイド・ウォーター」と呼ばれる小さな三日月湖と「たそがれ川」の周辺の沼沢地。灯心草の茂みがあり、少し外れるとゆるやかな丘陵があって牧草地が広がり牛が草を食べている、そんな想像しただけで「のどか~」とうっとりしてしまう素敵な場所。ここは「サニークリフ・フリースクール」の地所で、語り手の「わたし」(後で「ウタドリさん」という愛称が出てくる)はその学校で教師をしている。

灯心草ってどんなだっけ? とインターネットで調べてみると「イグサ」の別名。「イグサの茂み」と書かれるのと「灯心草の茂み」では随分印象が違うなあ、さすがなっきー、ファンタジーの魔法を心得てらっしゃるなという感じ。

で、そのウタドリさんが偶然クーイ族のヤービと出会って、初対面からこのひとたちは奇跡的に相性が良かったために話をすることが出来て……という具合に物語がはじまっていきます。
小さな不思議な生き物がいて、それと出会ってもふつうは素早く逃げられて終了、だと思うのですがなんとヤービは逃げなかったのです。なんという勇気でしょう! しかもヤービはクーイ族の中でも人間(このお話の中では「大きい人たち」と呼ばれる)と話をすることが出来る珍しい個体だったのです。なんという奇蹟、僥倖でしょうか。

お話がすすんでいくと、小さい彼らのなかにもいろんな個性があって、みんながみんな幸せなわけでも、まして能天気に「ファンタジーに」生きているわけではないということがわかってきます。ことにベック族のトリカという女の子については、その母親の問題も含めてまだまだ「さわり」しか書かれておらず、深入りすればなかなかに深そうなことが予想されます。このシリーズの続刊がいつ出るのか、全部でどのくらいの長さになるのか、いろんな問題をどこまで突っ込んで書かれることになるのか、……。

ヤービがハトの背中に乗って空を飛んだり、「スーツ」を着て水の中をすいすい泳いだりするのがわっくわくで楽しかった。「ポリッジ」が出てきたりするところが英国で児童文学を学んだなっきーぽいなあ、と思った。
小沢さかえさんの絵はほとんどは白黒だけどたまにカラーのページもあり、とってもきれいです。
沼沢地に遊びにいくときは、ミルクキャンディをポケットに忍ばせておきたいものですね。