2015/09/11

怪盗ニック全仕事 1

怪盗ニック全仕事 1 (創元推理文庫)
東京創元社 (2015-03-23)
売り上げランキング: 131
kindle版
■エドワード・D・ホック 翻訳:木村二郎
エドワード・D・ホックは初めてかなと調べてみたらそうではなかった、2002年に『サム・ホーソーンの事件簿』Ⅰを読んでいて、翻訳者も同じなのだった。あーあの「御神酒をどうかね?」のやつかあ。

本書のタイトルは「怪盗ニック」だが本文では「泥棒」と書かれている。
で、中身を読んだ印象も「怪盗」っていうよりは「泥棒」だけどむしろ「推理小説に出てくる私立探偵」のやってることに近いなあ、という感じ。
怪盗と泥棒ってどう違うのかなとググってみるとウィキペディアに【怪盗は、主にフィクションに登場する盗賊。一般に手口が鮮やかであったり、神出鬼没な者を指し、「泥棒」とは区別される。】とあった。
ニック・ヴェルヴェットは何故「私立探偵に近いな」と思ったかというと、依頼を受けて仕事(=盗み)をして報酬を貰うからである。普通、泥棒や怪盗というのは依頼人はいなくて盗んだものがすなわち収入になると思うんだけど、ニックの場合はそこが大いに変わっている。
ニック・ヴェルベットは泥棒である。それも特殊な泥棒なのだ。/絶対に金を盗まず、自分のためにも盗まない。大きすぎたり、危険すぎたり、ほかの泥棒にとっては異常すぎるものを人に依頼されて盗む。

本書はすべて短篇で、どれも独立しているが、いちおう順番に読んだ方が具合がいいかもしれない。超一級のトリックとかは無いし、文章は(原文がそうだからなのか翻訳者のせいなのか不明だが)古い感じだけど読みやすいし、あっさりサクサクした印象なので秋の夜長、眠る前に1篇ずつ読んでも眠りの妨げにならないすっきりクールなミステリーだと思う(殺人もほとんど無いし、複雑で醜悪な人間関係のごたごたもほとんど気にならない)。

「価値のあるもの」はニックは盗まない主義だがそれはあくまで一般的に、であり、依頼者にとっては高い手数料を支払う価値がある物なのである。とはいえ、けっこうな割合で「盗みの依頼」には裏があって、ニックはいつも一筋縄ではいかな依頼者と狐と狸の化かし合い、みたいな調子でやっている。でもまあ、シリーズものの主人公だから「死ぬことはないんデショ」とタカをくくってしまえるのがサスペンスが感じられないゆえんでもあり…。
最初の短篇で「ははあ、そういうハナシね」と学習したら次からは依頼人を素直な目で見ることは無くなってしまったんだけどニックが意外に巻き込まれていくんだよね、警戒はするんだけど、相手も大金を払うからにはそれなりの腹づもりがあって。

1巻目次は以下のとおり。盗む対象はタイトルになっている。「プールの水」をどうやって盗むのかとか面白かったなあ。盗ませた理由は意外に平凡だったのでガッカリしたけどでもまあアイデアが良い。という具合にこのシリーズの作品は①どんな変なものを盗むのか? ②どういう方法で盗むのか? ③依頼人の真意はなんなのか? ④ニックは報酬を無事受け取れるのか? などといろんな点でわくわくすることが出来るのだ。

「斑の虎を盗め」
「プールの水を盗め」
「おもちゃのネズミを盗め」
「真鍮の文字を盗め」
「邪悪な劇場切符を盗め」
「聖なる音楽を盗め」
「弱小野球チームを盗め」
「シルヴァー湖の怪獣を盗め」
「笑うライオン像を盗め」
「囚人のカレンダーを盗め」
「青い回転木馬を盗め」
「恐竜の尻尾を盗め」
「陪審団を盗め」
「革張りの棺を盗め」
「七羽の大鴉を盗め」

エドワード・D・ホックは1930年ニューヨーク生まれのアメリカの作家。本書に収録された作品の原書は1966年~1971年くらいに書かれたもの。