2015/08/14

よろこびの歌

よろこびの歌
よろこびの歌
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実業之日本社 (2014-03-07)
売り上げランキング: 427
kindle版
■宮下奈都
本書は実業之日本社「月刊ジェイ・ノベル」に2007年11月~2009年9月にわたって不定期連載され、2009年10月単行本、2012年10月文庫化の電子書籍版。

タイトルが「よろこびの歌」でアマゾンの商品説明をざっくり読むに、挫折した少女が校内合唱コンクールを機に変化し、歌をきっかけに心を通わせ――などとある。
なんてベタなんだ!
と思ったがちょっと宮下奈都が気になる今日この頃であるし、なにより本書のkindle版が「月替わりセール」で¥199とべらぼうに安かったので購入した。んで数日放置してあった。なにしろあまりにもベタな設定なので読む前から辟易していたのである。

だが昨日気が向いて読みだすやいなや、あっというまに引き込まれた。
上手い! 巧い! 
全然期待していなかった分、そのヨロコビは大きかった。途中で失速したらどうしようと一瞬思ったがなんのなんの、最後まできっちり仕上げてくれてあった(最後もベタだけど)。
なんていうか、大筋は定番なんだけど、ひとつひとつの細かい描写が。出てくる少女たちの思考のあれもこれもが。まさにドンピシャというか、胸を鋭くえぐってくるんだよなあ。あーわかるそれ知ってるわ、文章化するとこういうことだったんだなあ、みたいな。
何気ない日常の、彼女たちの思いにぐんっと心を引き寄せられる、それもまた「ベタ」だから故なのかも知れないが、だからどうした! ベタだって良いものは良い、っていうか誰にでも書けるもんじゃないと思うんだよこの繊細さは、みんな流していっちゃうところを丁寧にすくいあげてさらりと描いてみせてくれる、ああ宮下奈都の良さはまさにこういうところなんだなあ!と。

本書を読んでいるとハイロウズのというかブルーハーツのというか甲本ヒロトの歌詞が作中に何度か出てきて、全然詳しくないので曲が浮かばないんだけども、最後まで読んだら奥付のところにこの小説の章タイトルはすべてハイロウズのシングルタイトルからと書いてあってふーんと思った。聴いてみたくなるなあ。
「よろこびの歌」と云われるとわたしなんかは「第九?」としか連想できなかったのだがちなみに本書にベートーヴェンのそれは登場しない。
章タイトル(1,2,3ではなく「ドレミファソラシ」で振ってある)は以下の通り。
章ごとに視点が変わり、同じ私立女子高校に通う生徒6名それぞれの物語が、人生がある。7つめの話は最初の話の視点に戻る、そこまでにどういう変化があるか、ということだ。
ちなみに私立女子高というとお嬢様?というイメージだがこの学校は名門でもなんでもない、新設のとりたてて特徴のない学校という設定で、そのことが本書の登場人物たちのちょっと複雑な進学理由とリンクしていたりする。

「よろこびの歌」
「カレーうどん」
「№1」
「サンダーロード」
「バームクーヘン」
「夏なんだな」
「千年メダル」

本書を高校生のときに読んでいたら、学校行事の合唱祭ももう少し違った気持ちで臨めただろうなと思う。別にいい加減にしてはいなくて歌うのは嫌いではないので自分なりには声を出していたつもりだったけど、「何を目標にして歌うか」「誰のために歌うか」なんて考えていなかったなあ、って…。
中学生、高校生にぜひぜひ読んでいただきたい1冊だ。学校の先生方にもおすすめしたい。
夏に読んで、ぴったりだったなあ。清々しくて感動した。